CH ベイシュヴェル詳解 その3
シャトー・ベイシュヴェル その3
Chateau Beychevelle
AOC Saint Julien Beychevelle
評 価
○ 2022年 IP94~IP96 Lisa-P-Brown Wine Independent May 2023
カベルネ・ソーヴィニヨン54%、メルロー42%、プティ・ヴェルド4%のブレンドである2022年 Beychevelle のTPIは78、pHは3.8です。色は濃いガーネットパープルで、クレームドカシス、プラムプリザーブ、モレロチェリーの顕著なノートを目覚めさせ、砂糖漬けのスミレ、ダージリンティー、ダークチョコレートのニュアンスに取って代わるには、渦巻きが必要です。ミディアムからフルボディの味わいは、きめの細かいタンニンとたっぷりのフレッシュさに支えられたブラックフルーツジャムの層が密集しており、ミネラルリフトで長く仕上げられています。
○ 2022年 PP92~PP94 William Kelley Wine Advocate May 2023
ダークベリー、チェリー、カシスのアロマとスミレと甘草の香りが混ざり合い、クリーミーな新しいオークに囲まれた2022年 Beychevelle は、ミディアムからフルボディ、ビロードのようで層状で、このアドレスの最近のヴィンテージの文脈で、豊かで異常に上品で洗練されたタンニンに囲まれた果肉の芯があります。。It's a blend of 64% Cabernet Sauvignon, 42% Merlot and 4% Petit Verdot, with a pH of 3.85, quite typical for this address.
〇 2022年 VP94~VP96 Antonio Galloni Vinous.com May 2023
2022年 Beychevelle は、素晴らしいです。最近のヴィンテージでは、Beychevelle は華やかで贅沢なサンジュリアンでしたが、2022年には驚くほど活気があり、新鮮で、ほとんど衝撃的です。熟した赤いチェリー/プラムの果実、ブラッドオレンジ、バラの花びら、スパイスがすべて美しく描かれています。何よりも、ワインのフレッシュさとドライブ、最近のヴィンテージにはあまり見られない品質に感心します。そのため、2022年はここで私のお気に入りの最近のヴィンテージの1つになっています
〇 2022年 VP95~VP97 Neal Martin Vinous.com 2023
2022年 Beychevelle は、9月12日から29日の間に36hl/haで収穫され、70%の新しいオークで熟成されました。ブラックチェリー、ブルーベリー、カシスとバイオレットのタッチが入った強烈なブーケがあります。この初期段階では、他のサンジュリアンワインほど派手ではありませんが、描写されており、積極的にエネルギーに満ちています。味覚はミディアムボディで、美しく彫刻されたタンニンに囲まれたサッピーな黒い果実があります。2022年は非常に調和がとれており、サテンのような質感で、フィニッシュに向かって穏やかに扇状に広がっています。それは私が樽から味わった中で最も魅惑的な Beychevelle の1つになり、見逃せません。シャポー、Mr. White !!
2023.8.8補修工事
価 格 表 Chateau Beychevelle
2000年 £140 2011年 £ 87
2001年 £ 96 2012年 £ 95
2002年 £ 92 2013年 £ 89
2003年 £100 2014年 £ 90
2004年 £ 90 2015年 £ 95
2005年 £110 2016年 £ 89
2006年 £ 97 2017年 £ 84
2007年 £ 91 2018年 £ 81
2008年 £ 93 2019年 £ 62
2009年 £100 2020年 £
2010年 £110 2021年 £
WINE SEARCHER 2021.5.17記
ボルドーを訪れる観光客がシャトー・ベイシュヴェルを見逃すことはあり得ないだろう。ここは、サン・ジュリアン村を目指して北へ向かう県道2号線で最初にぶつかるメジャーなシャトーなのだ。道路に面した庭には、美しい花が咲いているので、飛ばしていたドライバーでさえ車を止め、写真を撮って行く事が多い。
ベイシュヴェルのワインは常に一貫性に欠けている。見事な造りとなる事もあるのだが、1960年代と1970年代は、ヴィンテージごとの品質のばらつきに何があったし、1974年、1987年、1992年、1993年といった凡庸な年にはがっかりさせられた。偉大な年(1990年)にぱっとしない出来だった事もある。最高の年のワインでさえ、非常になめらかで、しなやかで、若いうちから飲むことができることから、潔癖な人や、伝統を重んじる人々に不必要な懸念を抱かるようだ。近年最高のヴィンテージでは、たいてい10年目にはもう十分な飲み頃になっているが、15年以上、十分に熟成させるだけの中身は持っている。しかし、総じて、ここのワインは何十年も熟成させる必要はない。
