浜田省吾のニューアルバムが届いて~40年間走り続けた男の辿り着いた境地 | 日々の生活(くらし)に音楽を♪

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先日ついに浜田省吾さんのニューアルバムが届きました。
10年間、待ちに待ったアルバムです。

タイトルは『Jouney of a Songwriter~旅するソングライター』
なかなか良いタイトルですね。
おそらく、”旅する” という言葉の中に、ミュージシャンとして ON THE ROAD というライブツアーの旅と、浜田省吾さんご自身の人生という名の旅への想いが込められているのだと思います。

前作「MY FIRST LOVE」は、浜田さんの音楽のルーツであるロックミュージックへの敬愛を込めながら、長年応援してくれたファンへの感謝の想いが詰められたアルバムでした。

そして新作は、一言で言うなら、今という時代に生きる60歳を過ぎた浜田省吾が 心の中の溢れる想いを歌という形にして伝えてくれる崇高なアルバムです。
時間が無くて、まだ一聴しかしていませんが、気になった曲について雑感を書いていきたいと思います。

『光の糸』 


発売前に一足先に色んなメディアで流された曲ですね。
浜田さんの雄叫びと古村さんのサックスで始まる爽快で春らしい軽快な曲で、このアルバムのオープニングナンバーには、この曲しかないと思えるような曲です。

命の炎を高くかざして道を照らせ
命の炎が燃え尽きるまで 友よ照らせ


前向きな力強いメッセージが込められていますが、このメッセージは、このアルバムの最大の聴き所である組曲 『アジアの風 青空 祈り』 へと繋がっていきます。

『旅するソングライター』  

このアルバムのタイトルチューンで、これからの季節に合うレゲェ風の曲。

君の声が聴こえてくる 心の一番きれいなところから
オレの声は届いてるか? 遠く離れても 遠く離れても

涙と笑いと嘆きの入り混じる感情抱いて
人は生きてた 生きてた 生きてる


この歌詞もいいですね。
「君の声」 というは、おそらく浜田さんのファンやリスナーの声という事だと思います。
そして、どこにいても 「君の声」 を聴きながら歌を創り、歌という形で 「オレの声」 を発信している。
それが、旅するソングライターなのですね。

涙、笑い、嘆き、色んな場面で遭遇しますが、それが人生ですし、それが生きているという事なのだと思います。
このアルバムは、年齢的なものなのか、ある種の悟りや人生哲学みたいなものも感じます。

『きっと明日』
きっと明日 君は化粧を落とし素顔で
きっと明日 君は眩しいほどの笑顔で
きっと明日 きっといつか
きっと 君のモノクロの夢 光差し込んで色づき
きっと明日 きっといつか
きっと君の瞳の中に立ちすくむオレに気づくだろう


ひとつの恋愛を描きながら、「きっと明日」 と未来に希望を託す人間の姿を描きたかったわけですね。
ポップなサビのメロディがとてもいいですし、頭から離れません。

『マグノリアの小道』 
華麗なスペクターサウンドとコーラスワークが絶妙の佳曲。

儚い世界 透明なギターで描いてみる シュールな和音で
幸せに決まりこんだ形なんて無い

もっと自由でいいんだよ 太陽の下
もっと自分でいいんだよ 人並の中


この歌詞も素敵ですよね。

あまりにも形に囚われ、協調性が重んじられ、個性が失われつつある現代社会、そして日本人。
そんな社会や日本人に、優しく自由や個性の大切さを訴えているような歌詞です。

『美しい一夜』
大人の雰囲気のムーディな洒落た曲です。

人並みの中 見失った君をずっと探して
走る まるで永遠に会えぬ別れの痛みを感じて
君を見つけ 見上げれば夜空焦がす花火


浜田さんのラブソングは、変わらず切なさを感じます。
愛は花火のように一時の儚いもの という変わらぬ認識が、彼の中にあるのでしょう。

『瓶につめたラブレター』
まるで瓶につめたSOSみたいな・・・
Love Letter


この歌詞のフレーズやタイトルを見て、以前、私のブログに載せた事がある、ポリスの 『メッセージ・イン・ア・ボトル』 訳すと 「瓶の中のメッセージ」 という曲を思い出しました。
そう言えば以前、『SAVE OUR SHIP』 のミキシングの時に元ポリスのスティングの自宅にあるスタジオが使われましたが、スティングの影響もあるのかもしれません。

『永遠のワルツ』
3拍子のワルツのリズムに乗せて歌われる美しい小曲。
ストリングスが効果的に使われてますね。

そして、このアルバム最大の聴き所である組曲。

『アジアの風 青空 祈り』
組曲というと私の場合は、昔 1970年代~80年代にかけて よく聴いたピンクフロイドの一連のアルバムを思い出しますが、浜田さんも その辺のものは もちろん聴いておられた事でしょう。

「Part.1 風」
波の音とピアノの音色から始まる美しい曲ですが、歌詞は重いです。

届くこと いつか届くこと信じてる 祈る想い
陽の下で 月の下で誓おう No More war.
Asia.Where are you going to?
アジア どこへ行くの?

