覚えているだろうか。数年前、テレビでは、「夢は正社員になること」といった求人情報誌のCMが頻繁に流れていた。一昔前なら考えられないことだ。勤労者は正社員が当たり前で、非正規は、学生のアルバイトか、空き時間に対応可能な主婦のパートタイマーといった分野に限られていた。報道によると、こうした状況も少しづつ改善されているとのことだが、果たして本当だろうか。
〈男女/年代別年収の中央値〉
厚労省の賃金構造基本統計調査によると日本人の平均年収は458万円だった。あくまで“平均値”であり“中央値”は396万円であることに注目して頂きたい。平均値と中央値の差は62万円。女性に限れば平均は378万円、中央値は270万円と、その差は108万円である。
総所得を勤労者数で割ったものが平均値であるのは言うまでもない。だが、この場合、僅かな高額所得者が全体を引き上げてしまうことも否定できない。世界最貧国のジンバブエであれ、ビル・ゲイツが一人いれば、日本(の平均値)を上回ってしまうのと同じ理屈だ。でも中央値は違う。最多層を基準にするだけに、半数に迫る非正規によって貧富の差が開くばかりの日本には、こちらの方が適切ではなかろうか。
〈中央値でみた平均賃金/正規&非正規〉
すると、日本人の平均年収は、458万円ではない。あくまで『396万円』なのである。しかも、非正規組は、これより遥かに低い。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、コロナ禍による影響もあってか、年間を通じて勤務してさえ(非正規雇用の)平均年収は175万円(男性226万円、女性152万円)と正規組の半分にも満たない水準だった。正規社員ですら苦しいのに非正規就労の身分でどうして生活出来ようか。『夢は正社員』とはいえ、それでも食えないのが、この国の実情のようだ。
外国人の場合はさらに厳しい。日本人並みの賃金で誘っておきながら実際には10万円にもならないケースが後を絶たない。これでは本国の平均賃金より低い。入国に要した数百万円とされる保証金の返済もせねばならない。悪徳業者からは借金の肩代わりに犯罪まで強要される悲しき日々。
〈OECD加盟国に於ける賃金の伸び率〉
国は、農業や介護、建設といった人手不足著しい5業態を主体に、2025年には50万人規模の外国人受け入れを目論む。だが人手不足は日本だけではない。アジア各国でも労働力の壮絶な奪い合いが始まっている。しかも、我が国の相対的地位は、このところの円安もあって下降の一途にある。これでどうして日本に来ようか。
❋(今や日本の賃金水準はアジアの中でさえ中位でしかない。出稼ぎ先としてしての魅力さえ失せてしまっている。すると・・)
非正規組だけではない。正社員だって同じだ。大幅な賃上げや過去最多とされる賞与も円安とそれに伴う物価高に減殺され正社員の実質賃金すら下がるばかり。これでは生活が出来ない。食うことさえ出来ない、じゃあどうしよう。そうだ○○へ行こう。こうして、「夢は正社員になること」は昔話、これからは「夢は海を渡って叶えるもの」へと変わってゆく。失われた三十年というが、このまま永遠に失われてしまうのだろか。
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《余談》
【永田町のボスは誰に】
自民党の総裁選びが加熱してきた。でも、これまでにない立候補者乱立にあって、その選択基準はどこにあるのだろうか。

国民目線では『見た目と血統』を重んじ、いわば『カッコいい』や『家系』だけで支持する傾向にある。
議員目線では『誰が総理になれば自分自身の選挙戦が有利になるのか』だけを考えて行動に移す。
毎度のことながら、こうして誕生した宰相に、どこまで期待できるのやら。結果、○歴詐称や○性問題を取り上げる週刊誌の餌食になって、また短命に終えるのではなかろうか。そう国民のことなど眼中にはないのだ。猿山のボスだって群れを守ろうとして一生懸命なのに。
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「えっ、それじゃ『お猿さん』に失礼だって!」
「・・・・😩」