〈〈前回記事と一部重複〉〉
(1)矛盾した自慢話
最近、事あるごとに聞かされることがある。「この国の経済発展は我々が築いた」といった自慢話のことだ。そして「今の若者は・・」と続く。でもどうか。これは、団塊世代を筆頭にした昭和20年から30年前半生まれの会話だが、どうも腑に落ちない。高度成長は昭和30年から40年代のことである。この時期、多くはすねかじりの学生であり、まだ最前線にはいない。いても20代半ばでしかない。なのにどうして「この国は・・」なんて偉そうなことが言えようか。年功序列全盛の時代にあって、せいぜい“雑用係”でしかなかったであろうに。
こうした世代が中枢に上り詰めたのは早くとも昭和から平成(1980年後半から90年代)にかけてである。そう“バブル崩壊”以後であり“失われた30年”の真っ只中なのだ。戦後の高度成長は、明治・大正・昭和(戦前生まれ)の世代が血の滲むような努力をし、そして築き上げたことに疑う余地はない。ならば、「我々が築いた」のではなく、「我々が壊した」方が正解になってしまう。これでは墓穴を掘る以外の何物でもない。やはり『自慢話もほどほどに』といったところか。あくまで自戒の念を込めた話でもあるので悪しからず。
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(2)三代目のジンクス
因みに、こうした状況に対する言い伝えに、『三代目のジンクス』というのがある。初代が苦労して作り上げたのを息子が継ぐ。二代目(子供)は親の苦労を見ているだけにその基盤を守るべく必死に働く。三代目(孫)は生まれたときから裕福で苦労を知らないことから放蕩三昧でその全てを食い潰してしまう、といった意味である。
現在、世の中の全てが、こうした状況下にある。産業界だけではない。世襲によってのみ引き継がれる政界などは最たるものであろう。順風満帆ならともかく、箍が外れたら堪ったものではない。苦労がないだけに立ち直る術を知らない。キックバックも手入れ(摘発)の対象になってしまった。でも見栄だけは張りたい。ならばどうしよう。「そうだ“アレ”で凌ごう」、なーんてことにならねば良いが・・。
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【見栄っ張りは泥棒の始まり】
かつて知人の見舞いに行った時のことだ。その病室は二人部屋だった。
知人は早速、「お隣さんは貧乏人で嫌になるよ」の嘆き節である。確かに風体は冴えない。髭もじゃと薄汚れた格好はどこから見てもホームレスにしか見えない。でも違った。勤務先は日本を代表する某企業であり、それも地域を統括する管理職だった。転勤族ゆえに高校や大学に通う子供達のことを考え単身で赴任しているという。緊急入院で身の回りを整える暇もなかったのだろう。第一印象も束の間、「貧乏人で嫌になるよ」も実は、相手側に相応しい言葉だったようだ。
高度成長からバブルにかけて人々は外見を競った。高級品を買い、高価なブランド品を身に付け、豪華な海外旅行に出掛けた。自己満足もあるが大概は対抗意識からではなかったろうか。身の丈をわきまえず背伸びばかりしていた。結果は言うまでもない。贅沢依存症とは、一度憑り依かれると、なかなか抜け出せないもの。バブル崩壊と共に、その多くが凋落の運命を辿ってゆく。
これは自己破産の件数にも現れている。2003年には242.000件に達した。貸し付け金額も凄い。最大12兆円まで膨らんでいた。貸す方も借りる側も、まさかバブルが弾けるなんて夢にも思っていない。イケイケドンドンだったようだ。宴の後の虚しさが全てを物語っている。
(2020年以降、コロナ渦による収入減から、また増加の兆しに・・)
今でもこの残影は随所に垣間見ることができる。他人の評価は外見でしかしない。何を身に付け、どの車に乗って、どこに住んでいるのか、、にしか興味を示さない者が如何に多いことか。だだ残念なことは以前ほど簡単に(金を)貸してくれない。審査基準が厳しいだけ金繰りに行き詰まってしまう。これでは贅沢が出来ない。見栄も張れない。さあどうしよう。
オレオレ詐欺や架空請求は若者に多い犯行だが、投資詐欺や結婚詐欺は益々高齢化する傾向にあるという。若者が高齢者を騙すだけでなく、高齢者もまた新たな手口で弱者に狙いを定める。ジャパンライフの山口隆祥代表が81才であるように、数千億円にも及ぶ巨額詐欺(首謀者)の平均年齢は75才を超えた。
(増えるばかりの高齢者犯罪)
(警視庁データより)
人間、幾つになっても見栄だけは棄てたくないのだろう。いや歳と共に膨らんでいるといっも過言ではない。全体の漸減に反して高齢者(犯罪)だけが増え続ける悲哀な現実。第一の理由は「貧困」だが「豊かな生活だけは維持したい」がこれに続く。そして、コロナ渦に於ける経済の悪化が、こうした傾向に拍車をかけた。若者だけではない。高齢者でも相当数が収入源(仕事)を断たれている。定年延長も見せ掛けに過ぎない。人手不足から奪い合いになるのも若者か特殊技能、そして過酷な労働ばかり。50歳を基準に転職(リストラ)を迫られる昨今の社会体質にあって白寿を迎えるような御老体の“アレ”だけは勘弁願いたいものだが。
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「オイラ『詐欺』でなく『鷺』だっつうの」
「・・・・😩」
【年末は犯罪も多くなる季節です。「自分だけは大丈夫」といった慢心ほど怖いものはありません。くれぐれも御注意下さいますよう】