買っては棄て、棄てては買い、食べては残し、残しては棄て、棄てれば買って、また棄てる・・。
豊かな生活を証明しているのか、それとも人の心が歪んでしまったのか、見渡す限りゴミ、ゴミ、ゴミ、、、。もう「健全な経済の根幹は旺盛な消費活動にあり」なんて悠長なこと言っている場合じゃありません。ともかく世の中、ゴミだらけなんです。
これは今から少し先の物語です。この大地は全てゴミで覆われていました。もちろん人間なんて既にいません。目につくのはハエばかりで、それも、この大地の支配者であり、食物連鎖の頂点を極めるまでに進化、ではなく変身したハエでした。
《折り紙》でハエ
〈粗が見えるので拡大不可¨(-_-;)・汗〉
とはいえ、なにか不釣り合いで不恰好に見えるのは、とっても頭が小さいことです。それもそのはずで、豊富な食料をいつでもタダで手に入れられることから、学んだり報酬を得るために頭を使って働くといった概念が一切なかったからです。
でも繁栄は長く続かないもの。この世界にも忍び寄る影がありました。それは、なんと食糧危機です。無尽蔵にあると思われたゴミの世界も遂に資源の枯渇が始まったのです。
「なんてこったい!」
ハエ達は一様に驚きました。まさかゴミがなくなるなんて夢にも思わなかったのでしょう。日に日に減ってゆくゴミを前に、ハエ達は考えました。いや考えようとしました。なぜなら、これまでは考える必要がなく、考えることさえ知らなかったからです。
食糧が減ればハエも減るもの。需要と供給のバランス崩壊はハエ社会に深刻な影響をもたらしました。そして優秀な遺伝子を有するハエだけがかろうじて生き残りました。しかしこのままでは絶滅は免れません。何せ肝心のゴミがないのですから。
「どうしらたいいんかのー」
「このままじゃ、このハエ王国も滅亡じゃわい」
「うーん」
残されたハエ達はやっとの思いで考えました。そこで、長生きこそ知恵の泉と気付き、ハエ族の最長老に尋ねることにしました。
さすがは最長老、長生きの学習効果は伊達ではありません。
なんと一言、「棄てるのじゃ!」💢💢
さあ、食べるだけの生活に棄てる作業が加わったから、どこもかしこも大混乱。誰かが棄てれば誰かが拾うの繰り返しで収拾がつきません。しかし、ここでまた学習をしました。物には「価値」があるということです。価値を覚えたら、もう最後? ありゃりゃ、ハエ社会に文明が生じ、経済活動まで備わってきたではありませんか。
「ゴミはいらんかねー」
「美味しい美味しい生御味は如何ですかー」
しばらくすると、この地上は再びハエの天下となりました。街は廃棄物で溢れ、鼻に付く異臭でプンプン。さぞかし「良い臭い」と芳香を満喫しているかと思いきや・・。
そして今、ハエ社会では除菌に抗菌、それに防臭と空前の清潔ブーム。店頭では除菌納豆に抗菌椎茸が飛ぶように売れ、防臭トイレは言わずと知れた必需品なのです。それだけではありません。廃棄物処分場建設反対の看板が至る所に立ち並び、「ゴミは出し放題」「処分はダメ放題」の徹底ぶりたるや、これぞハエ王国の清潔志向の証とか。
はて? それでは一体、ゴミは何処へいったのでしょうか。
よーく見て下さいね。表向きは綺麗でも、ひとつ裏通りに入れば、そこは回収されずに積り積もったゴミ、ゴミ、ゴミ、、、。その上品な臭いと汚さが格別なのか、蝿(ハエ)の一匹も寄り付かないんですから\(>_<)/。
〈おわり〉
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《折り紙》で銀〇〇
「今どき“銀蝿”なんて珍しいのう」
「お主、まだ“横浜”におるんか」
「んん??」
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《余談》
【資源ゴミ持ち去り蔓延の先に】
その昔、街中が段ボールを積んだリヤカーで溢れたのを覚えているだろうか。車道でも走行すれば瞬く間に交通渋滞である。古紙が高値で取引きされたのだろう。空き缶など見向きもしない。ただひたすらに段ボールだけを集めていた。勿論、住まいも段ボールだ。公園だけではない。東京のシンボルでもある都庁通りまでが段ボールハウスで埋め尽くされていた。そして現在、時は流れ、対象物は紙から金属へと移ることになるが・・。
資源ゴミの持ち去りが絶えない。ことにアルミ缶だが、ここ数年の価格急騰もあって益々、増える傾向にある。かさばるだけの段ボールとは違い効率もいいのだろう。資源ごみの日は早朝からどこもかしこも大忙しである。
聞けば(キロ当たり)100円から200円になるとのこと。自転車だけではない。乗用車までが出没する。そして、トランクのみならず、後部座席まで満載にして帰ってゆく。果たして(稼ぎは)どの位になるのだろう。積める量からして、自転車で千から二千円/日、車だと五千から一万円といったところか。月換算では十万円以上も稼ぐ輩がいるというから驚く。
食えずに仕方なくやる者。より豊かな生活を夢見て止められない者。果たして、こうした現実を、どう捉えればよいやら。日本経済は今、後退の連鎖にある。円安もあって貧しくなるばかり。割れ窓理論の如く、ひとつの崩壊が、この社会全体を飲み込んでしまうかも知れないのだ。誰にも事情はあるだろう。だから、とやかく言える立場にはないものの、この社会がまた、あのバブル崩壊に見た段ボールハウス全盛の時代に戻らないことを願うばかりだ。