CH マルゴー詳解 その3 | ろくでなしチャンのブログ

CH マルゴー詳解 その3

ぶどう シャトー・マルゴー その3

      Chateau Margaux 

                                         1級 PP1級      

 

評 価 ボルドー第4版より 重要なヴィンテージ+補記

 

ピコピコハンマー 1960年代と1970年代の凡作の続く悲惨な時期にピエールとベルナール・ジネステの不十分な財政管理(国際的な石油危機や1973年と1974年のワイン市場の暴落がその原因である)のもとで生産されたワインは、豊かさや凝縮感、個性に欠けるものがあまりにも多すぎた。その後、1977年にマルゴーはアンドレとラウラ・メンツェロプロス夫妻に売却され、ただちに葡萄畑やワインの醸造設備に惜しみなく大金が投入された。

 エミール・ペイノーがワイン醸造を監督するコンサルタントとして迎えられた。そうした経済的、精神的な肩入れがマルゴーのワインに反映されるのは数年先のことになるかもしれないと思われたが、マルゴーの底なしの偉大さを世界に見つけるには、1978年のヴィンテージ1つで十分だった。
 残念なことにアンドレ・メンツェロプロスは、苦闘していた第一級シャトーが驚くべきエレガンスと豊かさと複雑さを備えた、輝かしく一貫性のあるワインに変貌するのを見届ける前にこの世を去った。エレガントなラウラ夫人、そして近年は世事に通じたやり手の娘、コリンヌがここを取り仕切っている。この2人は少なからぬ才能の持ち主たちに取り巻かれているが、なかでもポール・ポンタイエの存在は光っている。1978年のマルゴーはすぐに評判を勝ち取り、その後もきら星のごときワインを次々に送りだした。絶句するほどすばらしい豊かさとバランスは、1980年代にボルドー全体でつくられたどのワインよりもマルゴーが良好だと言っても過言ではなかった。

 よみがえったマルゴーの特徴は、豪勢な豊かさ、熟したブラックカラント、スパイシーなヴァニリン・オーク、スミレなどの深みのある多面的なブーケを持つスタイルである。今ではその色や豊かさ、ボディ、タンニンのどれをとっても、1977年以前にジネステの支配下で造られていたワインに比べ見違えるほど充実している。

 マルゴーは辛口の白ワインも造っている。「パヴイヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー 」は、ソーヴィニョン・ブランだけを植えた11.8haの葡萄畑から生産されている。オーク樽で発酵させ、その後10ケ月間寝かせてから瓶詰めする。雑学好きにお教えすると、これは壮大なマルゴーのシャトーから数百メートル道を上がったところにある、シャトー・アベル・ローランと呼ばれる小さな建物で造られているのだ。このメドックの最高級白ワインはキレがよく、果実味が豊かで、ハーブとオークの香りがそこはかとなく漂う。

 

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キャミソール 一般的な評価 1960年代と1970年代は惨たる出来栄えであったが、その後1980年代にシャトー・マルゴーは文字通りよみがえり、それ以降は連続して100点満点に近いワインを生み出している。品質の面で言えば、このシャトーは過去20年間、その格付けにふさわしくあり、セカンドワインのパヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーは消費者の注目を引くに値する。

 

 

古いヴィンテージ

 

 1981年は驚くほどエレガントで、見事なワインだ。確実に「ワイン・オブ・ザ・ヴィンテージ」の最強候補の1つである。2002年10月に最終試飲した時は91点を付けた。1979年と1978年も傑出したワインだ。一貫して90点~93点を付けてきた。1979年の方が心持ち新鮮さを感じさせ、より輪郭がはっきりしている。1978年はよりがっしりしていて、無愛想だ。いずれのワインも十分な飲み頃になっているが、少なくともあと10年~15年は持ちこたえる能力がある。

 もちろん1978年がメンツェロプロス体制で生産された最初のヴィンテージだったわけだが、それ以前、ジネステ家がオーナーだった頃は失敗の連続だった。1975年(現在は73点)、1970年(現在は67点)、1966年(現在86点)、1964年(現在69点)といったヴィンテージは、これでもボルドーの一級なのだから珍品である。もっとも、これらは洗い落とされたヴィンテージだし、凡庸の殻を被っただけだ。