1980年代前半にはオーナーもこのワインが、イギリス人の言う「老骨」になれないのはこの卓越した滑らかさを持つスタイルのせいだと言う事に気付き始めた。そこで1982年以来、より引き締まった、より筋肉質なカベルネ・ソーヴィニョンのブレンド比率を高め、極めて重要なキュヴェゾンの期間を長くし、新樽の使用比率を増やした。また、軽めに仕上がった槽のワインはセカンド・ラベルとして売り出す事にした。こうした技術のお陰で品質は著しく高まり、1982年、1986年、1989年、2000年には上等な作品が生まれた。1960年代、1970年代の軽くて、しなやかで、エレガントで、直ぐ飲み頃になるスタイルは、1982年以降、より引き締まった体躯の、より凝縮感のあるタイプへと移行したのである。ただし、このワインの持つ愛想の良い、率直なスタイルや魅力、フィネスが損なわれることはなかった。
ベイシュヴェルはサン・ジュリアンで最も高価なワインの仲間ではない。レオヴィル・ラス・カーズやデュクリュ・ボーカイユーよりはるかに安い価格で販売されている。
一般的な評価
このシャトーのワインは、1982年以降相当改善されている。深遠なものになる事こそめったにないとはいえ、造りは健全で、魅力的で、エレガントで、フィネス重視のスタイルをしている。最も、最良のサン・ジュリアンの特徴である更なる深み、構造、複雑さ、質感を欠いているヴィンテージもある。ベイシュヴェルの出来にはムラがあるので気をつけた方が良い。それでも最良のサン・ジュリアンと評価されることはないものの、価格がリーズナブルなため興味深いものとなっている。卓越した1982年、1986年、1989年、2000年のワインはこのシャトーの潜在能力をはっきり示している。最良の年には3級相当の価値があるが、あまり良くない年のものは5級どころか、最高品質のブルジョワ級にも及ばない。
シャトー名「ベイシュヴェル」は、「ベッセ・ヴォワール」に由来するとされています。
シャトーはフランス海軍提督エペルノン(デペルノン)公ジヤン・ルイ・ノガレ・ド・ラ・ヴァレットの城館であったため、ジロンド河を航行する材木船(帰りはワインを積む)は、この城館の前を通る時には、敬意を表して、ベッセ・ヴォワール「帆を下げよ。」とフランス語で叫び、船の帆を中ほどまで下げたと言われています。
当時の風習では、ガスコーニュ語(Baisse Voile~バイス・ボワル)を使用していたらしく、このガスコーニュ語の方言である「ベイシュヴェル」となったとされているのですが、エペルノン公爵は城館に住んではおらず、ワインの輸出に際してはこの地で税金を支払う必要があり、帆船は帆を下げて停泊したとされており、さらに、エペルノン公爵が提督になったのは1587年であり、既に1500年代初頭の土地記録簿にはベイシュヴルの地名があったとされていますので、ベッセ・ボワール説は創作と思われます。
また、ガスコーニュ語のbeychet(船)とvelo(帆走)に由来するとの説もあるようです。
歴 史
17世紀中頃に、大規模な葡萄栽培が行われていたようです。フランス海軍提督エペルノン(デペルノン)公ジヤン・ルイ・ノガレ・ド・ラ・ヴァレットが所有し、2代目はフランス革命によって追放されたと言いますが、彼は1825 年、甥の貴族院議員・ボルドーのワイン商のピエール・フランソワ・ギュスティエにシャトーを売却しておりますので、おそらく買い戻していたものと思われます。(1757年シャトーはブラシエ侯爵による改築、19世紀の終わりにエン家により増築等の記録がありますが、所有変遷の詳細は不明です。)
1875年、ピエールの後継者たちはシャトーをパリの銀行家、アルマン・アイン(ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの従兄弟と言われています。)に売却します。アルマンはフィロキセラ禍を被り、壊滅的な被害を受けた畑に再び葡萄を植えたようです。
1883年にアルマンが亡くなると、ルイジアナ出身の妻マリー・アメリー・コーンがシャトーの経営を引き継ぎます。彼女は経営センスがあった様で大葡萄園を立ち直させたと言います。また、篤志家でもあり、「マリー・アメリー」無料診療所を建設し、シャトーの礼拝堂の修復も行ったといいます。
マリーの娘マリー・ルイーズは、1890年に国会議員で郵政大臣のシャルル・アシール・フールと結婚し、1926年にフールが亡くなり、息子のアルマン、さらに1970年に息子のアイマール・アシール・フールが経営権を手中に収めますが、ビジネス・パートナーを求め、1984年、フランスの相互保険会社アジュール・ジー・エム・エフ・グループ、AZUR/GMFが小規模の資本参加を始め、1986年アイマール・アシール・フールが死去すると、AZUR/GMFは89%の株式を取得し、残りの11%は、ソシエテ・ジェネラルの年金基金が保有します。
1988年、GMF グループは、日本のサントリーグループと提携し、シャトーの現オーナーである子会社グラン・ミレジム・ドゥ・フランス社資本金8912万8338ユーロで設立をします。出資比率はフランスの相互保険会社 AZUR/GMF(アジュール・ジー・エム・エフ・グループ)53%、日本のワイン・スピリッツ会社サントリー37%、ベルギーの相互保険会社エシアス10%とされています。同社は、オー・メドックのクリュ・ブルジョワ・シュペリュールのシャトー・ボーモンも所有しています。
