トランプ・ショックが世界経済を揺るがしている。相互関税だけは(一部の国を除き)90日間の停止になったとはいえまだ予断を許さない。とりわけ米中は貿易戦争の様相である。株価も乱高下を繰り返すばかりで先が見えない。日本の場合、順調な経済と潤沢な金融資産残高を理由に「心配無用」とみる向きはあるものの、これとてどうなることやら。確かに、膨大な対外債務から財政危機に直面する国々とは異なり、日本の場合は国内債務だ。しかし、国の借金1317兆円(2024年末現在)も大半は、我々の金融資産(国債や預貯金)を人質にしたものだけに恐ろしい。
この金融資産残高だが昨年末には2230兆に達した。2016年には1071兆だったことから、この10年で倍になったことになる。だがこれも株価上昇によるところが大きい。言わば、相場に左右されるだけの浮游資産であり、暴落なら日本国そのものが未曾有の借金地獄に陥ってしまうのだ。
それだけではない。政府は今、年金基金といった公的資金もその多くを株式で運用する。
現在、我が国の公的年金制度の被保険者は約6,700万人、受給者は約4,000万人となっており、徴収する保険料は年間40兆円を超え、年間支給額は53兆円になるとか。運用内訳は、外国株式が19兆円、国内株式が19兆円、外国債券で7兆円の儲け、国内債券は1兆円の損失・・と続く。運用資産額は約246兆円(2024年3月末現在)に達し「世界最大級の年金基金」でもある。
コロナ騒動の株価暴落でも、その損失額は17兆円に及んだが、トランプショックではどうなるだろう。世界を震撼させたといった意味では同じとはいえ日本の場合は世界でも群を抜く高齢化社会だけに厄介である。ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうとする負のスパイラルでも陥るなら、もうどうにもなるまい。
ある日、突然に財政が破綻したとしよう。ハイパーインフレによる混乱から給与や年金は支給されない。健康保険に介護保険も使えない。やっと探し出したタンス預金も天井知らずの物価高騰で紙切れにしかならない。生きる術がない。住宅ローンの担保で家屋は没収。住む場所は失い、ホームレス状態になってゆく。
誰もが思っていた。この国は本当に素晴らしい。ホームレスだって食っていけるんだからと・・。だが現実は厳しいもの。食べ物がない。今や期限切れ食品の回収は指定業者に一任される。スーパーマーケットもコンビニもごみ箱を置かない。だからホームレスだって働かなくては食っていけない。
街を歩いてポイ捨て缶が少ないのはお気付きだろうか。日本人のモラルが向上しただけではない。深夜から早朝にかけて拾い集める者がいるのだ。資源ゴミをくすねる人種とは違う。毎日15~16時間は働く。1日分を纏めて売却する。それでも収入は百円そこそこにしかならない。果たして、彼らを見下す者に、同じことが出来るだろうか。でも心配はいらない。なにせ、モラトリアムの下では、こうしたシステムさえ遮断されて機能しないのだから。
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❋【現在、我が国の公的年金受給者数は4010万人である。1997年は2627万人だったことから、この四半世紀だけで約5割も増えたことになる。この数年、支給開始年齢が延びたこともあり、やや頭打ちだが、いずれまた急増するだろう。減る一方の人口に増え続ける受給者数の乖離。老齢年金だけでも総人口の半数に迫る。打開策としては(1)原資はギャンブル(投資)で稼ぐ(2)死ぬまで働かせる、、これが今置かれた状況とはいえ、これでは国家としての体をなさない。やはり底辺を拡大しなければ何も解決しないということだ】
(貧困率の推移)
また『Japan as Number One』と称えられた『豊かな国ニッポン』も昔話になってしまった。今や発展途上国からやって来る観光客にすら「日本は物価が安い」と驚かれる有り様である。日本人の相対的貧困率は1985年に10%を越えた。その後も上昇の一途にある。子供は16%にも達した。この数年はやや降下気味とはいえ、これからは分からない。ことと次第では大変なことになるのではなかろうか。1929年の大恐慌では多くの餓死者を生んだ。災害と異なり支援物資はない。誰も助けてくれない。ある意味、豊かな生活に馴染んでしまった今の方が遥かに深刻なのだ。
奈落の底には昨日までの景色はない。富や名声に群がった者ぼど漆黒の朝を迎えることになる。そこで、人は初めて『貧しくとも生かされている』有り難さに気付くのかも知れない。
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《おまけ》
(麒麟児の憂鬱)
「お前も大きくなったらオラみでえなリッチでイケメンになるんだど」
「オイラ貧しくたって、このままがええだ」
「・・・・🥴」