60代の男性。
顔面全体(特に口唇や口内・眼球の奥等)が
1年ほど前から痛痒(いたがゆ)くてたまらない、
ということで受診。
高血圧症・高尿酸血症で通院中の内科はもとより
、紹介された神経内科・耳鼻科等でも、
原因がわからないから治療の施しようがない
ということで来院されたのです。
顔面の痒み以外に、
顔面の発汗、下肢の冷え・
頻尿(特に夜間尿5回程度)等の症状が見られます。
一応、耳鼻科から対症療法ということで、
てんかんや三叉神経痛等に使用されるお薬を、
あくまで気休めのためとの説明を受けられ処方されたのですが、
案の定、当初は少しは症状が軽減したそうですが、
そのうち効かなくなったそうです。
先ず、お顔を拝見すると
鼻部から上が全体に赤黒く焼けたようになり、
やや、むくみとたるみが見てとれます。
鼻部以下は赤黒さの中にも比較的青白さが重なります。
舌を観ると、前1/3くらいが紅くて且つ舌苔がなく、
日照りが続いた後の地面のような地割れを思わせる
大小の裂け目(裂紋)が数条観られます。
舌中から舌後にかけては赤みは少なく、
黄色から白色の苔も観られます。
これらの所見は、やはり頭熱足寒・上熱下寒を示しています。
顔も舌も、部分即全体の法則からすると全身と相似形なので、
舌前1/3が紅くて地割れがあり、顔面上部が赤黒いということで
頭熱上熱であることが容易にわかるのです。
上熱の分だけ下寒にもなります。
脈にも同じ所見が診られました。
丹田の腎の相火が顔面部に上昇して
顔面部が焼けているわけですが、
そのために顔面が黒みがかって紅潮し、
その熱で痛痒いのだと思われます。
その熱を漏らそうと顔面の発汗が起きることも理解できます。
痛みの弱いのが痒みですが、
相火の慢性的な上昇によって顔面が炎症で酸化しており、
それが主訴である顔面の痛痒として表現されているのです。
頭熱の分だけ足寒になりますが、
部分即全体の法則から腹は全身の縮図なので、
足寒は下腹部の寒を意味していますが、
そのために下肢の冷えや頻尿(尿が近い)が
起きていると考えられます。
さて、相火の上昇による頭熱足寒であることは
容易にわかるのですが
(実は大抵の慢性病が基本的にはそうなのです: 万病相火一元論)、
何故そうなったのかを知ることが
治療と予防のうえで大切になります。
これを考えるうえでポイントになるのが占星術です。
占星術については2012年5月29,30,31日の
三回にわたってブログに書いており、
新著(都合で少し遅れて2月10日発刊)にも詳しく書いています。
この方の場合、何でもよく氣がつかれて
アイデアも次々に湧いてくるのですが、
反面せっかちでイライラカッカして
怒りやすいところがあるようです。
体質的には皮膚や鼻が繊細なところがあります。
また、生まれつき辛味のものを好まれる傾向をお持ちなのですが、
イライラカッカの怒りとの同氣相求で
キムチや辛子明太子等の激辛物をよく摂取されるようです。
この怒りと激辛が相火を燃やし続けた結果、
この方なりの頭熱足寒が
この方なりの症状を来たしていると判断されました。
後に、おかき&お餅も大好きとのことでしたので、
これも控えるようにしていただきました。
病名は身体表現性障害でも良いのですが、
わかりやすく言えば、慢性怒り症候群・激辛バージョンとなります。
病機・病態をご説明し、
生活指導としては怒らないことと激辛を止めることですが、
これがなかなか「わかっちゃいるけど止められない」わけです。
まず、四六時中の「ありがとう」の呪文をお勧めしました。
何時も出来るだけ呪文の中に入ることが大切です。
呪文療法も過去のブログに書いています。
それから、「怒りが何故起きるのか」ですが、
それは周囲が自分の思い通りにならなくて
辛気臭いと感じられるからです。
ブレーキとアクセルがあってこそ
安全で快適な運転ができること、
鶴と亀で目出度いのはお互いに正反対だからこそであって
辛気臭いと感じる周囲がおられることが
本当はありがたいことなんだと言うことをご説明しました。
処方は、封髄丹(黄柏0.06g, 宿砂0.03g, 甘草0.02g, サフラン0.05g)、
枸杞子2gを朝1回、滋陰降火湯(潤して火を降ろす)エキス2.5g~5.0g、
白虎加人参湯エキス3.0~6.0gを適宜組み合わせました。
日常生活では怖い方のようで、
だからこそリーダーとしてご活躍もされたのでしょうが、
とても純粋な方で、素直に生活習慣の改善を実行され、
初診より三ヶ月を迎えますがゆっくりですが快方に向かっておられます。