昨年の暮れ、トイレのウォシュレットが壊れてしまった。水洗そのものに支障はないとはいえ、かといって長年の習慣だけに紙の生活には戻りたくない。止むを得ず、ホームセンターに出向いて交換を依頼することにした。するとどうだ。製品はあるが作業員がいないんだとか。取り付けまでに一週間は要するという。仕方なく契約だけは結んだものの未だに連絡がない。問い合わせをするや「業者の都合上、もう暫くお待ち下さい」の一点張りである。我が家の場合、二階のトイレで間に合うからまだしも、あれから一ヶ月にもなる。緊急ならどうなるのだろう。悪徳業者であれ、それを承知で大枚をはたくことになるのだろうか。それとも・・。
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▶▶2025年問題から見える、その後・・
【人手不足で国家が機能不全に】
2020年代も半ばに差し掛かるにつれ日本人は人類史上類を見ない社会に身を置くことになる。少子高齢化に伴う歪みのことだ。今や、団塊世代が次々と後期高齢者に差し掛かる中にあって、ことに働き手の枯渇は目を覆うばかりにある。それでも僅かな若年層が圧倒的多数の高齢者を支えねばならないのだ。それだけではない。介護業界は言うに及ばず、ほぼ全産業で深刻な人手不足にある。これでこの先はどうなってしまうのだろう。危機的状況はこの数年でピークを迎えるというのに。
このように全業種で足りない。いずれ、医療や介護、サービス業界は機能停止に陥るだろう。農林水産業は深刻な後継者不足から存続の危機にある。建設や土木は工事さえ儘ならない。ビルや住居のメンテナンスは放置される。補修は自己責任で解決せねばならない。製造業は海外に活路を求めれば済むとはいえ内需関連だけはそうもいかない。ただ“人手不足倒産”を待つばかりにあるのだ。
〈大工不足から改修の困難を伝える記事〉
*(住宅問題は空き家だけではない。大工も足りない。地方ほど足りない。2020年に30万人を割った大工人口は、この先も加速度的に減り続け、2040年には10万人未満にまで落ち込むことが確実な状況にある。大工だけではない。電気・ガス・水道と、こうした分野でも同じである以上、何から何まで自らが行うしかないのだ。この先、災害にでも遭えば、その多くが放置されてしまうのではなかろうか)
僧侶や神主も足りない。葬祭業も足りない。高齢化社会は格好の稼ぎ時とはいえ従業員の確保が出来ないなら事業の存続すら難しい。その前に総人口の4割にも及ぶ単身者には身内さえいない。葬儀どころではない。自治体の責任にも限度がある。自らで身を処す姥捨山が全国の至る所に造られることだって否定出来まい。
この表にはないものの、さらに深刻な分野を忘れてはならない。警察や消防、そして自衛隊といった公職のことだ。総人口の急減も高齢者だけは増え続ける。事件や事故のみならず急患だって増加するだろう。国際的な緊張も高まるばかり。片や、署員に隊員と不足著しく、市民の身の安全さえ守れなくなる日がやってくる。外国人には依存出来ない職種だけに尚のことだ。
欧米各国は移民容認派が多数を占める。失業やテロの恐怖はあるものの移民なくして今日の繁栄はなかった。移民を除く人口増加率たるや近年の日本よりも遥かに低い。大量の流入が労働力として国家の基盤を支えてきたのだ。もし純血主義を貫いていたならどうなっていたやら。
【移民容認国の受け入れ総数は次の通りである】
《2020年現在》
(01)米国、50.632.836人
(02)ドイツ、15.762.457人
(03)サウジ、13.454.832人
(04)ロシア、11.636.911人
(05)イギリス、9.359.587人
(06)アラブ首長、8.716.332人
(07)フランス、8.524.876人
(08)カナダ、8.049.323人
(09)オースリア、7.685.860人
(10)スペイン、6.842.202人
(11)イタリア、6.386.998人
(12)トルコ、6.052.652人
《以下省略》
先進各国は全人口の2割から3割を移民が占める。中東の一部は5割を超える。旧ソ連からが多いロシアを除けば自国の成長を担う戦力として不可欠な存在になっている。前述の如く、これらなくして国家は機能しない。移民及び、この子孫がいないとするなら、欧米先進国であれ人口減少と労働力不足による衰退から国家消滅の危機に直面していたのだ。
ならば、『日本も移民容認で全て解決』かと思いきや、そうもいかないところが悍ましい。人は豊かさを求める。これまで、イラン(中近東)、南米(日系人除く)、中国、東南アジア、アフリカと、合法、不法を含めて絶え間なく就労目的の流入はあったものの、今では置かれた立場がまるで違う。
中東産油国の賃金は日本よりも遥かに高い。シンガポールや中国の都市部でも同じだ。韓国や台湾だって然り。そして高度成長に沸くACEAN諸国が後に続く。現在、日本在留の主流は約20万人とされるネパールからだという。ネパール人には失礼だが最後の砦かも知れない。最貧国と言われるバングラデシュやジンバブエ、それにハイチであれ近隣には日本よりも豊かな国が続々と誕生している。最早、日本に来る理由など何一つないということだ。
かつて日本でも移民の是非を巡って紛糾した時代があった。バブル全盛であり人手不足たるや尋常ではない。僅かな日系人だけではとても足りない。不法就労であれ奪い合うしかない。結果として、バブル崩壊で終息したものの、継続したならどうなっていたやら。
だが今日の日本は当時の比ではない。好景気を謳うも、あくまて大本営発表であり、その内実たるや極めて厳しい。人口バランスの崩壊は如何ともし難い。『AIが全て解決する』や『ロボット代替論』も犬の遠吠えでしかない。労働力不足のピークはこの先数年にある。今現在普及機能していなくてどうして間に合おうか。
《参考/過去記事》
今や各自治体共に椅子取りゲーム(移住者の奪い合い/上記参照)に熱中するばかりで人口減少を是正しようとする動きなど皆無になってしまった。もう誰もが諦めてしまったのだろうか。減ることだけを前提に改善する努力さえしない。評論家は多く高齢者であり、数十年後にはいないから楽観論で済むにせよ、あまりにも無責任ではないか。しかも日本人の流出(海外移住)が流入(外国人就労者)を上回る勢いで急拡大している恐ろしき現実。このままなら、あと3世代後を待たずして、この国は消滅してしまうだろう。 22世紀の灯火は日増しに遠のいてゆく。