「虚無への渇望」 | Recover my heart, change the world.

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日々の思想、小説、詩、エッセイ、悟り、妄想、体験、揺れる気持ち、音楽など、私の表現です。


椅子に座っている。

普段と何ら変わりない格好で。

狭い密室に一人、座っている。

部屋の中は全く薄暗く、刑務所の牢屋の様相である。

僅かな窓から日差しがこぼれているのだが、今日は天候が悪いらしく、光があまり入らない。

私はいつからここに座っていたのか、思い出す作業を行ってみるが、

どうにも、記憶が曖昧になっているようで、寝起きのような感覚である。

夢の中、といった方がニュアンス的に適合するのかもしれない。

私はもしかしたら、物心ついた時からずっと、この密室で座っていたのかもしれないと思った。

それは、私がこの密室から脱出できないという物理的な理由でもって、

理由を自己正当化し、本当は密室から外の世界に出ることが怖くて仕方がないのを、

誤魔化しているだけなのかもしれなかった。

私は、密室から出る努力をしたことがあったのだろうか。

椅子に座っている。

私は腰を上げた。自然に立つことが出来る。

狭い密室の中、私はこの部屋からどうすれば出られるのか。

辺りは薄暗いので、何が置いて在るのかぼやけてよく見えないが、

前方には、インターホンのような装置が壁に付けてあるのを確認することが出来た。

突然、インターホンのスピーカから、ワルツのリズムが流れてきた。

ワルツのリズムに乗って、ピアノとバイオリンのアンサンブルが協奏する。

やがて、こんな歌が流れてきた。



あやまることを

よしなさいな

拾ったものは食べてはいけません

見下すことを

よしなさいな

明日は我が身の法則に乗っ取って

雁字搦めは多いけれど

貴方が思っているよりも

この世界はおいしいの

お便りお持ちしているペリカン

お菓子の国へようこそ




なんともメルヘンチックな曲である。

私はインターホンに向けて、語り出した。



その人の気持ちは

その人の境遇にならないと理解できない

だから、その人の気持ちは一生理解できない

それでも、理解しようと頑張ったり、寄り添ったりすることは出来る。

それぐらいの心理的スペースを与えてくださいな。

さもなければ、河童はずっと川の中でしか生きられないのです。

魚は、陸に上がってこれたので、進化して人間になったのですから。



インターホンが突然、鳴り響いた。

私は「はい」と応えると、

「宅急便です」



私への贈り物って、一体何だろう。

そしたら、次の瞬間、私は桜の散る公園のベンチに座っていた。

私への宅急便は、

「虚無への渇望」を癒してくれた瞬間だった。