《今日は敬老の日》

 母(父)の日や子供の日は世界各国に存在するが老人(敬老)の日となると極めて少ない。祝日にしてまで敬うのは日本だけのようだ。それだけ、すべての決定権が長老にあったように高齢者を重宝してきた証とはいえ、これからはそうもいくまい。少子高齢化の進捗から、その地位は後退の一途にある。いずれは排老の日になってしまうのだろうか。

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 日本では百歳超の高齢者が急増している。住民基本台帳に基づく(2023年9月1日現在の)推計では昨年より6000人増えて92.139万人(男性10.550人、女性81.589人)になった。1970年から53年連続しての増加である。

(我が国の100歳以上人口の推移)
(厚労省、国勢調査に基づくデータより)

 都道府県の人口10万人あたりでは、島根が127・60人で8年連続で最多。高知が119・77人、鳥取が109・89人と続く。最も少ないのは31年連続で埼玉の40・01人、次いで愛知が41・79人、千葉45・98人だった。
(以上は2020年国勢調査に基づく)

 1963年の調査開始時点では153人だったが、1998年に1万人を超え、2007年に3万人、2012年に5万人を突破し、2023年には9万人に達した。この半世紀で約600倍である。平均寿命や余命の延び、人口構成(最多層の)高齢化もあり、果たしてどこまで増え続けるだろうか。

 長寿社会は福祉国家の象徴とはいえ、あまり喜んでばかりはいられない。10万人なら日本人の約1200人に1人が百歳以上ということでもある。恐らく、この割合は世界屈指であろう。さらに凄いのは新たな到達者の数だ。

 1923年(大正9年=今年で百歳に到達する年齢)には2.043.297人が生まれた。年内に百歳になる(予定)者が約5万人であるなら、大正12年生まれ(204万人)の40人に1人は百歳まで生きたことになる。あくまで男女総数であり女性に限れば25人に1人にもなるのだ。

 これらは多難な時代を生き抜いた世代だ。栄養は満足にとれない。食料不足に加えて災害は多発し疫病も蔓延。しかも貧しい世相にあっては医療など受けようもない。何より戦乱に巻き込まれている。こうした社会背景の下では相当数が欠落したはずだが、それさえ乗り越えて、なお40人に1人が(百歳の)大台に到達したのだ。もし、こうした不遇さえなければ、どれだけが百歳を迎えただろうか。

 一方、80才以上の人口も増え続け、2016年には1千万人を突破。現在(2023年9月15日時点)は1259万人になった。こちらの伸びも著しい。昨年より27万人増えて、ついに全人口の1割に到達。さらには65才以上人口は3623万人と昨年より約1万人減ったものの割合では29.1%と過去最高を更新。これは、2位イタリア(23.0%)3位のポルトガルを大きく引き離して増え続ける百歳や80歳以上人口の直ぐ後を追う。

(長寿国に於ける高齢者人口の割合)
(我が国の高齢者人口たるや世界でも突出している)

 これらは年と共に目減りはするが、それ以上に出生率の低下で激減する若年層との数的乖離は如何ともし難い。

 この先、女性の百歳世代と同じく、全体の4%(25人に1人)が大台に到達したとしよう。1億人なら300万人を超える。現在、中学生の数が約321万人(2022年現在)であり、300万人割れ必至の状況にある。すると中学生より百歳世代の方が多い社会が到来してしまう。これは地方公務員や農業従事者の数と変わらない。喜ぶべきか、悲しむべきか、80歳以上の3割、65歳以上なら2割が平均して105.8歳まで生きるのが前提とはいえ、絶対に有り得ない話ではない。

(2030年の予測人口ピラミット)
(国立社会保障、人口問題研究所より)

《2030年には団塊世代が80代に突入する。予測では約1600万人が実存するが、これまでの伸び率(50年で400倍)からして(3大疾病さえ克服出来れば)2050年代の百歳人口300万人も絵空事ではあるまい》

 ならば誰が介護するのか。今でも介護職員は全く足りない。現場での介護職員数も百万人割れが現実味を帯びる。しかも往々にして高齢になるほど手が掛かるもの。外国人で補うにも、衰退するばかりの日本と違い、AA諸国であれ(大学)進学率と所得の向上は目覚ましい状況にある。不足分を外国人に期待したところで、本国にも劣る低賃金と排外的な風土には、いずれ誰も寄り付かなくなってしまうだろう。

(各国の大学進学率)

https://ameblo.jp/rohitigu/entry-12478046280.html

(今や日本の大学進学率はアジアでも上位ではない。初任給(大卒)たるや、中東やシンガポールは言うに及ばず、中国(台湾や香港含む)極東や韓国、タイといったASEAN諸国にまで抜かれてしまった)

 福祉財源も枯渇する。国は近親者介護の義務化を急ぐ。だがここでも大きな壁が立ちはだかる。少子化による若年層の涸渇だ。超高齢者にとっては実子が健在である保証はない。孫やひ孫は、いたところで宛にはならない。甥や姪は、もっと宛にならない。結果として高齢な者から順に取り残されてゆく。

(画像はネットから借用)

✻現在は男性の約30%女性の約20%が生涯未婚であるとされるが・・。

 近い将来、この日本は身寄りのない超長寿者で溢れる。三人に一人どころではない。疲弊した社会にあっては二人に一人が生涯を独り身で通す時代になるかも知れない。これでは高齢者の地方移住計画(CCRC)も意味をなさない。CCRCはOTRC(姥捨山計画)に取って代わる。やはり、まやかしの高齢者対策ではなく、底辺(若年層)を拡大しない限りは何も解決しないということだ。