フランソワーズ・アルヌールの練習画

改造絵日記(8月13日)「メリー小野寺の物語」
改造絵日記(8月18日)「メリー小野寺の物語Ⅱ」

■■■■■その10「美学」
「ふむ…わしには賛成しかねるな」と、ギルモア博士の同僚のウラノス博士は、ギルモア博士に見せられたナンバー3の新しい強化改造案を流し読みしながらそっけなく言いました。元は古代ギリシャ文化の研究者だったのが生体工学者になったという変わり種の人物です。
「まあ君はそういうと思っておったがな…」とギルモア博士はうなずきました。もともと女性サイボーグの改造箇所をできるだけ少なくするという方針はウラノス博士の意見を取り入れたものだったからです。

「男性は力の信奉者も多いからギリシャ神話の怪物のような姿に改造されても満足する者もいるだろうが、女性はそうはいかん。誰よりも強くなれるからといってゴルゴンに改造されて満足する女性がいると思うか?女性が自分の外観を気にするのは決して軽薄なことではない。美しさとは濃密な生そのものなのじゃから。たとえ美しさのために生き延びることが犠牲にされて戦場で他の試験体より短命に終わるとしても、その生は無意味なものとはいえまい」

「君らしい美学じゃな」
「君はどうやらオメガ博士の意見に心を動かされたらしいが、奴が最近考案したサイボーグデザインを見たか?黒い金属製の楕円体に六本足のついたクモのような無様な形状で美学のかけらもありはせん。もっとも奴に言わせれば頑強さと機動力の双方を備えたボディで戦場で生き延びるためには理想的な形らしいがな。そんな姿に自ら改造されたい人間がいると思うか?女性ならそんな形に改造されるぐらいなら死を選ぶじゃろう。生き延びることだけが真に優先すべき事柄ではない。むしろいかに生を濃密に終わらせるかが問題なのじゃ」
「しかしそんな醜い姿でも戦場で生き残り続ければいつかは脳を別の体に移し替えてもらえて君の言う濃密な生を生きるチャンスが来ることがあるかもしれん。死んでしまえばそれまでではないか…現代人のわしの目から見れば、君の考えは一見女性を尊重しているようだが実のところ女性を差別しているように思える。君の専門のギリシャ神話にもアテナという美しさと力を兼ね備えた女神がいたではないか。願わくばわしはナンバー3には美しさと命を天秤にかけることなく貪欲に生き延びる力を備えて欲しい。頑強さと機動力の双方を兼ね備えた存在になってほしいのじゃ」

【今回描いた絵】(下描き)

【最近描いた絵】

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【AI絵】試作品戦闘用サイボーグ