わすねうつくし ひろきせの
ことたまはゐふ をゑなかれ
おほそらさえて よもあけぬ
むめいちりんに みゆるやへ

座す音美し 広き瀬の
言霊は畏怖 汚穢流れ
大空冴えて 夜も明けぬ
梅一輪に 見ゆる八重

解説

座す(わす)は「いらっしゃる。おいでになる。▽‘あり’‘来(く)’の尊敬語。」、音(ね)は「物の発する快い響き。」、瀬(せ)は「川の水が浅く人が歩いて渡れる所。あさせ。」、言霊は「言葉にあると信じられた呪力。」、畏怖(ゐふ)は「大いにおそれること。おそれかしこまること。」、汚穢(をゑ)は「けがれていること。きたないもの。おあい。おかい。おわい。」、梅(むめ)は「‘うめ(梅)’に同じ。」、八重(やへ)は「特に、花弁が何枚も重なっていること。」の意味です。

余談

この歌は、下記動画の曲を聴きながら、それをモチーフに書いた歌です。

『組曲「白山」神厳の杜』(you tubeより)
https://youtu.be/1AYICYEWDTk

雑感

イメージとしては、夜明け前にどこぞの川辺に行ったら、魂に刻み込まれるような素晴らしい光景を目にしてしまった、というもの。

前半部分の「座す音美し 広き瀬の 言霊は畏怖 汚穢流れ」は、流れる川の音の、そのあまりの清らかさ美しさに思わず畏怖し、気が付けば心のモヤモヤも全部流れて消えてしまったというもの。ちなみに歌では言霊という表現を使っているが、これは川の流れる音と解釈したい。

後半部分の「大空冴えて 夜も明けぬ 梅一輪に 見ゆる八重」は、そうして目の前の光景に見入っていると、大空も白んで来て夜も明けてしまった。気が付くと、咲いている一輪の梅もこんなに見事であることを知る、といった感じ。