思い出の動物家族 白犬の まる | みどり屋根の小さな庭 T字路の奥

 

同テーマ『思い出』の

②の

"三毛猫のたま"と同じころ、

四半世紀ほど前、

夫の実家に住んでいた時の話です。

 

夫は当時、仕事場の壁に

飼い犬たちの写真を

飾っていました。

 

会社に出入りの宅配業者の男性

(そのころで60代後半位)が

「犬を飼ってみたい。

どこかに居ないかな。

どんな犬でもいいから」と言うので

夫は「もし適当な犬が見つかったら

連絡する」と世間話程度で

答えておいたということでした。

 

(その会話自体、私は

後で、知ったのでした)

 

確か6月終わりか7月か、

初夏のある日、

夫が、

「ねぇねぇ、こんなのが

付いてきちゃった」

と言うので、足元を見ると、

白い小さな犬が

そこに

まとわりついていました。

 

もう細かいことは

余り覚えていませんが、

夫が家の近くの原っぱか道か、

そこらあたりで見かけ、

最初は無視していたものの、

何やら付いてくるので

件の宅配屋さんに

連絡をして貰ってもらおうと

思ったそうなのです。

 

そのころ、我が家には既に

犬が六頭、猫が二匹居て、

しかも同じ敷地内に住む

義母の体調も

すぐれなかったので、

新たに犬猫を増やすことは

不可能でした。

 

私がどうするのかと問うと、

上記のような話で

貰い手は居るから

電話連絡して犬を会社の方まで

持って行く、と夫は言いました。

 

電話を終えた夫は

「要らない、飼えないって

言われた。奥さんにきいたら、

反対されたらしい」

と言いました。

 

かといって、我が家では、

もう無理です。

1990年代に入ったばかりの時期で

インターネットはありませんから、

すぐに写真を撮って、

飼いたい人を探すポスターを

獣医さんや電柱、

あちらこちらに

貼りました。

 

いわゆる、

「飼い主さん募集

かわいいオスの仔犬います」

というようなやつです。

 

(写真はポスター用に写したもので、

特急仕上げの写真屋さんで

大至急の現像を頼んだのだと思います)

 

いつまで居るか不明ながら、

とにかく呼び名は必要なので、

便宜上、

「まる」と呼ぶことにしました。

 

まるは、一見

肥えて見えましたが、

実際は痩せ細っていました。

水と、

柔らかくした犬の餌を与えると、

あっという間に食べてしまい、

食欲旺盛でした。

 

また、人懐こく、

夫の後ろを一所懸命、

付いてまわり、

無駄吠えもせず、

明るい様子の犬でした。

 

とはいえ、

いつまで居るのやら、

いつまでもは置いてやれない、

困ったな、

仔犬のうちに飼い主を

見つけないことには・・・

と、私は内心、焦っていました。

 

しかし、それは、

杞憂でした。

その日の夕方には、もう、

飼いたいという連絡が

来たのです。

 

うちから1キロほど離れた

小さな地元のスーパー横の

電信柱のポスターで

まるちゃんを知ったということでした。

 

やってきたのは、

若い女性でした。

おそらく20歳を少し過ぎた位の

感じの良い人でした。

既に家族にも相談済みで、

何の問題もないという

願ってもない、

有り難い話でした。

 

そして、実際のまるちゃんを見て、

彼女は飼うことを了承し、

うちからはバリケンを貸し、

後日またそれを返しに来るという

約束をしました。

 

とにかく、

まるちゃんが居たのは

半日かそこらなので、

思い出といっても、

我が家においては、

せいぜいこの位なのです。

 

まるちゃんは、

最初、お腹を空かせて夏空の下、

一匹で居て、

本来なら宅配屋のおじさん宅の

一員になるはずが

そうはならず、

数時間は我が家に居たものの

あっという間に

可愛らしいお嬢さんと

その家族に迎え入れられることになり、

うちから車で

一時間ほど東の

長閑な町へ行ってしまいました。

 

一か月か、

二か月か、しばらくした頃、

まるちゃんの飼い主となった

お嬢さんがバリケンを

返しにきてくれました。

 

名前は、そのまま、

「まる」でした。

引っ越しの際、

紛失してしまったのですが、

お嬢さんが写した

まるちゃんの写真も

二、三枚、貰いました。

 

一枚では、田舎のお百姓さんの家の

大きな土間の中で、

まるちゃんは昼寝していました。

もう一枚、覚えているのは、

誰か家族の人に連れられ、

まるちゃんが

川の土手を

散歩させてもらっている

姿でした。

 

お嬢さんは、

まるちゃんを、

おとなしい子です、

家族皆で可愛がっています、

というようなことを

言ってくれました。

お嬢さんを

いちばん好きなのかと思いきや、

「お父さん」ということでした(笑)

さすが、いちばん偉いのは誰か、

ちゃんと分かっている

賢いまるちゃんです。

 

幸せをつかんでほしくて

「まる(丸)」と呼んでいたのですが、

あっという間に幸せをつかみ、

新たな世界へ

旅立っていった

まるちゃんでした。

 

そのあと、

まるちゃんがどう暮らしたのか、

それは分からない事です。

でも、あのお嬢さんと、

あのお嬢さんを育ててくれた

ご家族なら間違いない、

私はそう思っています。

 

まるは、

爽やかな、良い思い出をくれた、

懐かしい犬です。

 

 

まぶしいのかな?

うちで餌を食べたので、

お腹がぷっくりしています(^.^)

夫に私が「雑種」と

まるちゃんのことを言いますと、

夫は「三河犬だ」と

言っていました。

まぁ、そりゃ、確かに

拾われたのは三河ですけども・・・(笑)

 

 

最後までお読みいただき、

ありがとうございます<(_ _)>