【WBCの功罪】

《第一回大会で優勝に歓喜の野球・日本代表》
〈画像は朝日新聞(2006年版)より〉

 野球のWBCが近付いてきた。コロナ禍もあって6年ぶりの開催である。この大会、前々回(2013年)前回(2017年)はベスト4止まりだったが、2006年と2009年は優勝。ならば、さぞかしプロ野球も盛り上がったかと思いきや、そうでもない。初優勝のシーズン(2006年)ですら観客数は芳しくない。前年比では、それまでの伸びに比べても、むしろ低下しているのだ。

(画像はネットから借用)

 過去3大会を見ても然り。プロ野球人気の追い風にはなっていない。結果の良し悪しに関わらず、WBCの年に限って、観客数は伸び悩んでいる実態だけが浮かび上がる。

〈プロ野球、観客動員数の推移〉
(ネットから引用)

 2005年のシーズン、1試合平均の観客数は23.573人だった。初優勝に沸いた2006年は24.122人である。2.3%増とはいえ、それまでの数年(約4%増)と比べてもかなり低い。ベスト4に終えた2013年の方が活況を呈している。WBCへの参加が、それまでの各球団の営業努力を帳消しにしてしまったかのようだ。

 選手へのダメージも計り知れない。イチローは2009年の大会直後に胃潰瘍を発症してシーズン当初を棒に降った。精神的重圧も相当なものだったのだろう。怪我人も多い。二軍スタートならまだしも、春先からベンチにも入れず、長期に渡るリハビリを余儀なくされる者が続出している。

 代表組だけではない。西武の森友哉はキューバ代表との練習試合で骨折。野球選手の宿命とはいえ、キューバは、怪我をしない(させない)よう慎重に試合を進める我が国の調整法とは少し違う。ある意味、森捕手とて被害者だったのではなかろうか。

〈劇的な得点で盛り上がったWCスペイン戦〉
(画像はネットから借用)

 同じ世界大会でも、サッカーのワールドカップ(WC)はどうか。こちらは、シーズンを前にお茶を濁す程度の大会ではない。リーグ戦に備えた調整の場でもない。文字通り国と国が雌雄を決する戦いの場である。だから本物の戦争まで引き起こすことさえ珍しくない。

 今回のWBCは現役大リーガーも数多く参加する。それも各国を代表するスーパースターばかりだ。でもどこまで真剣に取り組んでくるだろうか。如何せん、まだコロナ禍を引きずっていることから、これまでのように満足な準備が出来ない。そこで目を付けたのがWBCなのだ。調整の一環として。

 こうした姿勢はMLB(各球団)側にも垣間見ることが出来る。参加は認めたものの視線はあくまでリーグ戦にある。だから開幕戦はエースに託す。するとどうだ。決勝に進出したものの、リーグ戦を睨んで投げられない、といった事情すら生じかねない。これが真剣勝負と言えようか。

 日本だって同じだ。ファンの関心事は、数日だけの国際大会より、ひいきチームの優勝にある。怪我人や疲労困憊続出で下位争いされたのでは堪ったものではあるまい。プロ野球は、ファンあってのもので、球団経営は観客動員数に左右される。

 WBCで盛り上がったにせよ、潤うのは収益の大半を手にするMLBと大リーグ選手会、それに一部のスポンサーだけなのだ。ファン離れから経営難に陥り“身売り騒動”なんてことでは洒落にもならない。真剣勝負は、シーズンを中断するか、ポストシーズンに行うから価値あるもの。大事なシーズンを前にした開催にどんな意味があろうか。

 怪我人続出。リーグ戦低迷。大リーガーは調整の一貫でしかなく、あくまで目線は(メジャーリーグ)の開幕戦。現に、盛り上がるのは日韓といった一部の国のみで、本場(開催国)の米国ですらあまり話題にはならないと聞く。結果として球団経営にも支障をきたすなら、こんな『興行』やめた方がよいと思うが。

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《おまけ》

WBCってなんじゃらほい」

(世界ボクシング評議会/World Boxing Council)

「もしや『ボクシング』のことかいな」

「ならばオイラも参戦するだよ」

「・・・・😫」