 もちろん1961年(最終試飲2001年12月。未だに古典的な94点のワインである)のように卓越したワインもある。それ以外のヴィンテージでは、1959年が90点に到達するかもしれないが、とうてい1961年ほど良好なものではない。

 1953年は伝説的なワインだ(98点最終試飲(マグナム)2001年1月)。壮観なワインなのである。もしかしたらやがては1990年が似たスタイルのワインと証明されるかもしれない。

 新品同様のまま保管されていた瓶が見つかるようなら、1928年(98点最終試飲1994年10月)も一度飲んだら忘れられないような、100点満点に近いワインで、1949年、1947年、1945年といったがっかりさせられることが証明されたワインよりはるかに良好である。

 もちろん1900年(1996年12月に試飲した時は100点だった)はこれまでボルドーで造られたもっとも有名なワインの1つだ。以降5回試飲したが、その内3本は明らかな偽物で、残りの2本はくたびれていたが、真正の物だった。今となって敢えて手をだそうとは思わない。本物より偽造品のはるかに多いからだが、新品同様のまま保管されていた本物を試飲する機会に恵まれた人なら、すぐその不死身さを認識する筈である。

 

○1982年 PP98 

 一度は1983年の方がより古典的でより良好な作品かと思ったものだが、私も人間だと言うことだ。1982年のワインは、1983年を追い越して、誰が見ても判るほどすぐれた作品となっている。一生の始まりはいささかごつい体躯をした、力強い、男性的な、粗雑とさえいえるスタイルをしており、タンニンのレベルは高く、巨大なエキス分や、豊かさがあったものだが、どんどん都会的になっていき、タンニンも継ぎ目なくまとまっている。光を通さないほど濃い紫/ガーネット色をしており、ほのかなお香、甘いトリュフ、燻煙、ブラックカラント、花、湿った土を思わせる。非常にフルボディで、グリセリン、エキス分、タンニンのレベルは特筆に値する。多分メンツェプロス家の管理下では最もスケールの大きな、最も凝縮感のあるシャトー・マルゴーだ。もっとも、純粋なフィネスやエレガントの点では2000年や1996年、1990年と肩を並べられるようになるかは疑わしい。タンニンのレベルは高いのだが、どうやらこのヴィンテージらしい古典主義はないようだ。それでも急速に力を付けてきているし、空前の、心動かされる作品の1つになりつつある。最終試飲2002年12月。 予想される飲み頃 現在から2035年 sei 

 

○1982年 PP98  Wine Advocate June 2009

 98-100の間で一貫して得点し、素晴らしい1982年マルゴーは、過去15〜20年間に生産されたヴィンテージよりもわずかに大きく、大胆で、より男性的かもしれません。その暗い梅/紫色は甘いカシスと花の下見と混ぜた溶けたタールのノートが続きます。タンニンにわずかな素朴さで、シャトーマルゴーのための非常にフルボディと密な、それは大ヒット力、豊かさ、印象的な芳香族を誇っています。‎

 予想される飲み頃 現在から2049年 sei

 

            

 

○ 1983年 PP96

 一貫して記してきたように、息を飲むようなワインになることもあるだが、本書第3版以降1ダース近くも試飲してきたうちの半分以上の瓶が汚染されたコルクのために台無しになっていた。事実、ワインの貯蔵庫の一部にTCAの問題でもあったのではないかと思いたくなる。コルクのせいで変質しているハーフ・ボトルの比率はレギュラーよりもさらに高い。ただし、きれいなものの場合、私がほんの4年前に推測したよりはるかに早く十分な飲み頃に達したようだ。濃い、くすんだプラム/紫色をしており、ゴージャスなノーズは燻したハーブ、湿った土、マッシュルーム、甘いクレームドカシスと混ざり合ったバニラやスミレを思わせる。ミディアムからフルボディで、深みがあり、豊かで、力強い。タンニンは甘く、果実味の凝縮感はたっぷりある。最終試飲2002年11月。

 予想される飲み頃 2020年まで ダウン

 

  

 

○ 1985年 PP95

 十分な飲み頃が近づいている、この見事なまでに甘いシャトー・マルゴーは、濃いプラム/紫色をしており、巨大で、甘いノーズはブラックカランとと混ざり合った甘草、トースト、森の下生え、花を思わせる。ミディアムからフルボディで、しなやかなタンニンがある。肉付きのよい、ジューシーな、非常に汁気の多い多層的な中間部をしている。この広がりのある、ビロードのようなワインは、飲み頃の高原部に入った。(保管が良ければ)少なくともあと10年~15年はそのままだろう。非常においしく、魅惑的で、豪華。向こう20年で飲みたい。最終試飲200年10月。 予想される飲み頃 2015年まで ダウン

