キャンディは、テリィの腕の中で眠ってしまった。

つい先ほどまで彼を見つめていた瞳は閉じられ、頬にはまだほのかな赤みが残っている。

テリィが髪を撫でると、彼女は心地よさそうに少しだけ顔を寄せたが、もう目を開けることはなかった。

(もう少し、話していたかったな……)

ようやく二人きりになれたこの夜を、眠ってしまうのは惜しい気がした。

けれど、朝からずっと大勢の人に囲まれていたのだ。

今、自分の腕の中で安心しきって眠っているキャンディを見ていると、起こすのはさすがに忍びない。

テリィは頬にかかった髪をそっとよけ、その寝顔を眺めた。

笑っている顔も、怒った顔も、泣いている顔も知っているけれど、彼女にはまだ知らない表情がある。

これからは、そんな彼女をひとつずつ知っていけるのだと思うと、自然と口元が緩んだ。

布団の上に出ていた手を包む。

指輪に触れた指先を、そのまま彼女の指に絡めた。

自分たちで望み、誓ったことなのに、まだどこか信じられない感覚もある。

今日一日、何度も胸に迫ってきた喜びが、静かになった今になって、一層深く沁みてきた。

キャンディが眠ったまま、彼の胸元へ頬を寄せた。

テリィはその身体を抱き直し、額にそっと口づけた。

ふと、あの夜の自分を思った。

彼女を引き止めることも、追いかけることもできず、ただ遠ざかっていく背中を見送る自分。

今、腕の中にある温もりを、あのときは想像することもなかった。

テリィはキャンディの寝顔を見つめ、心の中でそっと思った。


――きみと別れたあの日の俺に、

今日のことを教えてやりたい。