中年女性。3ヶ月半ほど前から飲食時に左顎部の腫れと痛みが発現。耳鼻科で耳下腺の唾石と診断されますが内部からも外部からも除去が難しく、経過観察とされるも変化なし。咀嚼時に痛むので漢方で何とかならないかと受診。2ヶ月後に大学病院に紹介される予定だけれども待てないとのことでした。


拝見すると、左耳下腺部ですが、経絡的には三焦経〔さんしょうけい〕と小腸経〔しょうちょうけい〕の分布領域であることが分かりました。
前者はあれこれ氣がつくとか氣を使い過ぎる時に、後者は考え過ぎるような時に活性化します。それが積み重なると両経の氣が鬱積・加熱するため唾液の濃度が上がって唾石ができると想像されました。

 

生年月日的には元々感性と知性が過度に働く方のようですが、お話を聞くと、あることでストレス過剰で三焦・小腸両経が過度に働いていることが推察されました。これによる両経の鬱熱が唾液に石を形成せしめたようです。


そこで、両経を緩める脾経と肝経のツボに鍼を打つと瞬間に左耳下腺部の圧痛が消え腫れも少し引きました。加えて、自律神経を整え経絡の熱を冷ます漢方薬を処方しました。


一週間後、まだ食事の時に左耳下腺部が膨らんでくるとのことで再度鍼を打ちましたが、三週間後のか来院時には腫れも痛みもほぼ消失しました。

 

さて、治療は以上のようにスムーズに治ったのですが、このプロセスのなかで一番大切なことは、何故このような形で唾石が生じたのかということです。

 

これが理解されないと将来また再発するかも知れません。病氣とは学びであり、それによって得られる喜びでもあるのです。

 

この方は今回、ストレスで三焦経と小腸経に詰まりが生じ熱が生じて唾石が形成されたわけですが、その大まかなメカニズムの理解と共に、ストレス緩和にどう対処するかが大事なポイントになります。

 

この方の場合は子育てです。10代のお子さんが、元々よく勉強のできる優秀な方なのですが、学校が嫌になっているとのことで、それがストレスの原因のようです。

 

既述のようにこの方は感受性が強く頭がよく働くので、無理のないことですが、ついついイライラが高じて、それが左側の三焦経や小腸経に熱をもたらし石を生じさせたのだと思われます。

 

親子関係については、あまり親の観点からあーした方が良い、こーした方が良い等と子に期待せず、心を平和にして見守ってあげるのが基本かなと思いました。

 

親子の出会いについては、当院の2018年5月21日のブログ「運命と宿命と天命」に大伴由美子先生のご著書『自分へと続く道-体心点の発見-』のなかの「遙かなる日々に」という詩をご参照ください。この世での出会いというか縁というものがわかりやすいと思います。