 


○ 1986年 PP98 

 シャトー・マルゴーのとてつもないワインで、過去50年で最もタニックな、内向的なマルゴーでもある1986年は、氷河のようにゆっくとしたペースで成長を続けている。色はいまだに濃いルビー/紫色だが、縁はほのかに薄くなってきている。数時間空気に触れさせておくと、香りが衝撃的になり、燻煙、トースト、クレームドカシス、ミネラル、白い花の趣が見られるようになる。非常にフルボディのワインで、タンニンは強いが甘く、純粋さは偉大である。非常に男性的な、フルボディのスタイルをしていて、多分熟成能力の点ではほとんど不死身と証明されるだろう。幼児期をじわじわと抜け出して、青年期に近づきつつある。最終試飲2002年12月。 予想される飲み頃 現在~2050年 sei

 

〇 1986年 VP98+ Antonio Galloni  Vinous.com Feb 2012

 1986年シャトー・マルゴーはさらに感情的に感動しました。まだ信じられないほど若々しく、それは信じられないほどの焦点と深さを示し、すべてかなりの構造に裏打ちされています。信じがたいかもしれませんが、この夜、1986年はまだピークから数年離れているように見えました。それはあらゆる点で印象的でした。

 

〇 1986年 PP97 Neal Martin Wine Advocate Dec 2016

 1986年のシャトー・マルゴーは、ヴィンテージのダークホースの1つです。それは今完全に成熟している絶妙な花束を持っています、赤と黒の果物、スミレ、トローチと冷たい石のヒントの混合物で。それはグラスの中で花を咲かせ、常に強度を増しています。味わいはミディアムボディで、上質なタンニンがあり、ヴィンテージを考えると予想されるようにより堅牢なマルゴーで、明らかにしっかりとしたバックボーンがあり、1985年や1989年よりもストレート・レースです。しかし、ここには素晴らしい描写と焦点があります。ワインに厳格さと古典主義を求めるなら、ここが来る場所であり、さらに鉄の仕上げには素晴らしいミネラルと緊張があります。近年見過ごされているかもしれませんが、1986年のマルゴーは、このシャトーを愛する人に強くお勧めします。これはついに成熟したワインです。

  予想される飲み頃 2016年から~2040年 sei

 

  

 

○ 1988年 PP89

 いささかがっしりとした、フルボディの、やや筋肉質なスタイルで、暗い、殆ど光を通さないほど濃いガーネット色をしている。大柄な、スモーキーな、土っぽいノーズで、ほのかなコンポスト、溶けたアスファル、黒系果実、マッシュルーム、新樽を思わせる。シャトー・マルゴーに期待されるエレガンスには欠けているが、頑強な舌触りのタンニンがたっぷりで、ほとんど粗削りな、丸々と太ったスタイルをしている。口にしみがつくような、口の中がいっぱいになるようなワインだが、比較的がっしりしたスタイルをしている。最終試飲2002年3月。 予想される飲み頃 現在~2018年 ダウン 

 


○ 1989年 PP90

 1990年の弟分のせいで矮小化されているが、暗いプラム/ガーネット色をしており、大柄な、甘いノーズは新品の鞍革、香ばしいオーク、雑草のようなブラックチェリーやカシスの果実を思わせる。ミディアムボディで、タンニンは比較的突出しているが、凝縮感や純粋さは傑出している。いささか切り詰められた感じのする、圧迫感のあるフィニッシュ。傑出しているのは確実だし、瓶内で成長して少々重みを身に付けてきたが、シャトー・マルゴーの作品としてはとうていもっとも深遠なものの1つとは言えない。最終試飲2002年10月。 予想される飲み頃 現在~2025年 sei 

 

 

 

