NHKBSに「ヒューマニエンス」という興味深い番組があります。ヒューマニエンスとは、ヒューマン〔人体〕とサイエンス〔科学〕の合体語です。
 
一例ですが、2020年11月26日の再放送分「"自由な意志"それは幻想なのか?」を先月ですが観ました。脳の神経細胞の活動は、意思が関与する前に勝手に動き出し、それによって後付けのように生まれるのが意志である、というお話でした。
 
意志とは自分が自覚できる表層の意識で、その前に動き出しているのが自分が自覚できない潜在意識だと考えると分かりやすいかと思います。
 
自分なりの解釈というか受け止め方ですが、これは潜在意識を扱うユングの精神分析やそれと密接に関連する占星術ではある意味あたり前のことです。これが最近のヒューマニエンスで明らかにされつつあるのかなと時代の変化を感じました。
 
今は価値観や世界観・人生観の転換期だと、それこそ精神分析や占星術からは言い得るからです。
 
拙著でも取り上げていますが、中島みゆきさんの「糸」なんかも、「なぜ めぐり逢うのかを 私たちはなにも知らない いつめぐり逢うのかを 私たちは いつも知らない・・逢うべき糸に 出逢えることを 人は仕合わせと呼びます」
と、表層の自分或いは自我は知らないけれど潜在意識の"奥の"真我が知っており、出逢いを仕合せているのです。
 
現在とは英語でpresentですが、これは前もって〔pre〕贈った〔sent〕ものということですが、誰が贈ったかというと真我の自分なのです。このpresentという言葉自体が、表層意識の前に潜在意識が働いていることを表しています。それを昔の人は知っていたのではないでしょうか。
 
生まれる日や場所、親や兄弟姉妹を含めたさまざまな人々との出会いと別れ、さまざまな物事や事柄等との出会いです。
 
昔から、「不思議なご縁で」とか「袖振り合うも他生の縁〔道を行く時、見知らぬ人と袖が触れ合う程度のことも前世からの因縁によるとの意。どんな小さな事、ちょっとした人との交渉も偶然に起こるのではなく、すべて深い宿縁によっておこるのだということ【日本国語大辞典】〕などと言われてきたとおりです。
 
潜在意識深層部の真我が決めて生まれてきたのですが、これが宿命です。これは今世での学習のため、真の幸せのために、真我が過去世を踏まえて陰陽の法則のもとに設定したものと言えます。その設定を土台に、自分を含めた皆んなの幸せのために、今世の務めを果たしていくのが創造的な運命ということになるでしょう。
 
このような人生の仕組みを科学的に理解するきっかけに、ヒューマニエンスの番組は役に立つかも知れないし立って欲しいものです。
 
この方面に関連するもので、これまで読んできた本の幾つかを参考までに下に挙げておきます。
 
これらの本の著者で、この分野での第一人者とも言える渡辺学教授とは不思議なご縁がありました。ある学会での合宿セミナーでのこと。たまたま私の隣に恰幅のよい堂々とした体躯の方が座っておられました。休憩時間に話しかけると、いかにもジェントルマンという感じで対応して下さったのですが、後でその方が学会の幹部でもある渡辺学教授であることが分かりました。ちょうどその頃、教授の著書を読んでいる時だったので驚きでした。
 
ユング関連の話などは一般の医師仲間で話題に上ることはほとんどないし、本当は東洋医学の根底をなす易はもとより占星術などは話題にしようものなら笑われるか馬鹿にされるのがオチです。
でもその学会は心理学や哲学・倫理・宗教・易学・医療・看護・スピリチュアル他、多彩なジャンルで交流できる学会なので、氣楽に意見交換ができるのです。
 
ヒューマニエンスの番組が、この方面の再認識のきっかけになればと思います。戦後教育下の古い科学一辺倒の未熟な医学がもっと進歩するはずです。
 
今回のテーマの参考になる文献は以下のとおりです。
1、渡辺学:ユング心理学と宗教、第三文明社、1994年、2、F.X.チャレット著、渡辺学他訳:ユングとスピリチュアリズム、第三文明社、1997年、3、KONNO KENICHI:ユングは知っていた、徳間書店、1998年、4、アーサー.I.ミラー著、阪本芳久訳:'137'物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯~なぜ137という数なのか?~草思社、2010年、5、ヴォルフガング・パウリ、カール・グスタフ・ユング著、湯浅泰雄、黒木幹夫、渡辺学監修、黒木幹夫、渡辺学他訳:パウリ=ユング往復書簡集1932〜1958 ー集合的無意識、共時性に関する重要文献。ノーベル物理学賞受賞者パウリの見た夢を、心理学の巨人ユングとパウリ自身が分析。二人の書簡は、物理学と心理学の枠を越え、錬金術、超心理、UFO、易にまで及び、科学と心〔魂〕の接点を探るー、ビイング・ネット・プレス、2018年