街中で見かける社(職)員証を首からぶら下げたサラリーマンの数々。路上のみならず、交通機関、レストラン、喫茶店と、どこへ行くにも付けたままである。取り忘れではない。仲間であれ、それを承知の上で、誰一人として指摘しないのだから。もしや、勤務先の決まりなのか、あるいは自慢なのだろうか。しかし・・。
かつては社員証をあからさまにすることはなかった。あっても携行用であり、求められるまでは提示することもない。それがID監視(管理)になって変わった。あたかも食肉として飼育される家畜の如くに。
一昔前なら「社名は出来るだけ隠すように」と教えられた。行動の筒抜けは命取りにもなりかねない。サボりがバレるからではない。行き先にも秘匿はある。商談とて個室だけとは限らない。ライバル各社も参戦している。オープンルームなら会話の中身まで聞かれてしまう。新製品の進捗状況から見積もり価格まで、、である 。そこで襟章は御法度、社封筒は裏返しにし、数字は言葉でなく「これで如何でしょうか」と指し示す程度にしていた。
それがどうだ。今や、幼稚園児よろしく、どこもかしこも胸章(名札)を付けたままで一日を過ごす。これでは機密事項の漏洩防止も意味をなさない。路上では、マイク(携帯)片手に演説の如くに大声で業務内容を告げ、商談の場は公開討論会の様相である。昼食のカフェやレストランなら、上司の悪口からゴシップまで、職場の生情報を赤裸々に発信しているのを分かっているのだろうか。
出先でのパソコン業務など最たるものだろう。上司の厳しい監視(管理)下にあるとはいえ、通勤電車やバみスの中、食事中まで仕事に追われる切なき日々。それも内部情報の詰まった貴重なものばかり。背後から注がれる怪しげな視線などお構い無しに黙々と漏洩作業に明け暮れているではないか。これでは「どうぞ、ご自由に盗視(撮)して下さい」といっているようなものだ。トイレなのか、そのまま席を外す者さえいるのだから。
IT社会は、より情報管理に留意すべきなのに、この体たらく。一体、何を考えているのだろう。そもそも、こうした業務は、どこまで必要なのだろうか。もしや、やらなくていい仕事をやらされているのではなかろうか。仕事とは(上司の)管理(監視)能力を満たすためにあるのではない。資料作りが目的なのでもない。成果を上げて初めて価値あるもの。それも“全公開”とは呆れるやら情けないやら。
本人の責任ではない。注意しない、いや黙認する組織にこそ問題がある。連日のように政治家や官僚の不正流用や企業のデータ改竄が話題になるが、周り(国民=消費者)のことなど一切気に掛けないといった意味からも本質は同じように思える。失われた30年も、こうした『無益』に起因するのは明らかであろうに。日本人は、いつからこんな『おバカ』になったのだろうか。
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《《おまけ》》
〈カラスは知っている〉
『アホウ、アホウ・・』
「で、そんなこと言ってるアンタはどうなの」
「ギクッ!」
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《余談》
【マラソン・ニッポンの現実】
新谷仁美の言動が物議を醸しでいる。今や日本最速のランナーにも関わらずパリ五輪への不参加を表明。だからMGCには出場しない。あくまでベルリンマラソンで日本最高記録を更新するのが目標とか。賛否両論はあるものの、その影響は計り知れない。陸連も苦渋の選択を迫られるだろう。皆さんは、どう思うだろうか。
マラソンシーズン真っ只中にあって日本勢の躍進が目覚ましい、厚底シューズの恩恵なのかそうでないのか好記録が相次いでいる。だが世界は遠い。遥か彼方にある。ことに女子陣はそうだ。先ずは、これをご覧いただきたい。
【女子マラソン世界ランキング】
(1 )2:14:04、ブリジット・コスゲイ、ケニア
(2 )2:14:18、ルース・チェプンゲティッチ、ケニア
(3 )2:14:58、Amane Beriso、エチオピア
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(10)2:17:16、Peres JEPCHIRCHIR、ケニア
(20)2:17:58、アシェテ・ベケレ、エチオピア
(30)2:18:29、エミリー・シソン、アメリカ
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(47)2:19:24、新谷仁美、日本
このようにアフリカ勢が上位を占める。それも、4位に位置するラドクリフを除けば、ここ数年のものばかり。タイムも凄い。言わば日本の長距離走を牽引する田中希実と廣中璃梨佳が一万mで繋いでも勝てないようなレベルにある。最早、天文学的な大差なのだ。
マスコミが期待するのは自由かも知れない。だがこの実力差だけは如何ともし難い。新谷(47位)でさえ5分以上も引き離されている。それを『優勝』や『金メダルだ』と騒ぎ立て、惨敗すれば『税金泥棒』といった辛辣な書き込みを容認する悲哀な現実。これでは誰だって出たくはないだろう。置かれた立場は『参加することに意義がある』といったレベルなのに。新谷選手には信念を貫いて欲しいものだ。誰のものでもない。自分自身の競技人生なのだから。


