おやすみの国の王様のゆううつ(前編) | ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

わたしはかもめ。飛べないかもめ。日記みたいなもの。

おやすみの国の王様は、
とっても、とっても、
夜がキライ。

側近の人達と夕暮れに庭を散歩しながら王様はつい大きなため息をついてしまいます。

「今、何時だ?」

国様は数歩歩く度に側近のひとりに尋ねます。

側近の人達は、正確な時間よりも30分ほど繰下げて、国王に伝えます。

なので、実際の時間は午後6時ですが、
『王様。ただ今の時刻は、午後5時半です。』
と言います。

王様はただ、
『そうか。』
と言うだけで、歩き続けます。

おやすみの国の庭からは、地球のすべてが見渡せます。ただし、すべてと云っても夜になった場所だけ、
王様は夜9時になるとおやすみの国の先端に位置する場所から、おやすみなさいの号令をかけます。
ここで、あれ?
と思った人もいるでしょう。
人によっては、午後9時より早く寝るひともいれば、それよりも遅く寝る人もいるし、その時間にはまだ働いている人もいますね。
ここで云う午後9時とは、おやすみの国の中の決まり。
王様の声が地球に降り注ぐ時間はその人によって異なります。
雲が落とす雨粒が一定の場所、時間に降らないのと同じ原理だと思ってもらえばいいのではないかと…。

おやすみの国の王様は、またため息をつきながら、庭を歩きます。
「おやすみ」を言わなければ永遠に眠ることはないだろうに…。
しかも、なぜ、「おやすみ」と云う言葉は暗いのだ。

おやすみの国の王様は、真裏の国のおはようの国の王様がうらやしくて、事あるごとに愚痴ってしまいます。

「おはよう!」は元気いっぱい明るく言えるのに、「おやすみ」はそっとつぶやくように言わねばならん!
わしは哀しい!

おやすみの国の王様の言い分もわからなくはないですが、しかし、元気なおやすみは…。
お風呂上がりの幼稚園児が両親に向かって、
「お父さん。お母さん。おやすみなさいぃ!」
と云う、異例はあるものの、一般的には、おやすみは眠る前の行事ですから、元気である必要はないわけで…。
「おはよう!こどもショー!」みたいな番組があっても、
「おやすみ!こどもショー!」は必要ないわけで、逆に、PTAあたりから、「せっかく、こどもを寝かしつけたのに、起こすような番組を作るなんてぇ!キィ~ィ!」なんてクレームが起こるかもしれません。

おやすみの国の王様も、わかってはいるのですが、やっぱりせっかく言うのなら元気に言いたい。
根がポジティブな性格なので、その鬱憤はコップいっぱいで、今にも溢れてしまいそうで、隙があれば、逃亡してやろう。
おやすみの国の王様は、ついにその野望を実行してしまいました。

おやすみの国の王様は側近の2人に、
「雨が降るかもしれぬ。傘を持ってまいれ!あっ、おまえは小腹がすいたから何か軽食を持ってまいれ!」
おやすみの国の王様を一人残す事を躊躇する側近の二人に、
「えーい!わしは子供じゃないぞ、一人で待てるわい。そんな心配してる間に雨が降り出したらどうする!さっさと取りに行ってこい!」
おやすみの国の王様のあまりの激怒に、側近のふたりは慌てて、城へと戻って行きました。
その慌てて走り去る側近の背中を見ながら、ニヤリと笑うと、側近の二人が戻って、おやすみの国の王様がいない事に慌てる姿を想像しながら、その場を離れて行きました。

(続く)