【今年も宜しくお願い致します】
社会学者、エズラ・ヴォーゲルの著書、ジャパン・アズ・ナンバーワン(1979年)から46年。日本も豊かになった、と言われて久しい。でもそうだろうか。四半世紀を超える景気低迷で個人所得は激減。一人あたりのGDP(2024年換算)でも韓国にさえ抜かれてしまった。しかも、年収180万円がやっとの非正規就労が全体の約40%を占め、その影響は子供達に及んでいる。今や日本は、OECD加盟国の中で、1,2位を争う貧困大国でもあるのだ。
(子供の貧困)
クリスマス商戦の売れ筋ランキングを番付にすると、3万円を超えるゲーム機が東の横綱、100Yenショップの品々が西の大関になるという。翌日、サンタクロースのプレゼントを見せ合って、任天堂とダイソーなら、子供達はどう思うだろう。仲良くなるか、苛められるか、その先は言うまでもない。
では、お年玉ならどうだろうか。かつて話題になった鳩山元総理の(子供手当て)10億円や、巨人軍・原元監督のお坊っちゃまへの小遣い800万円は別格にせよ、その差は開くばかりだ。しかも株高を反映して好景気を謳っていた近年(2015~)でさえ平均支出額は減少している。
(お年玉、平均支出額推移)
貰う側なら尚更だ。下表の通り、小学生未満は1,000円以下、小学校低学年は1,001~3,000円、小学校高学年は3,001~5,000円、中学生以上は5,001~10,000円がボリュームゾーンとなっているが、注目すべきは最少ラインである。
(年代別、子供のお年玉額)
中学年以上(高校と大学含む)で、1000円未満が6%、1001円から3000円なら約15%だ。これは子供の貧困率(15.7%)とも一致する。当然のことゼロもある。教育方針上、一切出さない家庭もあるだろう。しかし、年々目減りしていることからも、こうした貧困社会を象徴しているのではなかろうか。
(生涯未婚率の推移)
今の若者は車も持てない、結婚さえ出来ない、本当に情けない、と嘆く前に、一体誰がこんな世の中にしてしまったのか。リーマンショックでは倒産が相次ぎ、失業で溢れたが、その後の受け皿が非正規(派遣)だけになっていた悲しき現実。彼(女)らは今、30から40、そして50代に差し掛かろうとしている。手取り月収は約10万円。車だけではない。これでどうして結婚など出来ようか。
しかも、これとて序章に過ぎない。少子高齢化で疲弊する社会にあっては、まだまだ続きそうな気配にある。貧困は大人だけの問題ではない。その影響を受けるのは子供達だって同じだ。いや、アルバイトなしには進学することも儘ならない現実からして、それ以上かも知れない。たかがお年玉も、されどお年玉。子供の貧困が日本の未来図でもあるから恐ろしい。
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【年始雑景】
〈開業から一年を過ぎたLRT〉
宇都宮にLRTが導入されて1年と4カ月。路面電車は『ビルの谷間を走るもの』といった概念に反して広大な田畑の中をひた走る様は別世界のようでもある。宇都宮駅から芳賀工業団地を結ぶだけあって通勤客が途絶えた正月なら尚の事だ。
ほぼガラガラ近い元日のLRT。車内だけではない。どこのプラットホームにも人っ子1人いない。時期が時期だけに当然とはいえ、この先、工業団地が不況の嵐にでも巻き込まれたらどうなるのだろうか。今のところは順調な滑り出しらしいが、沿線に住人はいない。いても限られた地域でしかないのだ。
バブル崩壊やリーマンショックでは家電業界に大きな打撃を与えた。当地でも企業城下町として栄えた矢板市を直撃。S社の主力工場が撤退したことで、その周辺はゴーストタウンの様相である。もし、EV戦争に敗れて自動車産業まで撤退するようになるなら、それこそ無人の荒野を走るだけの路面電車になってしまう。正夢にならないことを願うばかりだ。