【超高齢化社会の果てに】
20××年のある日のこと。この日は高齢者の競売日。各地から身寄りのない高齢者が数多く集められていた。政府は、不足する介護士や老人福祉施設にあって、入所希望者をランク付けすることで処遇を決める『高齢者分別基本法』を制定したのだ。
我が国は世界でも突出した老人耐(大)国である。全人口の過半数が75歳を超えてしまった。それも独り身の貧困層ばかりだ。これでは福祉財源などいくらあっても足りない。年金制度は崩壊し、介護保険も機能不全では、もう手の付けようがない。足腰のおぼつかない年寄りが次々と壇上に呼ばれた。
「イの1番、総資産100億円、ランク特A」
「10億、30億、50億・・・」
「はい、ホクホクの里さん、70億円で落札」
「ハの74番、同じく5億円、ランクB」
「・・シメシメヶ丘さん、3億円で落札」
「への935番、同じく1千万円、ランクC」
「・・入札なし、ホットケの宅にてそのまま自活」
といった具合に。
問題は身寄りなし資産なしの多数派である。これでは予算不足から、介護はおろか、荼毘に伏すことさえ出来ない。そこで政府は国営の姥捨山でもある「冥土ヶ丘公苑」を造った。自己責任での後始末を目論んだのだ。
「これ以外の者、資産ゼロ、ランクD」
「全員、冥土ヶ丘公苑で余生を・・」
これはフィクションではあるが、あながち笑い話では済まないところが恐ろしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
加速度的な人口減少にあって高齢者(の比率)だけが増え続ける我が国の歪んだ社会構造。この一年、23万人も減らした生産年齢に対して、70歳以上は20万人の増加。全人口に占める割合も23.1%に達した。これはほぼ4人に一人が70歳以上であることを意味する。人類史上、これほど高齢化した民族があっただろうか。
65歳以上とて然り。こちらも(2023年9月15日現在)3623万人で総人口に占める割合は前年から0.1p上昇の29・1%と過去最多を更新。80歳以上に至っては前年より27万人多い1259万人で、ついに『10人に1人」の大台を超えてしまった。総人口は少子化に加えコロナの影響もあって約80万人減の1億2434万人。高齢者(65歳以上)の男女別内訳は、女性が2051万人、男性は1572万人である。
〈参考/100歳以上の高齢者数〉

(参考、先進各国の高齢化率)
(今や日本は世界でも突出した老人大国だ)
こうした中、移民容認の動きも活発になりつつある。だがそれも『遅きに失した』感は否めない。トップバッターとして世界経済を牽引していたバブル当時とは何もかもが違う。今や我が国の所得水準は低開発国並でしかない。しかも、人材の供給源であったASEAN諸国の成長著しく、これまでのようにはいかない。記事(下記参照)の如くこれらの国々ですら人手不足から労働力の奪い合いが始まっているのだ。どうして本国にも劣る未来のない国に来ようか。日本人の海外流出(移住)の方が大きな社会問題であるのに。
介護士は足りない。外国人就労も足りない、いても余程の待遇でない限り就いてはくれない。中東やシンガポールのみならず、韓国や中国でさえ日本以上の報酬と厚遇を受けられるのだ。財源不足から、一段と引き上げられる年金支給年齢と、日々深刻さを増す医療や介護保険制度の残酷な末路。高齢者を取り巻く環境の悪化はこうした分野だけではない。相次ぐ鉄道やバス路線の廃止で買い物は出来ない。病院にも行けない。後継者不在の寺院や神社では法用すら行えない。
墓じまいが話題になるが、それなら誰が何処に埋葬するのか。連れ合いや、手助けになる親族が少しでも残っている間はまだいい。身寄りの失せた独り身には手立てすらないのだ。一部の業者が終末サービスに参入するも、どこまで信頼に値するやら。契約書だけで、その後の状況は知る由もない。大金をせしめて、「はい、さようなら」が蔓延するのではなかろうか。
いつも同じことを書くが、その元凶が少子化である以上、底辺を拡大しなければ何も解決しない。ロボットは見守りや看取りは可能でも意を酌んだ介護までは出来ない。それも桁違いの高額では意味をなさない。有識者の御託「少子高齢化はAIが解決する」が虚しく聞こえる。高齢化社会は数年後にもビークを迎える。AI(ロボット)も今現在実用化していなければとても間に合わないのだ。やはり高齢者は序列され淘汰されゆく運命なのだろか。