「テリィお兄ちゃーん! 雪だるま作ろうー!」
「まってまってー、ソリの方が先ーっ!」
「キャンディおねえちゃーん! ほら見て、雪のケーキ!」
次から次へと駆け寄ってくる子どもたちに、
テリィは苦笑して手を広げた。
「…参ったな。お兄ちゃん、今日はもう戻らないといけないんだけどな」
「えーっ、やだやだーっ、ちょっとだけーっ!」
その声に、キャンディがくすくすと笑いながら、マフラーを巻き直した。
「少しだけなら、いいんじゃない? ねえ、“テリィお兄ちゃん”?」
「どうやら、抗えないみたいだな」
苦笑いしながらも、テリィはコートの袖をまくり上げる。
雪に埋もれた中庭に、笑い声が響き渡った。
子どもたちは雪玉を投げ、テリィは本気で逃げ回り、
キャンディは自分の背丈より大きな雪だるまに真剣に向き合い、気づけば大人も子どもも同じ雪まみれ。
ときおり、テリィが子どもを抱えて雪の上にぽすんと落とし、
キャンディが「ちょっとぉー!」と笑いながら雪玉を投げつける。
その様子を、ポニー先生とレイン先生は、温かい紅茶を片手に、窓越しに静かに眺ていた
「まあ!キャンディったら、あんなにはしゃいで」
ポニー先生がそっと微笑んだ。
「グランチェスターさんが、キャンディの笑顔を引き出しているのですね」
「ええ…心から笑っている顔を、あんなに見たのは初めてかもしれません。
笑っていても、どこか寂しそうだったあの子が…今日は本当に幸せそう」
ガラス窓の向こう、ソリに乗った小さな男の子を引くテリィの姿が見えた。
それを支えながら歩くキャンディの横顔は、まるで優しい陽だまりのようだった。
「教会の修繕、夏までにやらないといけませんね」
ふいにレイン先生が思い出したように言う。
「そうですね。屋根の雨漏りは…雪だからとまだ先延ばししてましたけど、応急処置も限界ですわ」
「ステンドグラスの上の枠も立て付けが悪くて。きれいに光が入らない日があります」
「それなら挙式にあわせて、直しましょう。でもその前に、私たちでできる贈り物も考えましょう」
ポニー先生が紅茶のカップを置きながら、レイン先生を見た。
二人は小さくうなずき合い、目を細めた。
ふと外を見ると、テリィが雪に膝をつき、小さな女の子の手をとって雪玉を握らせていた。
その横でキャンディが何かを叫び、笑っている。
ふたりの間に流れるものが、どんな苦しみを越えてきたかを知っているからこそ…
ふたりの今の笑顔に、心からの安堵と祈りを込めて、ポニー先生とレイン先生は、窓辺でそっと手を重ねた。
「…あの子の笑顔が、いつまでも続きますように」
「ええ、ずっと。私たちの願いそのものですから」
-7月7日、ポニーの家の教会で、挙式が執り行われることとなった。