すきいかり かひとやはいの
  めありけり あめのいはやと ひかりかいきす

(過ぎ生かり 佳美と野梅の 芽ありけり 天の岩屋戸 光開基す)

解説

生かる(いかる)は「生きている。」、佳美は「りっぱで美しい・こと(さま)」、野梅(やばい)は「野に咲く梅。野生の梅。」、天の(あめの)は「天にある。天の。天上界に所属する。あまの。」、岩屋戸(いわやど)は「岩屋の入り口。いわと。」。」、開基(かいき)は「物事のもとを開くこと。」、すは「する。▽ある動作・状態がおこる。」の意味です。

余談

この歌は「大神 五重之音調」の中にある「ウシワカ登場」を聴きながら、それをモチーフに書いた歌です。

雑感

「過ぎ生かり」は、何を過ぎて生きているのかというと、(厳しい寒さの)冬であろうかと思う。また、念のため書いて置くと「開基す」は「開基する」の意味。

つまり、厳しい冬を過ぎても生きている野梅の芽があって、それはまだ花開いてないけれども、これまでの寒さのことを思えば、とても美しく立派に見えるなぁ、ということ。

そしてようやく時節が来て、冬の曇り空から一転、まるで岩戸が開かれたように春の日の光が射し込んでいる、といった感じ。

要するに、梅の花はまだ咲いてないけれども、既に厳しい冬の季節は過ぎ、目の前には春の兆しが出て来ているので、もう花が咲くということは必然的に約束されている、というニュアンスが込められているように思う。