【これって、信じる、信じない】


 少し古い話で恐縮ではあるが、日本経済新聞のコラム(2016年2月27日=春秋)には、このようなことが書かれていた。 


  「夏なのに、コートを着た女性を乗せ目的地に着いたら、後ろ座席には誰もいなかった」

 これは、東北学院大学の学生が震災後に一年をかけ、宮城県石巻市のタクシー運転手200人に聞き取りしてまとめた論文の一部だが、こうした幽霊体験者は7人もいたという。 


(以上、原文通り)

 講談や都市伝説の定番でもある青山墓地までの出来事を題材にした怪談話ではない。実話なのだ。しかも7人が同じ体験をしている。悲惨な震災から間がないとはいえ幻覚や妄想で片付けられるだろうか。


【東京がゴーストタウンになる】



 日本の社会が未曾有の人口減少に入った。5年に1度の国勢調査をみても、2020年10月1日現在、我が国の総人口は1億2622万7千人と、2015年より約86万8千人少ない。この10年では181万5千人の減少である。しかも、2025年の統計は、コロナ禍の期間と重なる。かつてない低出生数に近年最悪とされる死亡者数が合算されるのだ。調査方法が異なるので一概に比較出来ないものの、毎年公表される住民基本台帳をみる限り、マイナス300万人であっても不思議ではない。これが如何に恐ろしいことか。

 突発的な事故や災害ならいずれ落ち着くにせよ出生率の低下だけはそうもいかない。長期に渡れば、もう収拾が付かない。このままだと日本民族は、従来の予測を大幅に短縮して、21世紀の初頭にも絶滅の危機に直面するかも知れない。

 《理由としては》


 (1)目標値の低さにある。政府は合計特殊出生率1.80で人口の1億人維持を掲げるが、これとて縮小均衡以外の何ものでもない。瞬く間に8千万人を割り込んでしまう。それも通過点であり延々と減り続けることを意味する。なのに、この数年は、1.0さえ下回りそうな水準にまで落ち込んでいるから始末が悪い。 1.0は一世代毎に半減する数値でもある。100年もすれば1/5近くにまで激減してしまうのだ。


 (注)人口を維持する上での置換水準は2.07とされる。これは世代構成が健全であって初めて成り立つ。人口ピラミッドが逆三角形である以上、例え2.07に回復したにせよ、適正な形状に戻るまでのタイムラグは如何ともし難い。


 (2)は国力の衰退にある。人は豊かさを求める。わざわざ貧しい国へ移り住んだりはしない。技能実習制度などというまやかしは通用しなくなるのだ。ならば移民解禁(の議論)もどこへやら。逆に、現状に悲観した日本人の多くが、この国から脱出してしまうのではなかろうか。これは、この数年の人口動態統計からも明白であり、もう悲惨でしかない。 


 (3)は老化で、これは言うまでもない。間もなく高齢者が過半数を占めるといった歴史的にも類を見ない歪な社会を迎える。若者不在が追い討ちをかける。「少子高齢化は心配ない」や「人口減少の下でも経済は成長する」と御託を並べる政治家や評論家も、10年、20年後にはいないから無責任なことがいえるのだろう。今や『座して○を待つ』ような状況にあるのに。 


  こうした中、各自治体は競って東京からの移住に活路を求める。だが東京だって例外ではない。日本の首都にも深刻な危機が忍び寄っていることを忘れてはならない。確かに東京への一極集中は突出している。この5年間でも約33万人の増加である。だが決して多いのではない。全国的な減少傾向の中で目立つだけなのだ。


〈東京都の人口推移/昭和30年以降〉

(東京都HPより)

 東京も昭和30年代には年平均で30万人以上増加していた。年率では5%に達した。それが今、年間の増加数は6万人程度であり、増加率も0.5%に満たない。健全な都市の発展に必要な人口増加率は1%とされる。ならば現在の東京のどこが一極集中なのだろうか。正確には『東京一極“停滞”』であるのに。


  〈 東京都の人口推移/令和以降〉
(東京都HPより)

 この先、東京も人口減少の渦に巻き込まれるのは不可避な状況にある。それも遠い話ではない。5年、いや3年後であっても不思議ではない。これに日本人の海外移住が続出したならどうなることやら。東京も地方も共倒れしてしまうだろう。少子化、消えた若者・・。見渡せば、そこにいるのは脱出から取り残された高齢者ばかり。椅子取りゲーム(東京都民の奪い合い)をやっている場合ではないと思うが。


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【軍艦島にみる東京の明日】

(画像はネットから借用)


 《《そして廃墟になった東京では》》


 「冬なのに薄着で凍える年寄りを乗せ目的地に着いたら、後ろ座席には誰もいなかった」

 こうした都市伝説がまことしやかに語り継がれるのだろうか。