シャトー ベイシュヴェルは、約250haの敷地を所有していますが、葡萄畑にしているのは、わずかに70haのみです。葡萄樹の育成に適した土地には葡萄樹を植え、その他の土地は羊の放牧や牧草地として利用し、羊の糞等を堆肥として畑に使い、全体として有機的な農法を行っており、2005年に「Terra Vitis(テラ・ヴィティス) 」認証および「AGRICULTURE RAISONNEE(減農薬農法)」としての資格を取得しています。
1661年には、シヤトー・ベイシュヴェルの畑の一部はシャトー・ブラネル、デュクリュ・ボーカイユに売却されている様です。
シャトー・マーク(紋章)は船首にワインの神ディオニュソスを守るギリシャ神話のワインの番人、グリフォン(グリップス)を掲げた船。
アミラル・ド・ベイシュヴェル
Amiral de Beychevelle
AOC Saint Julien Beychevelle
アッサンブラージュ 2016年 カベソー67% メルロー33%
キュサック~Cussaacに22ha(AOC Haut Medoc)の畑を有しますが、こちらの葡萄は歴史的経緯からアミラル・ド・ベイシュヴェル(AOC Saint Julien Beychevelle) に使用されることが認められているとされます。この他AOC Haut Medocには14haの畑をゆうしますが、こちらの方はAOC Saint Julien Beychevelleのワインに使用することが認められていません。あくまで1855年格付け時の実態による措置のようです。
価 格 表 Amiral de Beychevelle
2000年 £37 2011年 £33
2001年 £62 2012年 £37
2002年 £37 2013年 £36
2003年 £ 2014年 £38
2004年 £92 2015年 £45
2005年 £ 2016年 £39
2006年 £30 2017年 £34
2007年 £37 2018年 £41
2008年 £33 2019年 £
2009年 £39 2020年 £
2010年 £46 2021年 £
WINE SEARCHER 2021.5.17記
アスパラント・ド・ベイシュヴェル
Aspirant de Beychevelle
AOC サン・ジュリアン・ベイシュヴェル
~Aspirant 大望の意
価 格 Aspirant de Beychevelle
2016年 £34
2017年 £25 WINE SEARCHER 2021.10.20記
ル・オー・メドック・ド・ベイシュベェル
Le Haut Medoc de Beychevelle
AOC Haut Medoc
畑 面 積 13ha
年間生産量 9万本
セパージュ カベソー66% メルロ34%
樽 熟 成 15か月
新 樽 率 10%
価 格 Le Haut Medoc de Beychevelle
2015年 £22
2017年 £33
WINE SEARCHER 2021.10.20記
レ・ブリュリエ・ド・ベイシュヴェル
Les Brulieres de Beychevelle
AOC Haut Medoc
畑 面 積 13ha
年間生産量 9万本
セパージュ カベソー66% メルロ34%
樽 熟 成 15か月
新 樽 率 10%
価 格 Les Brulieres de Beychevelle
2010年 £29
2011年 £18
2012年 £17
2014年 £18
2015年 £23
2016年 £20
2017年 £21
2018年 £24 WINE SEARCHER 2021.10.20記
AOC Haut Medocの畑から造られるワイン。興味深いのは、サン・ジュリアンの南にあるコミューン・キュサック~Cussaacに22haの畑を有しています。当然AOC Haut Medocなのですが、歴史的にベイシュヴェルのワインに使われてきたという既得権?からかAOCサン・ジュリアンであるシャトー・ベイシュヴェルやセカンドに使用されることが認められているようです。
ル・オー・メドック・ド・ベイシュベェルの別レーベル?
グラン・バトー
Grand Bateau
AOC Bordeaux
年間生産量 40万本
アッサンブラージュ メルロー75% カベソー25%
樽 熟 成 6ケ月~8ケ月
ネゴシアンと提携して造られているネゴシエントワイン。
スクレ・ド・グラン・バトー
Secret de Grand Bateau
AOC Bordeaux
ネゴシアンと提携して造られているネゴシエントワイン。
アミラル・ド・フランス
Amiral de France
AOC Bordeaux
シャトー・ベイシュヴェル詳解 1982年~2009年 その1 詳解はこちら
シャトー・ベイシュヴェル詳解 2010年~2019年 その2 詳解はこちら
シャトー・ベイシュヴェル詳解 2020年~ その3 詳解はこちら
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