○ 1990年 PP100

 シャトー・マルゴーの原型では力強さとエレガンスが一体となる。このワインはどうやら殆ど10年近くも熟睡していたようだが、この数年で開き始めた。濃いルビー/紫色をしており、成長途上ながらも心動かされるほど霊妙なブーケは甘い黒系果実、スミレ、燻煙、樟脳、甘草を思わせる。ミディアムからフルボディの、絹のような舌触りをしたワインは、未だに4年~5年目の樽出しサンプルのような味がしている。もっとも、香りは出てきているし、10年近くも続いたあのいささか画一的な、睡眠期間からは抜け出した。分析上の酸は弱いが、輪郭はたっぷりで、タンニンは非常に強く、葡萄の凝縮感や、グリセリン、エキス分は途方もない。色はほとんど成長の兆しを見せていない。夢のように素晴らしいブーケが姿を現しつつあり、フルボディで、豪華で、非常にリッチである。このヴィンテージに於ける偉大な業績は、あと4年から5年で飲めるようになるだろうし、少なくとも3年~40年は持ちこたえるだろう。最終試飲2002年10月。

 予想される飲み頃 現在~2040年 sei 

 

○  1990年 PP100 Wine Advocate June 2009

 2008年、ワインの香りと味が同じだったのは驚くべきものでした。春の花、クスノオ、甘い赤と黒の果物、甘い赤と黒の果物の異常な芳香表示を提供し、甘草のヒント、そしてその100%新しいオーク樽の老化の証拠はありません。低酸性で丸くて寛大ですが、レーザーのような精度で新鮮な豪華でフルボディの豊かさ、この素晴らしいワインは、それがさらに30年間残っているはずです完全な成熟の高原に達し始めています。センセーショナルな努力、それはシャトーマルゴーで作られた伝説的なワインの一つです。‎
 予想される飲み頃 現在~2039年 sei

 

 

○  1992年 PP87

 深みのあるルビー色をしており、いくらか紫色のニューアンスもある。比較的軽い、いくらか押し黙った趣はカシス、甘草、新樽を思わせる。口に含むと、ミディアムボディで、やわらかで、十分な飲み頃になっており、エレガンスや純粋さは驚くほどだ。フィニッシュは少し短いが、これまた非常に印象的なワインだ。向こう4年~5年で飲む必要がある。最終試飲2002年10月。 予想される飲み頃 2009年まで ダウン  

 

 

 

○  1993年 PP88

 この困難なヴィンテージにシャトー・マルゴーは、比較的中量級の、やわらかい、果実味豊かな、いくらかほのかな雑草のような煙草を思わせるアロマや風味があるワインを造りだした。暗いプラム色をしており、ミディアムボディで、十分な飲み頃になりつつある。こんな身の毛のよだつ年のワインとしては驚くほどの深み、葡萄の完熟感、甘みがある。最終試飲2002年10月。 予想される飲み頃 2010年まで ダウン

 

 

 

○ 1994年 PP91 

 この概ね忘れられたヴィンテージは、過去1年から2年で曲がり角を曲がってしまったようだ。最高のシャトーでは厳しい選別のおかげで常に濃厚さのあるワインになってきたが、タンニンのレベルが強すぎることが多く、タンニンのタイプもより青臭い、渋いものだった。それでも1994年のシャトー・マルゴーは常に「ワイン・オブ・ザ・ヴィンテージ」の候補だった。未だに濃いプラム/紫色をしており、大柄な、甘いノーズは黒系果実と混ざり合った甘草、樟脳、バニラ、ほのかな花を思わせる。濃厚で力強いが、タンニンはやわらかくなり、1990年代後半に感じたほど硬い、出しゃばりなものではなくなったようだ。このワインは何十年も持ちこたえる筈だし、うまくいけばさらに継ぎ目のないものになるだろうが、このタンニンの全てが徐々に四散していくだろうとは思い難い。最終試飲2002年10月。 予想される飲み頃 2003年から2025年 sei 

 

 

 

シャトー・マルゴー詳解 その1 詳解はこちら

シャトー・マルゴー詳解 その2 詳解はこちら
シャトー・マルゴー詳解 1982年~1994年 その3 詳解はこちら

シャトー・マルゴー詳解 1995年~2004年 その4 詳解はこちら

シャトー・マルゴー詳解 2005年~2013年 その5 詳解はこちら

シャトー・マルゴー詳解 2014年~       その6 詳解はこちら 

シャトー・マルゴー詳解 1995年~2009年  その7 詳解はこちら

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シャトー・マルゴー詳解 2010年~2019年  その8 詳解はこちら

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シャトー・マルゴー詳解 2020年~         その9 詳解はこちら

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