【今日の1枚】Procol Harum/A Whiter Shade Of Pale(青い影) | 古今東西プログレレビュー垂れ流し

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Procol Harum/A Whiter Shade Of Pale

プロコル・ハルム/青い影

1967年リリース

名曲『青い影』を中心に美しいオルガンサウンドが

散りばめられたプロコル・ハルムのデビューアルバム

 当時、全世界で記録的なセールスを打ち立てたデビューシングル『青い影』を収録したプロコル・ハルムの記念すべきデビューアルバム。その作品はマシュー・フィッシャーの美しいオルガンとゲイリー・ブルッカーのリリカルなピアノを中心とした英国ならではの牧歌性と伝統が込められた名曲ぞろいとなっている。本アルバムは600万枚を売り上げ、無名だったプロコル・ハルムの名を一躍有名にしたブリティッシュロックの歴史的名盤である。

 プロコル・ハルムは元R&Bグループだったパラマウンツに在籍していたゲイリー・ブルッカー(ピアノ、ヴォーカル、作曲)を中心に、キース・リード(作詞家)とマシュー・フィッシャー(オルガン)、レイ・ロード(ギター)、ボビー・ハリスン(ドラム)、デヴィッド・ナイツ(ベース)の5人のメンバーで結成されたグループである。結成後、ゲイリーがすでに曲想していた偉大なる作曲家J.S.バッハの作品『管弦楽組曲第3番「G線上のアリア」』をモチーフとした名曲『A Whiter Shade Of Pale(青い影)』が、マシューの美しいオルガンと合わせてレコーディングされ、1967年にシングルとしてリリースされる。このデビュー曲となった『青い影』は、わずか2週間で全英チャート1位となり、6週連続1位という破格の記録を打ち立て、やがてアメリカや日本にも紹介されて世界的な大ヒットとなった。しかし、名曲『青い影』をリリースした後、ギタリストのレイ・ロードとドラムスのボビー・ハリスンが脱退。ゲイリーは元パラマウンツのメンバーだったギタリストのロビン・トロワーとドラムスのB.J.ウイルソンを加入させ、セカンドシングル『Homburg(ホンバーグ)』を作成。『青い影』を彷彿させるようなクラシカルなメロディーが特徴のこの曲は、全英チャートトップ10に入るヒットとなり、ようやくアルバム制作に入ることになる。

 

★曲目★ 

※内容はK2HDバージョン(ビクターエンタテインメント)に準じています。ボーナストラックは割愛しています。

01.A Whiter Shade of Pale(青い影)

02.Conquistador(征服者)

03.She Wandered Through The Garden Fence(シー・ワンダード)

04.Something Following Me(フォローイング・ミー)

05.Mabel(メイベル)

06.Cerdes(セルデス)

07.A Chrismas Camel(クリスマス・キャメル)

08.Kaleidoscope(万華鏡)

09.Salad Days(サラダ・デイズ)

10.Good Captain Clack(グッド・キャプテン・クラック)

11.Repent Walpurgis(ヴァルプルギスの夜)

 

 アルバムは1曲目の『青い影』を筆頭に全ての曲が素晴らしく、素朴で叙情的なピアノのゲイリー・ブルッカーとモダンで華麗なマシュー・フィッシャーのオルガンが、どこかノスタルジックな世界に引き寄せられるような温かみと哀愁のある曲調になっている。さらにR&Bやクラシックが融合した荘厳なサウンドに、詩人キース・リードによる難解な歌詞が相まって独特の世界観になっているのが最大の特徴といえる。2曲目の『征服者』は、イントロのストリングスから力強い演奏が印象的で、ライブでもよく披露されるナンバー。3曲目の『シー・ワンダード』や5曲目の『メイプル』はメルヘンチックなポップになっており、6曲目の『セルデス』はロビンのギターが冴えるロック調になっている。また、インストゥメンタルとなっている最後の曲の『ヴァルプルギスの夜』は、オルガンとピアノのダブルキーボードが流麗に鳴り響くクラシカルな曲で、暗い中で一筋の光をイメージさせるようなドラマティックな内容は、まさにプログレッシヴロックと言っても良いほどの楽曲である。とにかく、クラシック路線をベースにR&B要素を融合させたゲイリー・ブルッカーのメロディセンスが抜群で、後のセカンド・アルバム『月の光』や6作目の『グランドホテル』など、彼のクラシックアレンジが絶妙な傑作アルバムを残している。 実はアルバムに先駆けてリリースされ、大ヒットしたデビュー曲の『青い影』だが、マネージャーのデニー・コーデルがEMI傘下のリーガル・ゾノフォンに移ってからアルバムがリリースされたため、シングル『青い影』が収録されない内容でリリースされている。UKチャートでは圏外という不運なアルバムになってしまったが、後に『青い影』を収録した内容に変更してリリースされている。

 50年以上も前のアルバムだが、『青い影』をはじめとした数々の曲は、単にノスタルジックにとどまらない音楽の心地良さや素晴らしさを今でも伝えてくれる貴重な作品であることは間違いないと思える。かのザ・ビートルズと同じように彼らの作り出された名曲に影響されたミュージシャンの数は計り知れない。

 

 皆さんこんにちはそしてこんばんわです。かのザ・ビートルズのアルバムに比肩するとまで言われたプロコル・ハルムのファーストアルバム『青い影』を紹介しました。収録しているプロコル・ハルムのデビューシングル『青い影』は、ザ・ビートルズが成し得なかった全英チャート6週連続1位という快挙を達成した凄い曲なんですが、初めて聴いたのは学生の頃のラジオです。いい曲だなぁ~とテープに録音(エアチェック)をしていたものの、誰の曲だか分からないまま時が過ぎて、あの名曲がプロコル・ハルムというグループだったことは後で知ったのも今では遠い昔の話です。ちなみに邦題は「青い影」となっていますが、原題の「Shade」は「影」ではなく「色合い、色調」という意味であり、原題を訳すと「蒼白な」「白に近い色調」といった意味になるそうです。つまり、歌詞の流れから察すると、女性の顔色が「みるみる青白くなった」という意味となり、実は男の元から女が去っていく様子を描いた悲しい歌なんです。

 

 さて、生前のジョン・レノンは、この『青い影』の曲を「人生でベスト3に入る曲」と語るほどお気に入りだったらしく、1967年に発表された当時では「今の音楽業界で、この曲以外は聴く価値がない」と断言していたそうです。明らかにポールに対する当て付けのような気もしますが、ジョン・レノンがこのようなことを周囲に言ったことは非常に珍しいことでもあります。また、日本のアーティストにも与えた影響は大きく、松任谷由実(荒井由実)はこの『青い影』のメロディーをきっかけに自作するようになったことは有名な話です。

 

 しかし、あまりにも有名すぎる曲には影があり、『青い影』の著作権を巡ってゲイリー・ブルッカー&キース・リード側とマシュー・フィッシャー側が長いあいだ裁判で闘争していたことでも知られています。2009年にはマシューの作曲者としての言い分が認められて最終結審しており、現在の『青い影』の作詞作曲は3人の名が連なっているようです。ホント良かったです。

 

それではまたっ!