「No More war.」 というのは父親が戦争被爆者である浜田さんにとって永遠のテーマであり、「アジア どこへ行くの?」 と この国やこの国を取り巻く世界の未来を案じているような歌詞です。

「Part2. 青空」
曲調が一変して、日本を襲った戦争や災害などの悲劇を力強く歌い上げてます。

透き通る真夏の青空を
切り裂いた白い光 黒い雨


これは、明らかに日本に落とされた原爆の事ですね。

氷雨降る早春の午後
押し寄せる高波に砕けた未来


これは東日本大震災の事でしょう。
浜田さんが、ようやくですが東日本大震災の事を歌に取り入れてくれた事に 私はとても嬉しく思いました。

あまりに多くの血が流された
とてつもない悲しみが襲った
あまりに尊い犠牲払った
充分過ぎるくらい学んだ・・・違うか?


「充分過ぎるくらい学んだ・・・違うか?」 というフレーズが重く心に突き刺さりますね。
日本の指導者達に届いて欲しいフレーズです。

「Part3. 祈り」
明日も逢える
来る日も来る日も 命の炎 消えるまで
明日も逢おう 
来る日も来る日も 命の炎 燃やして


ここで、このアルバムのオープニング曲の 『光の糸』 の歌詞に出てきた 「命の炎」 という言葉が再度出てきます。
光を信じ求め、命の炎を燃やしながら生きている我々人間が、今回のアルバムのテーマと言ってもいいのかもしれません。

「Part.1 風」 と 「Part2. 青空」 で日本や日本を取り巻く近隣世界での悲劇を歌ったわけです。
そして、この 「Part3. 祈り」 で、そんな悲劇が絶える事のない世界だけれども、「命を炎」 を燃やして、力強く生きていく事を訴えてるわけです。

私は、この組曲を聴いただけで、このアルバムを買って良かったと思いましたし、涙が出ました。

そして最後の曲。


『誓い』
組曲『アジアの風 青空 祈り』 からさらに続いているような内容の曲です。

飲もう グラスに不屈の希望を満たして
弾こう ギターに朽ちない理想を託して
そして 再生の時を今ここで誓おう


起こってしまった事は、時間を元に戻す事はできませんから仕方のない事なのかもしれません。
大切なのはこれからで、けっして希望や理想を失わず再生を誓う事。
力強い言葉でこのアルバムは締められています。


全編を通して聴いて、ソングライター浜田省吾として生きてきた人生、その人生観がいたる所に感じられる、聴けば聴くほど深い味わいのあるアルバムだと思います。


このアルバムを聴いて、私は、去っていく男の未来に託す祈りや願いみたいなものを感じてしまいました。
最後のアルバムにならない事を願うばかりです。

浜田さん、貴方がどんな形であれ活動されているだけで、        私達は生きる力や元気を貰えるのですから・・・。



アジアの風 青空 祈り

part-1 風

兵士よ どこにいるの?
Soldier,Can you
hear my voice?
悲しみの追憶のつづれ織を身にまとい 光を遮って
I want you to know.
伝えたくて I miss you.
青空に 星空に 誓うよ
砂漠 街頭 密林 孤島 雪原 山岳 海底
忘れないよ 忘れないよ ずっと きっと
届くこと いつか届くこと信じてる 祈る想い
陽の下で 月の下で誓おう No more War.
Ajia,Where are you going to?
アジア どこへ行くの?


part-2 青空

まるで二人 ロミオとジュリエットみたい
憎しみの壁 偏見の海に阻まれ 逢えない 逢いたいのに

透き通る真夏の青空を
切り裂いた白い光 黒い雨
あれはいつ?
氷雨降る早春の午後
押し寄せる高波に砕けた未来

あまりに多くの血が流された
とてつもない悲しみが襲った
あまりに尊い犠牲を払った
充分過ぎるくらい学んだ・・・違うか?

銀色の林檎が枝から落ちて 少年の手の中
静かに少女と分け合い 未知の世界へと旅立つ

自ら「指導者」と名乗る驕れる者達
思想 教義 大儀 無理強いする奴等
遥か地平目指す彼 空高く舞う彼女
二人に構うな

あまりに多くの血が流された
とてつもない悲しみが襲った
あまりに尊い犠牲払った
充分過ぎるくらい学んだ・・・違うか?


part-3 祈り

明かりを暗くして眠る時が来た
窓から差し込む月や星の仄かな光 シーツに灯して
朝陽に肩を揺さぶられ目覚めるまで寄り添い眠ろう
明日も逢える
来る日も来る日も 命の炎 消えるまで
明日も逢おう
来る日も来る日も 命の炎 燃やして