ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる -24ページ目

ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

わたしはかもめ。飛べないかもめ。日記みたいなもの。

「ほんとうなのかなよちゃん?」


ゆかりが言った。かなよは小さくうなずいた。


「どうしてぇ?」


にーながかなよに言った。


「すいません。でも、ここを守るために来た事だけは信じてください。」


かなよは語り出した。


「店長?」


「ん?」


「毎年12月13日に異変はありませんでしたか?」


「異変?」


店長はふと考えて、


「そういえば、副店長が毎年、12月13日に食料が減ってるって言ってたなぁ。」


「それ、私たちなんです。」


「へっ?」


店長がすっとんきょうな声を出した。


「忍び込んで食糧を漁ってたんだ。」


るみがつぶやいた。


「そういえば、無くなってたなぁ。」


ゆかりが思い出したようにつぶやいた。


「でも、どうして?」


「昔、このファミレスの場所は私たち裏山のたぬきたちが年に一度、天に感謝する祭りを実施する空き地だったんです。」


「へぇー、そうなんだぁ。」


にーなが感心してつぶやいた。


「元来、この場所は新年を迎える時の神社があったんです。しかし、江戸時代のこの時期に焚火の火が引火して、山火事が起こり、この周辺が焼失して、それからはこの更地を新年を控えた12日の夜に、この周辺の住民で鎮火祭と今年も無事、過ごせたお礼を兼ねて祝いの行事があり、私たちたぬきも多くの犠牲を出したことをお詫びするために、お供えをしていてくれたのです。」


「そんなことがあったんだな。」


ヒデユキは言って、ふと、えりかの方を見た。

えりかもヒデユキの方を見て、静かにうなずいた。


「しかし、先ごろの市町村合併で、この街も合併して、この空地を祭る風習もいつのまにか無くなり、この場所も都心から近いということもあって、変わっていきました。」


「それでこのファミレスが建ったわけだ。」


店長はうなずきながらそう言った。


「はい。そうです。」


かなよはうなずいた。


「ただ、この場所は先ほども言ったように、神社があった場所で、燃えた木材などが埋めてあるのです。」


「えー、ほんとにぃ。」


にーながびっくりしたように言った。


「だから、この場所は特殊な能力を持った場所なんです。」


「で、どういうことなんだ。」


ヒデユキが先を促した。


「先月、長老のたぬきじいさんが、何かがあの場所にやってくる。と言ったんです。」


「何か?」


ゆかりがつぶやくように言った。


「それがまりりんなの。」


えりかが言った。
突然の発言にびっくりしたようににーなはえりかを見つめた。
にーなのその表情にえりかはほほ笑むと、


「にーなごめんね。にーなだけは洗脳が解けてたのがわかってたの。といってもわたしはかなよちゃんに解いてもらったんだけどね。」


「それで大丈夫って言ったのね。」


にーなは謎が解けて、ほっとした表情を見せた。


「でも、まりりんって本当は首相の娘さんなんでしょ。」


ゆかりが疑問をかなよにぶつけた。


「はい。たぶん、まりさんは拉致されて、今のまりさんは変装に利用されたんだと思います。」


「また、すごい娘さんを捕まえちゃったなぁ。連日、テレビは特番やってるぜ。」


「だから、早くその正体がバレないうちにまりさんを連れ戻さないと…。」


「でもどうやって…。」


店長が困惑の声をあげたその時、


「話は全部聞かせてもらったよ。」


と、隅の方から声がした。


全員の身体が固まり、声のした方を一斉に向いた。
そこには先ほどまで寝ていた客の私立探偵の太朗がこちらに向かってきた。


「誰なの?」


ゆかりが睨みつけて言った。


「怪しいものじゃないよ。」


太朗は店長の所へ行くと、一礼をして名刺を渡した。


「『私立探偵 太朗』」


店長は声を出して言った。


「へぇー、探偵なんだぁ。」


にーなは太朗を品定めするように全身を見た。


「本当かぁ?」


ヒデユキは疑いの目で太朗を見た。


「信じられないのかよぉ。」


太朗は反論した、


「じゃ、なんでここに居るんだよぉ。もしかして…。」


太朗は慌てて、


「ちがうよぉ。ここに居たのは社長夫人の浮気調査だよ。まぁ、白だな。ここのファミレスで5時間しゃべくってたよ。」


「あぁ!あの変な柄のセーターを着たぁ。」


るみが思い出したように言った。


「あぁ、居た居た。ドリンクバーと枝豆だけだったよねぇ。」


ゆかりがつけ足すと、笑いが起こった。


「信じてもらえたかな?」


太朗はヒデユキに向かって言った。


「ま、まぁな。」


ヒデユキはあいまいに返事をした。
隣でえりかは真顔でうなずいた。


「じゃ、とりあえず、おれを雇ってくれ!」


太朗は言った。


「雇う?」


全員が口をそろえて言った。


「ここに潜入するわけだよ。」


「はぁ。」


店長は困惑気味に答えた。


「じゃ、そうと決まれば、えっと、明日まりさんは?」


「明日はお休みです。」


ゆかりが答えた。


「OKぇ!じゃ、今日の報告書を明日中に提出して明後日からくるよぉ。そういうわけでみんなぁ。よろしくぅ!」


というと、ささと太朗は帰って行った。
全員が去っていく太朗を呆然と見つめていたが、
太朗が出入り口のドアへ到着すると、


「あのさぁ、鍵がかかってるんだけど…。」


と、弱弱しく言った。


「大丈夫かぁ?」


ヒデユキは店長に言った。
店長はあきれ顔で首を左右に振った。

(ファーストシーズン終了 春のセカンドシーズンに続く)


