ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる -26ページ目

ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

わたしはかもめ。飛べないかもめ。日記みたいなもの。

10年前の自分に一言 ブログネタ:10年前の自分に一言 参加中
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その人は周囲に誰もいないことを確認すると、

持参したスコップで地面を掘り始めた。

軽くスコップが地面に刺さる音が響き、

その人はスコップを足を置いて、さらに地面へと沈める。

今朝、小雨が降っていたおかげで、

かなり地面がやわらかくなっていて、土を掘り出しやすくなっている。


しばらく土を掘り出して、

周囲を確認する。

過疎地の山の奥、しかも平日の昼間に誰かがやってくる訳はない。

しかし、その人は用心深く、人の気配に神経をとがらせている。


かさっという木々の葉の擦れる音にさえ、

その人は敏感に音のした方を振り返る。

手にしたスコップは土を掘るだけではなくいざと云う時に武器とでも言いたげに先端を音のする方へ両手でしっかりと掲げて威嚇をする。


風であったことに安心するよりも、

少々過剰すぎる反応にいささか自分自身にあきれつつも、

ことの重大さに体の芯から震えが襲ってきた。


その人は穴を掘るスピードをあげる。

一刻も早く、ここを立ち去りたい。

その人の吐く息の白さと熱を帯びた身体から発する蒸気が天に向かって立ち上っていく。


穴がその人の膝ぐらいまで掘った状態で、

スコップを穴の真横に寝かして、

穴へと入っていく。


穴の中でその人は一本の木のようにじっと神経を足の付け根に集中させる。


「私は木だ。一本の木だ。」


その人は念仏のように囁きにもならない声でつぶやく。



10年前。

わたしはこうして一本の木になった。

動物が生きるために進化をしていくように、

わたしも生きていくために、

進化していった。


足の付け根から土の中に生息する微生物を吸収して、

栄養源とする。

着こんでいた服はいつしか剥がれて、

皮膚が自然に亀裂が入り、

内臓は空腹のために分裂を始め、

年輪へと変化していった。


仕事に生きずまり、

わたしは自らの命を絶つために山へ入って行った。

あの時、わたしはたくましそうな一本の木にわが身を託した。

しばらく、わたしはこの木の身のように風に揺れて、

そして、いつのまにか、首だけ残して体は地面に落ちていった。


その魂がわたしを木に生まれ変わらせてくれたのだ。


10年前のわたしに言いたい。


「わたしは救われたんだね。」


何故ならわたしは生きている。

誰も知らない一本の木となって生きている。

店もオーダーストップになり、一人の客を除いて、みんな帰って行った。
ゆかりとるみとかなよは閉店作業をしていた。
その一人の客は眠っていた。


「あのぉ。お客さん。もうじき閉店なんですけどぉ。」


るみがそのお客をゆすって起こそうとするが一向に起きる気配がなかった。


「もう少し、寝かしておけば?」


ゆかりはるみにそう声をかけて、閉店作業を促した。


「はーい。」


るみは元気よく答えると、そのお客の席から離れた。
るみが離れるのを確認すると、その客は安堵のため息をついた。


~~~~~~~~~~


にーなは気まずい雰囲気の中でもがいていた。
あきらかに、えりかとヒデユキがお互いを意識してぎこちなく作業をしている。


「こういう場合どうしたらいいんだろ?」


ふたりを見ながらつぶやいた。
しかも、えりかをまだ洗脳されていると疑っているだけに下手な手出しもできない。


「もう、こんなのなら、洗脳された方がよかったかもぉ。」


と心の中で叫んだ時、ふと名前を呼ばれた。
にーなは我に返ると呼ばれた方を見た。えりかであった。


「にーなちゃん。ちょっと来て欲しいの。」


えりかは意味ありげな顔で言った。


「あぁ、とうとう来たんだ。」


にーなは半泣きになって、うんとうなずいた。


「ヒデユキさんも来て。」


えりかはヒデユキにも呼びかけた。
ヒデユキはえりかを見た。
なにか思いつめた顔をしているのが気になった。


「わかった。行こうか。」


3人はキッチンを出てホールへ向かった。


~~~~~~~~~~~



閉店作業が終わり、
ゆかりとるみとかなよがテーブルに座ってお茶を飲んでいた。
そこに、にーな、えりか、ヒデユキが加わり。後から店長もやってきた。
今、居るスタッフ全員が集まった。


「かなよちゃん。話があるって何?」


店長は言った。
全員の視線がかなよに集まった。


「実は…。」


かなよは意を決したように話し始めた。


「みなさんに知ってほしいことがあるんです。」


そして、かなよは衝撃の事実を語り始めるのである。

海外というと、
一時期はあこがれの的であったような気がするけど、
ゆとり教育の弊害なのか、
よくわかんないけど、

海外小説がベストセラーになることが無くなったような気がする。
同時期に洋楽や洋画もそうだ。

母国を愛する気持ちよりも、
なんとなく、敷居が高いという感覚なんだろうか。
海外小説に関しては、そんな気がしなくもない。

昨日の夜読み終えた本。
『聞いてないとは言わせない/ジェイムズ・リーズナー』(ハヤカワ文庫)

帯にも書いてあるけど、ノンストップのジェットコースターノベル。

テキサスの田舎町の外れにぽつんと建ってる農家にヒッチハイクで青年がやってくる。農家に住んでいるのは40過ぎの女性ひとり。
青年はとある店でこの農家のお手伝いを求めていることを知ってやってきた。真面目に働く青年に初めは胡散臭さを感じてた農家の女性もいつのまにか、青年に惹かれていき…。
と、ここから、怒涛の展開が待っている。
とにかく、アメリカって広いなぁ。って実感できる本です。
(どういう感想やねん。笑)

驚愕のラストは気分によっては切なすぎるかも。
でも、心病んでる僕には「しゃーないかな。」
なんて感じました。
300ページ弱の一気読み作品でした。