闘志を呼び覚ませ!
28-30。
数字以上に、芦屋クラブに完敗だった。
全国大会とは直接関係がないとはいえ、兵庫県協会の公式戦。
15人制で芦屋クラブに敗れたのは過去にも記憶がない。(芦屋クラブのSNSによれば、創部47年目での初勝利だという)
改めて六甲は「自分たちは大して強くない」と言うことを思い知らされた。
「ひとつだけ。俺たちはチャレンジャー。相手よりも早くセット、動く、タックルしよう」。キックオフ直前の円陣で安主将は仲間に呼びかける。昨年の同大会や近畿リーグでも芦屋には随分苦しめられている。受けて入ると厳しい戦いになる。
キックオフ直後の2分に芦屋クラブがPGで先制する。六甲は6分に展開からWTB鈴木が右隅にトライをあげて逆転に成功するが、その後モールを簡単に押し込まれてトライをされたり、細かいミスからターンオーバーを許されたり、ペースをつかもうとする時点でスローフォワードでトライが認められなかったり。なかなかペースがつかめない。
前半3トライを取ってのハーフタイムでも、「接点、タックル、ブレイクダウン。全部負けている。もう一度0-0の気持ちでチャレンジしないと」(安主将)
後半の序盤、トライを取りきる場面でミスが起き、いや~な雰囲気が漂い始める。
前半からそうだったが、芦屋のイーブンボールへの働きかけ、プレッシャーは素晴らしく、接点でのプレッシャーは2人がかりで絡んでくるので、六甲は大いに苦しめられる。後半最初のトライは、その芦屋の地道なプレッシャーの積み重ねが六甲のファンブルを生み、インゴールにタッチダウンされたもの。
六甲はWTB三木のトライで落ち着こうとするが、終始ペースは芦屋のままだった。
「戦国近畿リーグ」の昨季、芦屋は入替戦に回った屈辱から雪辱を図り、春先から毎週のように強化試合を重ねてきている。
ブレイクダウンの鋭さ、リアクションの早さ、コミュニケーションの密さを強く感じた。一方の六甲は安易なパスミス、強引な仕掛け、リスキーなオフロードなどが目立ち、どことなく「緩さ」を感じた。特にイーブンボールへの働きかけはほぼ完敗。それが芦屋を勢いづかせる原因にもなった。
ラスト8分で1点差に詰め寄られるトライ・ゴールを許し、ラスト2分で逆転のPGを決められた。最後はタッチに蹴り出されてノーサイド。芦屋陣営歓喜の大歓声がグラウンドにこだました。
「たまに来て言うのも申し訳ないけど、なんか簡単なミスやポロリが多くて『六甲、下手やな』って思ったな」
給水係を務めた新理事長・内田幸児が率直な感想を述べる。強引な攻めは精度を失い、逆に相手を勢いづかせる。
毎年行われる芦屋クラブ戦。安主将の「俺たちはチャレンジャー」という言葉をどれだけ意識したメンバーがいたか。どことなく「今年も勝てる、いつでもトライは取れるだろう」と思ってはいなかったか?
一方の芦屋クラブは「打倒・六甲」がクラブのテーマでもある。負けても負けても必死に一丸となって闘志を燃やして、挑んでくる執念には脱帽だ。
「『六甲ファイティングブル』の公式戦ジャージを着て戦う大切さを改めて感じた試合でしたね」と、交代指示を務めた谷TDは要因を話した後
「負けたのは事実ですが、これはもう過去のこと。秋のシーズンには「この負けがあったからこそー」といえるようにしよう」と前向きに切り替えていくことを強調した。
「みんな。下向いちゃダメですよ」と安主将は仲間に声をかける。
「下を向かない。顔を上げて、皆の顔を見る。これをしっかり受け止めて、また積み重ねていきましょう!」
千里馬戦の結果や、この試合の結果で一喜一憂する訳ではないが、大喜びする芦屋陣営の歓声を聞いて「やっぱり勝たないとラグビーは面白くないな」と痛感したのも事実だ。それはサポートしてくれるマネジャーやスタッフだって同じだろう。
勝負事で一番大事なものを芦屋クラブに教えてもらった一戦だった。秋のリーグ戦にはしっかりと恩返しをしたい。
毎年、選手同士の多様なラグビー人生、経験、バックボーンが化学反応して成長していく六甲クラブ。この敗戦が次にどんな化学反応を見せてくれるのか。
この夏が大きなチャンスとなる。
(三宮清純)