本屋に勤務していると、
出版業界とは共闘関係にあると勝手に思い込んでしまう。
最近は、電子書籍の台頭もあり、
いつかは紙で読む活字は衰退してしまうのかな。
なんて懸念も感じなくもない。
僕自身、まだ電子書籍で活字を読んだことないので、
それに対する意見ができないのであるが、
頁をめくる感覚は紙だからこそ、
ということは大切だと思いたいんだけど…。

そういうわけで、
新創刊された文庫本はとりあえず手に取ってみる。
今回読んだ本は、

『口入れ屋お千恵 繁盛記㈠/桑島かおり』(富士見新時代小説文庫)

今月創刊された文庫シリーズ。
ライトノベルで有名な富士見書房が、
ライトノベルで活躍している作家たちで新感覚の時代小説を出す。
有名な作家(一般的にということです。)は参加してないけど、
その分、未知の楽しみを発見できるかも。
今回選んだのは、剣劇よりも人情劇を選んだ結果。
面白く読ませていただきました。

深川で女性専門の口入れ屋(今でいう民間のハローワークみたいなもの?)を営む千恵。
彼女自身もここにたどるまでのいきさつがあり、
人を大切にする口入れ屋としてわけありのお客が来客して、
彼女のひたむきで真摯な行動で問題を解決していく。

人間と人間の関わり合いが希薄になっている昨今、
人情時代小説は、忘れかけた人との関わり合いを見つめなおすのに、
有効な本なんだろなと思います。
優しい気分になって、明日に向かってほしいと思います。


「東京」と「雪」って、なんとなく不釣り合いな気がする。
だって、雪が降ると交通機関はかなりの確率で麻痺してしまうし、
テレビはやったぜぇ!とでも言いたげに雪で足をすべらせるサラリーマンの映像が流れる。
同僚は窓を好奇心の塊で凝視しながら、
「雪が降り出したぜぇ!」とはしゃいでいる。
「そんなに嬉しいか?」
と、皮肉を込めて言ってみると、こいつらしくもない無垢な表情を浮かべて、
「俺のふるさとじゃ雪は降らないからな。」
と、言った。
「そうか。」
俺はそう返すしかなかった。

実を言うと、俺が住んでたふるさともそんなに雪が降る地域というわけじゃない。
南部の瀬戸内側だから、ほとんど降ることは無い。
反対に北部は今時分、天気予報では「所により雪」と、天気予報士が告げていることだろう。

学生の頃は歌にある「犬は喜び庭駆け回る」のような感じで悪友と雪景色で変わった見慣れた景色を瞳に焼き付けながら、雪をかき集めて、悪友に投げつけあった。

俺と悪友は駅に着くと、雪を触りすぎて、冷え切った手の平をお互いの学生服に擦り付ける。
「やめろよ。」と無邪気に叫ぶ俺たちはふと、反対のホームに佇む女生徒に目をとめた。

今までの行為がなんとなく恥ずかしくて、俺たちは女生徒の真ん前からうつむきながら、横へ横へと移動して、もう大丈夫だろうと顔を上げた時、すでに反対ホームの下り電車は出発をして、
顔を見合わせてため息をついた。

数日後、悪友が風邪をひいて学校を休んだ日。
俺は部活をさぼって、下り電車に乗り込んで岡山方面へ向かった。
この駅から下っていくと、兵庫県から岡山県へと変わる。
県が変わっただけで、景色も変わった。
ある駅にはあたり一面雪景色となっていた。
それはその場で降り積もった感じではなく、
常に雪景色である。そんな重みのある雪景色に俺は電車のドアが開いたと同時にとっさにホームに降り立った。
電車が去って行くと、俺はどこか違う世界に迷い込んだ不安を感じた。
背後に気配を感じて、振り返るとそこにはいつも見かける女生徒が立っていた。
俺は驚いて、思わず後ずさった。
女生徒はニコリともせずに俺を通り過ぎて、改札へ向かった。
声をかけられなかったのは寒さだけじゃない。
俺と彼女との間には雪と云う壁ができている。
それは厚い壁のような気がした。
たった、15分の移動でここまで世界が変わることに俺はしばらくたちつくし
そんな重みのある雪景色に俺は電車のドアが開いたと同時にとっさにホームに降り立った。
電車が去って行くと、俺はどこか違う世界に迷い込んだ不安を感じた。
背後に気配を感じて、振り返るとそこにはいつも見かける女生徒が立っていた。
俺は驚いて、思わず後ずさった。
女生徒はニコリともせずに俺を通り過ぎて、改札へ向かった。
声をかけられなかったのは寒さだけじゃない。
俺と彼女との間には雪と云う壁ができている。
それは厚い壁のような気がした。
たった、15分の移動でここまで世界が変わることに俺はしばらくたちつくし、
すぐにやってきた上り電車に飛び乗って自分の世界へ戻って行った。

あれから俺はなんとなく、彼女と接するのを避けているうちに高校を卒業して上京した。

たぶん、変わることのない備前の町に、
俺は雪が降る度、彼女の事を思い出す。