にーなはヒデユキの手伝いをしながらホールの様子を探っていた。
それを見て、ヒデユキは、
「おぃ、にーなぁ。そんなにホール戻りたいなら戻ってもいいぞぉ。」
と言ったが、にーなは苦笑しながら、
「いや、違うんですぅ。ホールは忙しいかなぁって思ってぇ、ごめんなさい。」
「まぁ、それならいいけどさぁ。これから忙しくなるんだから頼むぜぇ。」
ヒデユキがぶつぶつと言ってると、
厨房のドアが開いて、洗い場の制服を着たえりかが入ってきた。
「えっ!」
「えっ!」
と、ヒデユキとにーなが同時に言った。
しかし、二人の「えっ!」のニュアンスには微妙な違いがある。
にーなはえりかがまりりんに洗脳されてると思い込んでるので、
あぁ、わたしもとうとう年貢の納め時かぁ?と覚悟せざるを得なかった「えっ!」であり、
ヒデユキは単純に喜びの「えっ!」であった。
えりかはヒデユキに向かって、
「先ほど、店にさゆみから電話があって、ダンスレッスンが長引いているから、今日はお休みだそうです。なので、私が洗い場に入ります。よろしいでしょうか?」
と、言うとちらりとにーなの方を見た。
にーなは作り笑顔で対応するしかなかった。
「あっ、そうなんだ。」
と、ヒデユキはニヒルに対応しようとしたが、自然とにやけそうになり、
「じゃ、頼むわぁ。」
と、言うと、後ろを向いて調理に戻った。
しかし、その顔はにやけていた。
ヒデユキが後ろを向いている隙に、えりかはにーなの所へ行った。
にーなは、
「わぁ、来たぁ。」
とおびえるが、えりかが耳元で、
「大丈夫よ。」
と、言うと、ウインクをして、再び洗い場に戻って行った。
にーなはえりかが洗い場に戻っていくのをただ、呆然と見詰めていた。
「『大丈夫』ってどういうこと?」
にーなは混乱していた。
そして、ホールに目をやると、そこにはかなよが居て、にーなに向かって一礼をした。
さらに、にーなは混乱してしまった。
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一方、ホールは静かにドラマが展開していた。
遅番のかなよが加わり、夕方のピークも過ぎた。
まりりんとかなよはお互いに動きを見ていた。
かなよはまりりんの正体を突き詰めたようだが、
まりりんがかなよの正体を突き止められなかった。
「こいつは何なんだ?」
かなよは平静を保ちながらも接客を続けていた。
そして、まりりんと真緒が仕事が終了した。
まりりんは急いで帰って行った。
「あれ?まりりん。用事でもあるのかな?」
真緒は着替えながら、まりりんを見送った。