「ほんとうなのかなよちゃん?」
ゆかりが言った。かなよは小さくうなずいた。
「どうしてぇ?」
にーながかなよに言った。
「すいません。でも、ここを守るために来た事だけは信じてください。」
かなよは語り出した。
「店長?」
「ん?」
「毎年12月13日に異変はありませんでしたか?」
「異変?」
店長はふと考えて、
「そういえば、副店長が毎年、12月13日に食料が減ってるって言ってたなぁ。」
「それ、私たちなんです。」
「へっ?」
店長がすっとんきょうな声を出した。
「忍び込んで食糧を漁ってたんだ。」
るみがつぶやいた。
「そういえば、無くなってたなぁ。」
ゆかりが思い出したようにつぶやいた。
「でも、どうして?」
「昔、このファミレスの場所は私たち裏山のたぬきたちが年に一度、天に感謝する祭りを実施する空き地だったんです。」
「へぇー、そうなんだぁ。」
にーなが感心してつぶやいた。
「元来、この場所は新年を迎える時の神社があったんです。しかし、江戸時代のこの時期に焚火の火が引火して、山火事が起こり、この周辺が焼失して、それからはこの更地を新年を控えた12日の夜に、この周辺の住民で鎮火祭と今年も無事、過ごせたお礼を兼ねて祝いの行事があり、私たちたぬきも多くの犠牲を出したことをお詫びするために、お供えをしていてくれたのです。」
「そんなことがあったんだな。」
ヒデユキは言って、ふと、えりかの方を見た。
えりかもヒデユキの方を見て、静かにうなずいた。
「しかし、先ごろの市町村合併で、この街も合併して、この空地を祭る風習もいつのまにか無くなり、この場所も都心から近いということもあって、変わっていきました。」
「それでこのファミレスが建ったわけだ。」
店長はうなずきながらそう言った。
「はい。そうです。」
かなよはうなずいた。
「ただ、この場所は先ほども言ったように、神社があった場所で、燃えた木材などが埋めてあるのです。」
「えー、ほんとにぃ。」
にーながびっくりしたように言った。
「だから、この場所は特殊な能力を持った場所なんです。」
「で、どういうことなんだ。」
ヒデユキが先を促した。
「先月、長老のたぬきじいさんが、何かがあの場所にやってくる。と言ったんです。」
「何か?」
ゆかりがつぶやくように言った。
「それがまりりんなの。」
えりかが言った。
突然の発言にびっくりしたようににーなはえりかを見つめた。
にーなのその表情にえりかはほほ笑むと、
「にーなごめんね。にーなだけは洗脳が解けてたのがわかってたの。といってもわたしはかなよちゃんに解いてもらったんだけどね。」
「それで大丈夫って言ったのね。」
にーなは謎が解けて、ほっとした表情を見せた。
「でも、まりりんって本当は首相の娘さんなんでしょ。」
ゆかりが疑問をかなよにぶつけた。
「はい。たぶん、まりさんは拉致されて、今のまりさんは変装に利用されたんだと思います。」
「また、すごい娘さんを捕まえちゃったなぁ。連日、テレビは特番やってるぜ。」
「だから、早くその正体がバレないうちにまりさんを連れ戻さないと…。」
「でもどうやって…。」
店長が困惑の声をあげたその時、
「話は全部聞かせてもらったよ。」
と、隅の方から声がした。
全員の身体が固まり、声のした方を一斉に向いた。
そこには先ほどまで寝ていた客の私立探偵の太朗がこちらに向かってきた。
「誰なの?」
ゆかりが睨みつけて言った。
「怪しいものじゃないよ。」
太朗は店長の所へ行くと、一礼をして名刺を渡した。
「『私立探偵 太朗』」
店長は声を出して言った。
「へぇー、探偵なんだぁ。」
にーなは太朗を品定めするように全身を見た。
「本当かぁ?」
ヒデユキは疑いの目で太朗を見た。
「信じられないのかよぉ。」
太朗は反論した、
「じゃ、なんでここに居るんだよぉ。もしかして…。」
太朗は慌てて、
「ちがうよぉ。ここに居たのは社長夫人の浮気調査だよ。まぁ、白だな。ここのファミレスで5時間しゃべくってたよ。」
「あぁ!あの変な柄のセーターを着たぁ。」
るみが思い出したように言った。
「あぁ、居た居た。ドリンクバーと枝豆だけだったよねぇ。」
ゆかりがつけ足すと、笑いが起こった。
「信じてもらえたかな?」
太朗はヒデユキに向かって言った。
「ま、まぁな。」
ヒデユキはあいまいに返事をした。
隣でえりかは真顔でうなずいた。
「じゃ、とりあえず、おれを雇ってくれ!」
太朗は言った。
「雇う?」
全員が口をそろえて言った。
「ここに潜入するわけだよ。」
「はぁ。」
店長は困惑気味に答えた。
「じゃ、そうと決まれば、えっと、明日まりさんは?」
「明日はお休みです。」
ゆかりが答えた。
「OKぇ!じゃ、今日の報告書を明日中に提出して明後日からくるよぉ。そういうわけでみんなぁ。よろしくぅ!」
というと、ささと太朗は帰って行った。
全員が去っていく太朗を呆然と見つめていたが、
太朗が出入り口のドアへ到着すると、
「あのさぁ、鍵がかかってるんだけど…。」
と、弱弱しく言った。
「大丈夫かぁ?」
ヒデユキは店長に言った。
店長はあきれ顔で首を左右に振った。
(ファーストシーズン終了 春のセカンドシーズンに続く)