とあるゴルフクラブ系YouTubeを見たのですが、その回は人気のユーティリティを紹介する回。
ピンのG430やらゼクシオやらが紹介されていたんですけど、ユーティリティの機能を説明するにあたって、「ロングアイアンの代わり」という言葉が何回か出てきまして、かなり違和感を感じた。
確かにユーティリティが生まれた発端はロングアイアンであり、ロングアイアンより易しいクラブを目指した結果として、ユーティリティと称されるクラブが出現した。
その傾向は今でも残っているのでしょうが、今でも同じコンセプトで開発されているのかと言われたら、アイアン型のユーティリティを除けば、そのようなコンセプトは残っていないように感じる。
まあ、ロングアイアンと同じ長さで、ロングアイアンより上がりやすいというコンセプトだけを見れば、ユーティリティ草創期のコンセプトは生き残っているけど、様々なユーティリティが生まれ、そして年代を重ねてきたという状況を見れば、ユーティリティはユーティリティとして、独自の進化をしてきたと考えた方が正しい気がする。
ロングアイアンが、より難しくなった理由として、ボールの変化や進化が挙げられる。
スピンが嫌でも入る、糸巻きバラタカバーのボールであれば、ロングアイアンでも充分なスピン量を確保可能だったものが、今のようなソリッドボールに変化した事で、糸巻きバラタカバーほどのスピン量が得られなくなり、普通のヘッドスピードのゴルファーでは、地面から充分な高さを出せなくなってしまった。
それによって、どのような影響が出たのかと言えば、ロングアイアンでカバーしていた飛距離帯が、ごっそり空白地帯になったという事態となった訳で、そのような事態に対応する必要が、メーカーに求められたという事であり、これはボールの変化や進化と同時進行。
ユーティリティが出現したのも、ほぼソリッドボールの一般化と同時期であって、ボールの変化がユーティリティを生み出したと言える。
ロングアイアンでカバーしていた飛距離帯を、この記事では仮に「ロングアイアン帯」と呼びますが、ロングアイアン帯をカバーする為には、別にロングアイアンの改良に拘る必要は無い。
確かに初期のユーティリティについては、「ロングアイアン」という言葉に縛られた設計がメインでしたけど、「ロングアイアン帯のカバー」という事が目的だと気づけば、ロングアイアン形状に縛られる必要は無いのであって、ウッド形状の小型化という視点から設計する事も可能で、そのような視点からの成功作が、キャスコのパワートルネードだと思う。
メーカーは「ロングアイアン帯のカバー」という視点で、クラブ設計に勤しんできましたが、それを紹介するゴルフ業界においては、そのような変化を紹介する言葉において、変化や対応が遅れているのではないか?
もはやロングアイアンは一般的ではなく、ロングアイアンを打った事があるゴルファー自体が少なくなっているというのに、未だに「ロングアイアンの代わり」と言い続けるのは、いささか不勉強なのではなかろうか?
そのような状況下においては、もはや「ロングアイアン帯」という言葉も時代遅れで、「ユーティリティ帯」という言葉の方が、今のゴルファーには理解しやすいのではないか?
クラブが生まれた経緯を伝えるのも大事だけど、いい加減「ロングアイアンの代わり」という言葉で、ユーティリティを説明するのは止めた方が良いと思う。