コロナ禍も覚めやらぬまま経済不安に苛まれるニッポン。ロシアのウクライナ侵攻に端を発した物価上昇はとどまることを知らない。これまでの景気対策から財源も底を突いてしまった。しかも悪化する国際情勢によって軍事費は増すばかり。どこか『あの日』の写し絵のようでもある。もしや『1929年』以来の大恐慌が刻一刻と迫っているのだろうか。

 この大恐慌には共通点がある。当時は近年で最悪とされたスペイン風邪が蔓延。死者は5千万とも1億人とも言われ各国共に国力は著しく衰退。こうした国力を復興すべく競って富国強兵へと走ったことだ。軍拡こそが再建の近道と考えたのだろう。経済の活性化と雇用には役立ったとはいえ、その先はいうまでもない。

 こう書くと、日本には有り得ない。いや、過去の反省からも絶対にあってはならない、と誰でもそう思うだろう。確かに平和の流れに逆行している。時代も違う。だが、貴方だけが知らないだけで、実は着々と進行しているかも知れない。敵は某国だけではない。内なる少子化にもあるのだ。

 現在、自衛隊には陸海空合わせて約26万人の隊員が在籍し、毎年1万3千人程度が順次採用される。純然たる国家公務員であり給与も悪くない。生活も安定する。職務を全うすれば将来への不安もない。厳しい規律や訓練はあるものの警察官や消防隊員だって同じことだ。だからこそ、様相は一変、嫁さんが来ないなんて今は昔の高倍率を誇る人気職種でもある。だが、ここにも一筋の影が忍び寄る。 

《公務員の分類》
(自衛隊は特別職の国家公務員である)

 我が国の出生率は低迷の一途にある。年間の出生数もついに80万人を割った。生涯未婚率(2020年現在、男性28.3%、女性17.8%)も上がり続け、瞬く間に30%から40%台へと拡大する。この80万人割れ世代が成人を迎える頃にはどうなっているのだろうか。

〈我が国の生涯未婚率〉
(ことに近年は急上昇の気配にある)

 7割が結婚して35万組の夫婦が誕生したとしよう。現在の政策に少子化の改善効果は期待できない。合計特殊出生率が1.50まで回復したと仮定しても出生数は約50万人(35万×1.5)にしかならない。一方、高齢者人口は、あと20年程でピークを迎える。タイムラグはあるが、このギャップは如何ともし難い。

 先ずは介護分野に深刻な打撃を与える。介護職員がいない。直近(2022年9月現在)の統計でも、百歳以上が9万562人、90歳以上は256万人、80才以上が1198万人、65才以上では約3625万人と急増している。しかも増加途上だ。半減する介護職員に倍増する高齢者。とても手に負えない。多くの高齢者が介護難民として取り残されてゆく。

(高齢者人口の推移)
(総務省統計局データより)

 人口減少の社会にあって高齢者だけの増加は必然的に病気や災害リスクを高めることを意味する。事故被害も増えるだろう。犯罪にだって遭いやすい。ならば消防や警察の機能維持は欠かせない。総人口は大巾減でも、これらの縮小だけは許されないのだ。

 自衛隊はどうか。隊員だって奪い合いになるだろう。民間企業なら海外組で補えるにせよ自衛官だけはそうはいかない。主体はあくまで国内の治安でも隊員不足では災害派遣も儘ならない。安保法案の可決も、海外派兵云々の前に、満足な軍事訓練さえ出来ない。

 日本の近未来は、火は消せず、急患にも対応できない。犯罪は放置され検挙率たるや無いに等しい。大災害では多くの被災高齢者を生むも人員不足で士気低下著しい自衛隊の救助活動は困難を極める。国民の生命と財産を守る最大の使命も崩壊の危機に直面することになる。 

 推軍派にとっては、またとないチャンスだ。この機を見逃す手はない。外敵脅威論を持出すまでもなく、国内危機への対応、だけで十分に決断出来るからだ。

  《20xx年xx月xx日、〇〇〇〇法案成立》

「おめでとうございます。〇〇さんの入隊が決まりました」 

「どうして、このわしに?」 

「この度の法律改正で75才までの“青年”男女全員に入隊が義務付けられたんですよ」 

「んん??」 

  なんて、バカなことにはならないと思うが、笑い話では済まないところが恐ろしい。なにせ隊員が欲しい。一世代に僅か50万人(男子なら半数の25万人)にも満たない若者を巡って激しい争奪戦が始まる。団塊世代(出生数250万人)の5分の1しか存在しないのだ。これは、サービス産業の年間充足数にも満たず、福祉分野の絶対必要数にさえ届かない。これでは、第一次や三次産業の多くは、人手不足どころか「人手ゼロ」による瓦解の連鎖を招きかねない。

 前述の如く、民間企業なら海外展開に活路を求めれば済むとしても、治安を預かる公僕だけはそうもいかない。一般公務員ならいざ知らず、警察や消防、海上保安庁といった分野まで外国人就労で補うことなど許されない。自衛隊なら尚のことだろう。

  少子化対策を怠った付けは大きい。いや、こうなることを認識していて怠ったのなら犯罪も同じだ。少子化による人材難を理由に何だって出来る。源平合戦でも川中島の戦いでも高齢者(主に農民)が参戦して(させられて)いた。このままでは日本人の過半数が75才を超えてしまう。もう何があっても不思議ではない、ということか。

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【東京雑景】

《冬の不忍池》


《人出の戻ったアメ横》


《でも、岸田くん、いや西郷さんは一人ぼっち》

『ん??🤔』

【おまけ】

《宇都宮の餃子まつり》

「えっ、宇都宮は何県かって!?」

「・・・・・・😩」