onLineの古本屋です。1950-60年頃の懐かしい映画パンフレットを出品に合わせて紹介しています。
今回も、前回に続き”大映70㎜超大作映画”です。
1961年公開『釈迦』(有楽座)
ご紹介する順が、前後してしまいましたが
前回紹介した『秦・始皇帝』の前年に公開された
日本初の70㎜映画です。
表紙は、この映画の一番の見所”大神殿崩壊”のイメージです。
なかなか迫力があります。どなたの手によるものでしょうか。
サインはありますが、判然としません。
では、初めての70㎜映画の題材に、
なぜこの「釈迦」を選んだのか?
少し長くなりますが、大映・永田社長の言葉から
科学文化が絢爛と花ひらく現代は、皮肉にも不安の世紀であり混沌の時代でもある。人類の叡智は長足の進歩を遂げた反面、却って根元の最も大切なもの、即ち人類の幸福に欠くべからざる愛の心を失い、平和の精神を忘却した感がある。今こそ我々は、失いしものを求め、忘れしもを想い起こすべきべ(ママ)はないか?
仏陀の国は仏陀を!
キリストの国はキリストを!
かくの如き意図に基き、東洋民族の生んだ最高不滅の聖者釈迦の慈悲寛容の大精神を再現し、悩み多き時代の人々に敢えて此の一篇を捧ぐ。
大言壮語「永田ラッパ」の面目躍如というところですね。
制作意図はともかく、撮影規模に関しては、
当時としては、破格であったことは確かなようです。
3つのポイントが載っています。
「7千万もかかった大オープン」
京都府北部の福知山市に作った大神殿のオープンセットです。
高さ28メートルの大魔像や5棟の神殿、長さ60メートルの橋を含んだ大オープンセットです。因みに大魔像は奈良の大仏より13メートルも高いそうです。
地震で崩壊するシーンの撮影は、さぞかし緊張したことでしょう。なんせ、CGなんてものがまだない時代ですから。
まったく素人の計算ですが、撮影当時の1960年と2020年の消費者物価指数を比べると、約5.6倍。7千万は、現在の4億弱になります。邦画の一つのオープンセットにはしては、破格ではないでしょうか。
「日本映画の常識のすべてを打破った撮影とスケール」
パンフレットから数字だけ書き出します。
総制作費7億円(現在の価格にして40億弱=素人の計算です)
撮影日数154日
セット数115杯(ステージ内、オープン、ロケ)
総衣装点数2万5千点
装身具数5万点
エキストラ数延55000人
動物 象、鹿、牛、馬、羊、キジ、白鳩、オウム、インコ、孔雀等
「日本映画史上最高の華麗なセット」
シャダ太子とヤシヨダラー姫の結婚生活を送るカペラ王宮のセットは、荘厳なる美しさと豊かな色彩に富んだ絢爛たるものだった。
太子夫妻の食堂の間に敷かれるペルシャ絨壇は一枚が時価1000万円もするという国宝級のものが12枚。ある古美術収集家の好意から特に貸し出してもらったものだそうです。
城内の花園のセットでは、咲く花は大半がインド植物の造花で、1本1本手作業によって植えられたもので、数にして1万本。
ステージの中央には彫刻のほどこされた泉水がつくられ周囲には、孔雀、キジ、白鳩、インコ等の鳥が飛びかうという瞠目に価する美しさ。
シャダ太子(後の釈迦)誕生のシーンが予告編として
youtubeにアップされていました。
華麗なるセットの一端を垣間見ることができます。
キャストは、もちろん超大作ならではのオールスター
自社のスターばかりでなく、歌舞伎界、新劇界からも幅広く招かれています。
シャダ太子(後の釈迦)/本郷功次郎
ヤショダラー妃/チェリスト・ソリス
フィリピン人の女優ですが、
プロフィール等の紹介は載っていませんでした。
市川雷蔵、勝新太郎、中村鴈治郎、京マチ子、中村玉緒、小林勝彦、川崎敬三、杉村春子、川口浩、山本富士子、山田五十鈴、叶順子、滝沢修・・・・・
調べてみると(Wikipediaや他のネット情報)、大映の70㎜は、スーパーテクニラマ方式といって、35㎜フイルムで撮影し、上映用に70㎜に焼き付けたとのこと。なんちゃって70㎜じゃんと思うかもしれませんが、
ただし、ビスタビジョンは35mmスタンダードの2コマ分を1コマに用いる高品質のフォーマットであるため、スーパー・テクニラマも他の70mmフォーマット同様大判ネガならではの高画質を誇る方式であることに違いはない。(Wikipedia)
とのことです。
邦画の70㎜映画は、全部で3本ありました。
1 釈迦 1961
2 秦・始皇帝(前回紹介)1962
3 太平洋戦争と姫ゆり部隊(大蔵映画)1962
3本目の「太平洋戦争と姫ゆり部隊」は、
永田社長と大蔵映画の大蔵貢社長が個人的に懇意であったことから大映がカメラを貸し出したそうです。(Wikipediaなど)
この3本をもって、膨大な製作費かかる70㎜映画は、
映画産業衰退とともに消えていきました。
ただし、『釈迦』『秦・始皇帝』で培った特撮技術は、
後の『大魔神』『ガメラ』に受け継がれていったのです。
製作 永田雅一
監督 三隅研次
脚本 八尋不二
撮影 今井ひろし
音楽 伊福部昭
1961年公開
詳しくは→aiicinemas
広告を見るのも楽しみのひとつ、
時代の雰囲気を色濃く反映しています。
レトロ感がたまりません、
日立テレビ「オフェリア」です。
「低・中・高音の3つの専用スピーカーによるハイファイ設計」
「超高感度真空管」
価格は、6,3000円
現在の価格 消費者物価指数 約5.6倍にすると35,2800円
現在75インチ4Kテレビより少し高いくらいですかね。
まさかと思って調べてみたら、
足はないけど、ジャンクとして
ヤフーオークションに出品されていました。
型番が同じなので、白黒というのは、間違いだと思います。
そして、落札価格 15,495円
好きな人はいるんですね。