芦坊 NO.658 世界のユニークな博物館たち
若い頃訪れた大英博物館(ロンドン(イギリス))では、教科書で習ったロゼッタストーンの実物など世界的至宝を目にして感動しました。また、カイロ博物館(エジプト)では、朝一番の入館でしたので、ツタンカーメンの黄金のマスクと一対一でじっくり向き合う幸運にも恵まれました。 自慢っぽい切り出しで恐縮です。今回は、「世界の奇妙な博物館」(ミッシェル・ロヴリック 安原和見訳 ちくま学芸文庫)がネタ元です。「奇妙」とも、「ユニーク」ともいえる博物館、美術館を3つご紹介することにしました。どうぞお気楽に最後までお付き合いください。★国際スパイ博物館(ワシントン(米国))★ 本来、表に出ないはずのスパイに関する博物館を作ってしまう、というのがいかにもアメリカです。ウェブサイト (https://www.spymuseum.org/ )がなかなか凝っていて、秘密工作員の気分で、当の博物館に関する情報収集というミッションをゲーム感覚で楽しめる作りになっています。 展示は、「スパイ養成校」、「ブリーフィングルーム」、「民間人に紛れ込むスパイ」、「直接情報」などのセクションに分かれています。館内の様子(ウェブサイトから)です。 「スパイ養成校」では、007顔負けの200を超すスパイ用の小道具が展示されています。マイクロイドット(小さな点ほどの大きさに縮小した図や文書のマイクロ写真)、あぶり出しインク、ボタンホールカメラや腕時計カメラなどです。そして、ハリウッドのアーティストがCIAのために開発した変装技術の解説まであります。対話型ディスプレイの前で、スパイとしての適性テストを受けることもできるというのが遊び心満点です。 「歴史の裏の歴史」セクションでは、第二次大戦とその後の東西冷戦での暗号を中心としたスパイ活動の歴史が展示されています。ユニークなのは南北戦争の時代から20世紀前半までに活躍した女性工作員(当然ながらごく一部)が紹介されていること。女性への配慮もアメリカ的です。★バッドアート美術館(マサチューセッツ(米国))★ おそらく世界初の(そして唯一の)美術館です。ここで蒐集、保存、展示されているのは、「正真正銘、掛け値なしのバッドアート(だめ美術)なのである。」(同書から)とあり、例えば、こんな「作品」がウェブサイトで紹介されています。 この美術館設立のきっかけは、1994年、館長のスコット・ウィルスンがボストンのゴミ捨て場から「花咲く野原のルーシー」と名付けられた作品を「救出」したことです。今や収蔵作品は400点で、常時30~40の「作品」が展示されています。入手する場所は、教会のバザー、古道具市、ゴミ捨て場などなんでもありとのこと。 ある絵が「だめ」かどうかの基準について、ウィルスンの答えは「見ればわかる」というもの。具体的には、「サイズも重要で、は大きければ大きいほどよい。また、どぎつい色彩、不釣り合いな額も大切なポイントだ」(同)といいます。モノ好きも極まれり?★献身的な妻たちの博物館(ヴァインスベルク(ドイツ))★ すぐにでも日本に作って欲しいような博物館です。ある歴史的エピソードが背景にあります。1140年、神聖ローマ帝国は、ヴァインスベルクの城砦都市を包囲しました。住民の必死の抵抗も虚しく、降伏の時が来ました。激しい抵抗に怒った皇帝は、城内のすべての男性を処刑し、街を焼き尽くすと宣言します。ただし、女たちは、背負えるだけの所有物を持って、街を出てよいというのです。 いよいよその時が来ました。なんと、献身的な妻たちは夫を、未婚の女性は親兄弟たちを、背負って逃げることを選んだのです。これには、ローマ兵たちも賞賛を惜しまず、皇帝も「皇帝に二言はない」と約束を守ったと伝えられます。この史実は多くの芸術家を惹きつけ、当博物館は、このエピソードに基づく芸術作品を60点もコレクションしています。チャンスがあれば、是非訪問したい(させたい人もいる?)博物館です。 いずれ劣らぬユニークぶりをお楽しみいただけましたか?それでは次回をお楽しみに。