今回もやはりNHKBSのヒューマニエンス絡みの話題です。
2020年10月15日の番組「"腸"脳さえも支配する?」では、腸は脳の親とも言える存在であり、人格、感情、好みといった本能的な部分に深く関わっている等といった内容、2021年3月4日の番組「"皮膚"0番目の脳」では、皮膚は脳が生まれる前から存在する。視覚、聴覚、味覚の機能がある等といった内容の番組でした。
腸の番組には東北大学心療内科教授の福土審先生、皮膚の番組では資生堂研究所主幹研究員であった傳田光洋氏が登場されていました。
実はこのお二人、私が「三焦と心包の中西医結合的観点からの理解の試み」中医臨床〔2017年〕や「心包・三焦の謎解きと祈り・祭祀に果たす役割」人体科学〔2019年〕の二つの論文をまとめる時に決定的に役立った書籍の著者でした。 
そもそもこれら二つの論文は、「表裏を為す膜状の臓腑で名ありて形なし」と言われてきた謎の臓腑である心包〔しんぽう〕と三焦〔さんしょう〕の謎解きをしたものです。五臓六腑という時の六腑目の腑が三焦、六臓六腑という時の六臓目が心包です。
そしてこの解明により、大脳皮質の知性に対して皮膚〔肌〕感覚とかガッツ〔guts:gutは腸で漢和辞典では"心"とか"こころ根"〕とか内臓感覚〔腹の虫が収まるとか腹に一物など〕と言われてきた本能的・直感的なもの〔一言でいうなら感性〕が何処に由来するのか、或いは祈りや祭祀の際になぜ人は合掌したり手掌を胸に当てたりするのか、なぜ握手やハグやリストカットが行われるのかなどを概ね明らかにしたものです。
これによって、医療と宗教が本来一如であること、今まで医療と言われてきたのは本来は毉療であることなどの認識に導かれるはずだと考えています。
さて、詳細は興味ある方は前記論文〔2019年〕をネット検索で〔"心包三焦"で出てきます〕、或いは新著「太極円通図から理解する般若心経と理趣経」をお読みいただくとして、簡単に心包と三焦の概略をお話させていただきます。
わかりやすいのはクラゲです。クラゲは脳もないし心臓もないのに環境に適応しつつ生きています。
クラゲの基本形は皮膚に相当する表層細胞層が内部嵌入したもので、それが周囲の環境情報に対応して動き生きているのです。
実は、これと同じことが人間でも起きているのです。受精卵がある程度成長すると、その表層細胞層〔広義の皮膚〕が内部嵌入して腸〔原腸〕ができ、さらにそこから内部嵌入して諸種内臓ができるのですが、すべて広義の皮膚の延長であり皮膚感覚の延長の本能的・直感的な生命としての脳の働きを持っています。
広義の皮膚の一部は内部嵌入して脳脊髄神経を形成しますが、そこから人間の場合は大脳皮質が発達進化して知性が大幅に発達し言語を得ることになります。これが科学の土台となって文明の進歩に寄与するのですが、同時に本能的・直感的能力〔生命〕を包み込んでしまったのです。
知性を得たことを聖書では知恵の木の実を食べたと表現し、本来の本能的・直感的な生命としての能力を包み込んだ、これが原始の包み〔つつみ→つみ→罪〕つまり原罪です。
仏教では本来の生命としての能力を見失った、明らかで無くなったということで無明〔むみょう〕と言って四苦八苦の根源と位置づけたのです。
知恵の木の実を食べて得た知性を基に科学が発達して今日に至るのですが、科学の科とは"前科者"の科〔とが=罪〕であり科学とは罪の学問でもあります。
地上天国つまり弥勒の世を創るためには、もともと生命の木と知恵の木が置かれていたように、感性主体の生命の木と知性主体の知恵の木が一円融合することが大切なのです。
感性は天に由来する真我の属性であり、知性は地に由来する自我の属性です。
一旦離れた両者を再び〔re〕結び付ける〔ligion〕のが本来のreligionつまり宗教であり、両者を仲介〔mediate〕するのがmedi-cineつまり巫〔天と地を仲介し真我と自我を仲介する意味を持つ〕を土台とする本来の毉療なのです。
宗教と毉療は本来一如なのですが、このことを現今の混乱の時代にこそ根気よく皆さんに認識し体感していただけるよう少しずつ努めていきたいと思っています。必ず楽天的で明るく健康的な人生が開けてくるのですから。