初日の舞台。
カーテンコールを終え、客席からの拍手が遠ざかっていく。
テリュース・グレアムは舞台袖で一人、胸に手を当てて深く息を吐いた。
まるで、きみに呼ばれた気がしたんだ。
真っ直ぐに俺の名を呼ぶ、あの声が――
「テリィ」
……思い出にしかないはずの声が、今も耳奥で鳴っている。
どれほど時が流れても、離れても、
忘れようとした日々の全てを、たった一言で塗り替えてしまう。
ふと、舞台の中央に視線を移す。
さっきまで“王子”として生きていたその場所に、もう誰もいないのに。
きみがそこにいるような錯覚に、胸が軋む。
不器用だった。
大切な人を幸せにする術も、守る強さも持っていなかったあの頃。
けれど、それでも。
君と歩いた時間は、優しく光っていた。
俺の人生で、何よりも。
あの別れで、すべてを終わらせないために誓う。
きみの声は、俺を強くしてくれる、きみが胸にいる限り、どんな明日も越えてみせる。
「届かなくてもいいんだ」
テリィは、誰もいない舞台へと一歩足を踏み出した。
照明が落ちた静寂の中で、芝居でもリハーサルでもない、“素の声”を吐き出す。
「会いたい。……きみに、会いたいよ」
胸が痛いほど恋しく、心が叫ぶ。
この想いは変わらない。
一生が終わるその時まで。
きみが俺の人生にいてくれたこと、たった一度でも愛してくれたこと――
俺は、それだけで生きていける。
そうして今日も、俺は舞台に立つ。
きみに、愛を伝えるために。
きみの声に応えるために。
その笑顔が、どこかで咲いている限り……
「I Love You……」