<前回までのあらすじ>
『怖いと思われている、稲荷の誤解を解いてほしい』
突然現れた稲荷の神様(トヨウケヒメ)にそう依頼された私。
My神様である高野山の清高稲荷大明神の遣わした
子狐眷属とともに、六甲山上の高取神社にいた……
………これ。
夢? とかじゃないよね。
時折、参拝者が訪れる本殿に私はまだいた。
その場からなかなか離れることができないでいた。
そしてさっき目の前で起こっていた
「変」な体験にホワホワしていた……
菊「狐につままれるとはよく言ったもんだよねー」
………
………
菊「そんなん私にできるんかな」
かしこまりました! と約束したわけじゃないけど、
でも
でも
あの豊受姫命さまが笑ってくれたら……
めっちゃ嬉しいな。
菊「神様、消えてしまわれたけど。また会えたらいいな*」
本殿の外の木々が揺れる音を心地よく聞きながら、
少しだけ薄暗い中に立っていた。
子狐1「…………さっき、夢じゃないの? とか思ってたでしょ」
子狐2「神様の声が気のせいとかね……でも
なかったことにしないでほしいな……」
ふと見ると子狐さんたちが真面目な顔してる。
菊「………うん。そうだね。自分がまず信じないとね」
子狐1「そうだ! 便利なシステムが神社にはあるよ!!」
菊「? システム??」
子狐2「おみくじおみくじ!!
言葉が書いてある!
神様の言葉が形になったもの!
実は誰でも神様の声が気軽に聞ける、一番の方法。
それがおみくじなんだ♪」
菊「おーー。おみくじ大好き♪ 引いてみよう!」
高取神社には2種のおみくじがありました。
一つが社務所で引くもの。
もう一つがご神前で引く、小さな縁起物も包まれたもの。
菊「やっぱり神様の前のを引きたいよねー♪」
私はおみくじを引くときに意識することがある。
・答えてほしい神様
・答えてほしい内容
この2点。
この点を意識しながら引くと、
いつもドンピシャな言葉が書いてあってキュンとくる。
この日はもちろん、豊受姫命さまに。
質問は「何か言葉ください!」(←具体的なのが浮かばない時のヤツ)
エイッ! と引いて、中身を取り出し開いてみた。
中には最初に漢字が一文字。
「歩」
全てを人生の修行と想い 歩み続けよ
道なき道を雨の日も風の日も
何が起ころうとも
立ち止まることなく
ただただ前へ
あなたの足跡には花が咲き
新たな道が生まれるだろう
……………
……………
涙。 涙。 涙。
菊「……道なき道……」
道なき道を雨の日も風の日も。
雨の日も風の日も。
でもそれが必要なことを私は知ってるよ。神様。
雨が降るから芽が育つ。
風が吹くから種が飛ぶ。
それがたくさんの花を咲かせるために必要なことって
ちゃんと知ってる。
風に乗せて 花咲く場所を広げて行こう。
大丈夫。大丈夫。
大好きな神様が一緒だから、私は絶対に大丈夫。
おみくじに入っていた小さな縁起物は
金色の招き猫。
この招き猫さんがどんな未来を招いてくれるのか。
たった200円のおみくじ。
でも豊受姫命さまの言葉と強い想いがそこにありました。
神様、ありがとう。
私はあなたの力になりたい。
だから見ていてくださいね。
おみくじを畳んで丁寧にしまい、
本殿に向けて一礼し、私は高取神社を後にした。