ゆうちゃんは今日、なんだが機嫌が悪い。


お家に帰ってからずっと私とは口を聞いてくれないし、「午前のお仕事どうでしたか?」と聞くとさらにムスッとした顔で私を睨みつける。



(これは、午前のお仕事でなんかあったなぁ…)



久々の拗ねモードゆうちゃんに、私はどうすればいいか分からず襟足をかきあげては撫で下ろす。




「……」




二人の間に沈黙とした時間が流れる。


あまりにもムスッとした顔でソファーに寝転がるのだから、私はその隣でじっとゆうちゃんの姿を見つめるほか何も出来なかった。




アッ…………




タイミングよく、スマホの陰で一瞬だけ視線を走らせたゆうちゃんが覗き見していた私の視線とぶつかる。


バレたことが恥ずかしいのか焦って目線をそらすゆうちゃんの耳はほんのりと赤く染っていた。



「ゆうちゃん……」



その可愛らしい行動に私の感性が理性を通り越した。右手でその立ち塞がるスマホを除いては、ゆうちゃんの両手をその頭上に固定した。



「なぁちゃん……」


弱々しい一声に私の心がギュッと締め付けられる。赤く潤むゆうちゃん目からは不安と不満が、いわんばかりに溢れていた。



「はい…なぁちゃんです」



先程の荒々しい行動が信じられないほどに、優しい声色で私が返事する。



「なぁちゃんは……誰が一番好きなの…?」



思いがけない一言に私は眉をひそめた。「もちろん、ゆうちゃんです」とそう返そうとしたが、ゆうちゃんは今日メンバーに言われた一言をひっそりとした声で呟いた。



「奈々さんとは、別れたのですか?」



どうやら最近私がほかのメンバーと親しい行動をしすぎてしまったせいで、メンバー内で私とゆうちゃんが破局したのではないかという噂が流れ始めていたらしい。




「なぁちゃんはモテるもんね………


でも今のなぁちゃんの彼女は、私なのに……」




そう小さく呟くゆうちゃんをみて、私はその口に優しくキスをした。まるでその不安を拭うように荒々しくも舌を侵入させると、ゆうちゃんはそれすらも受け入れてくれた。



「ゆうちゃんごめんね、不安にさせて」



二人の間に引かれる長い銀の糸が先程の荒々しいキスを物語る。ビクビクッと肩を震わせながら、耳の先まで真っ赤に染まるゆうちゃんを見て、ついつい私はその愛おしさに魅入ってしまった。



「ゆうちゃん、してもいいですか?」



耳元でそう呟くと、ゆうちゃんはまたビクッと肩を震わせた。



「ダメって言ってもする癖に………」

「うん」




私が困った顔して微笑みかけると、ゆうちゃんはどこか不服そうな顔で私の手を繋いでくれた。


夜は更けていくばかり、どうかこの先も、あなたの不機嫌の理由は私でありますように。