パプアニューギニアにアフガニスタンと、また動き出した地球規模での地震。ことにアフガンでは大きな被害が出ている模様だ。日本だって例外ではない。この5日には鳥島近海を震源にM6.6の地震があった。津波注意報も発令され伊豆諸島では高さ30cmを観測。今朝の地震でも最大60cmの津波が太平洋各地を襲ったように、この一週間だけでもM5〜6の地震が相次いでいる。幸いにも目立った被害はないものの、これらの海域は実に怖い。観測史上最大とされる深発地震(海底751km,M8.1/2015年)に西ノ島新島の海底火山と、これまでにない規模で動いているからだ。もし浅いところでM8クラスが発生したらどうなるのだろう。津波被害は想像を絶するものになるのではなかろうか。しかもこれらの海域は富士火山帯の最南端に属する。伊豆半島(諸島)や富士山、何より南海トラフへの影響は大丈夫だろうか。

〈未だに活動を続ける西ノ島新島〉
(画像はネットから借用)

 伊豆半島とその周辺には危険な活断層が数多く存在する。富士川河口断層帯、塩沢断層帯、平山―松田断層帯、北伊豆断層帯、国府津―松田断層帯といったところだが、内閣府の地震調査委員会の報告によると、富士川河口断層帯の30年以内の発生確率は10~18%と高く、しかもM8.0クラスの巨大地震が想定されている。

 

 国府津―松田断層帯は相模トラフと連動する可能性が懸念される。北伊豆断層帯(想定規模はM7.3)の場合、30年以内の発生確率を『ほぼ0%』と予測するが、同じく低い確率の中で発生した阪神淡路の例もあり、どこまで信頼に値するやら。静けさが続く限り差し迫っていると考えた方が良さそうだ。

 

〈宝永噴火の痕跡〉

(画像はネットから借用)


 不気味なのは伊豆地方だけではない。富士火山帯だって然り。数年前、箱根山を起点に一斉に動き出したものの、このところは至って静かだ。こちらも伊豆地方同様、安泰の証か、嵐の前の静けさか、それとも大地震や巨大噴火の前触れなのか、奇っ怪この上ない状況にある。


 富士山の噴火は1707年まで遡る。当時の噴火に至るまでの過程を追ってみよう。

☆―地震
★―噴火

☆1703年、元禄地震、M8.3

 関東南部で津波被害多数。鸚鵡籠中記では犠牲者20万人との説も。

☆1703年、豊後(九州・大分)で地震、M6.5
 元禄地震と“同時”に発生。府内領で被害大。
☆1704年、羽後・陸奥で地震、M7.0
 能代市(秋田県)で被害大。12湖誕生。
☆1705年、阿蘇山付近で地震、M不明
 阿蘇坊で破損多数
☆1707年、宝永地震、M8.4~8.6
 南海トラフ型地震。関東から九州一帯が大津波に襲われ被害甚大

★1707年、富士山噴火(宝永大噴火)
 宝永地震の49日後、延暦(800~802年)、貞観(864~866年)と並んで三大噴火とされる大噴火を起こす。

 この内、元禄地震は東日本大震災に相当する。その後、九州から東北地方に強い地震を発生させつつ、宝永地震や宝永の大噴火に至った様子が見てとれる。しかも今、島嶼含む九州の山々では火山噴火の危機が絶えない。置かれた状況は極めて似ていないだろうか。

 南海トラフ型の巨大地震である宝永地震は元禄地震の4年後に発生した。同時に富士山も大噴火を起こした。東日本大震災から12年だが、まだ12年でもある。いわば危機の真っ直中にあるともいえる。ともあれ、静寂に包まれた南関東の西部から伊豆地方、そして富士火山帯の動向には十分に注意を払わねばなるまい。


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 地震は大きくなるほど秋から春にかけて発生する。ことに南海トラフ型の巨大地震は下記の如く11月から12月に集中する傾向にある。


《過去の南海トラフ型地震》

★684年11月26日、白鳳地震、M8.0~9.0
《東海と東南海地震が連動。土佐に津波襲来、田畑12平方キロが海没との説も》

★887年08月22日、仁和地震、M8.0~8.5
《東海、東海海地震と連動か。五畿七道、京都で被害甚大》

★1096年12月11日、永長地震、M8.0~8.5
《東海地震だが、南海、東海海と連動した可能性大。駿河や伊勢にかけて甚大な被害》

★1099年02月16日、康和地震、M8.0~8.5
《大和や摂津に被害。土佐では田畑水没の記録あり、津波も》

★1361年07月26日、正平地震、M8.5
《摂津、阿波、土佐で被害顕著。東海、東南海地震と連動した可能性も》

★1498年09月11日、明応地震、M8.2~8.4
《東海、東南海に南海も連動? 紀伊から房総にかけて被害。津波では1万から2万人が被災》

★1605年02月03日、慶長地震、M7.9~8.0
《八丈島から、浜名湖、紀伊、阿波、土佐にかけて津波被害。南海トラフ以外の説も》

★1707年10月28日、宝永地震、M8.4~8.6
《東海、東南海、南海と連動した巨大地震。後に富士山が大噴火を起こす》

★1854年12月23日、安政東海地震、M8.4
《東海、東南海地震。四国から房総に津波。三重では大津波で被害甚大》

★1854年12月24日、安政南海地震、M8.4
《九州東部から近畿一帯にかけて大きな揺れ。高知、和歌山で大津波、被害甚大》

★1944年12月07日、昭和東南海地震、M8.2
《紀伊半島で6~9mの津波。死者、行方不明合わせて1223人の他、甚大な被害》

★1946年12月21日、昭和南海地震、M8.4
《九州から房総半島に津波。西日本中心に犠牲者は1330人に及ぶ大きな被害》

 このように、(南海トラフでは)歴史に残る巨大地震だけでも12回あるが、8回は11月下旬から2月にかけての冬場に発生しており、しかも5回が12月に集中している。11月下旬の白鳳地震を加えれば半数が年末であることにお気付きかと思う。やはり防災の日は九月だが『大地震の厄日はこれから年末にかけて』といったところか。


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 因みに、今年2月にはトルコ(シリア)で大地震が発生している。でもこれで収まるか否か。あくまで統計上とはいえ、これら一帯の地震は日本列島の鳴動とも深く関わっているのだ。1856年、隣国ギリシャでM8.0の地震があるや翌1857年にはイタリア南部を震源にM7.0の地震が発生。約1万人の犠牲者を出している。1859年にもトルコ東部を震源に犠牲者1万5千人を生む地震があった。


〈同年代にはこうした地震も〉

(安政江戸地震絵図/wikiより)


 上記(の地震年代)と見比べて頂きたい。我が国有数の鳴動期とも時を同じくしていることがお分かりかと思う。まだまだある。安政江戸地震(1855年)や安政八戸地震(1856年)もこうした只中であった。ならば繫がりは否定出来ないのではなかろうか。大地震は伝播する。それも地球外周の1/4(約一万km)を測った如くに。理由は不明ながら、こうした影響が日本列島に及ばないことを願うばかりだ。