かたみ歌 朱川湊人 | あきすとぜねこ☆映画とか食べ物とか日常とか☆
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死んでしまったはずのあの人が見守っていてくれる街……。
東京の下町、アカシア商店街に起きた心暖まる、7つの奇蹟の物語。
(新潮文庫紹介文)



読み終えると心が温かくなるノスタルジックホラー短編集。
別々の話だけれど、ちょっとずつ繋がっているのも面白い。
東京の下町、アカシア商店街。時は話により前後するが昭和40年代くらいか。
架空の街なのに、読んでいる間はそこに居るかのような温度がある。

朱川湊人の小説を読むと、便利になった世の中が淋しく思ってしまうのです。

以下、特に良かったものをメモ。

<夏の落し文>
「カラスヤノアサイケイスケアキミレス」
商店街の電柱に貼られた怪文書。
それは”天狗の落し文”だった。

”天狗の落し文”って初めて知りました。
気持ち悪いものがあるんですね。
こんな文があったら気味悪すぎる!!
そして謎の少年も怖かったです。
そして優しかった兄の秘密。
怖さの後に来る、人の優しさ。
朱川湊人らしいお話です。

<栞の恋>
酒屋の看板娘邦子は、ザ・タイガースのサリーファン。
店の前を通るサリー似の大学生に密かに恋していた。
サリーが古本屋で必ず手に取る本があることを知り、栞代わりに挟んだ
短い手紙のやり取りがはじまる。

自分の正体を明かさずに、はじまった小さな文通。
なんてロマンチックなんだろう!
少女と一緒にドキドキしてました。


<枯葉の天使>
本の最後に掲載されているお話で、ここまで全てに出てきてる
古本屋の老人の秘密が明かされます。
まさかここで、あのお話のあの人が出てくるとは!
亡くなった人と話が出来たらって、私も思う。
もしかしたら、この小説みたいに温かく見守ってくれてるのかもしれない。