16歳の時、海外に行こうとパスポートを取得した。

初めてだった事もあり、パスポートの申請の仕方などまったくわからず、うちは家族が誰一人持っていなかったので、自分で調べるしかなかった。

戸籍謄本や住民票、パスポート用の写真を撮って、申請は有楽町の交通会館へ、などなど、本当にめんどくさかった。

ここで必要になる戸籍謄本だが、これには家族それぞれのいろんな事が記載されている。

うちは父が長野県の人で、当時は本籍が長野のままだったので、戸籍謄本を送ってもらう事になった。

一週間ぐらいして戸籍謄本が届き、中身を見て文字通り目を見開いた。

どうやら父は、バツイチのようだ。
相手の名前もしっかり書いてある。

足立区の山田さんという人みたいだ。

ちなみに僕は高校が足立区で、当時クラスメイトで足立区在住の山田さんに告白されたので、これは血なのかもしれない。

そんな事よりバツイチだ。

問題は、父がバツイチという事より、この事を知らなかったというとこにある。

まあ、別にいいっちゃいいのだが、こういう形で知ってしまうと、どうにも心持ちがよくない。

このまま知らん顔しているのも具合が悪いし、僕は母に尋ねてみる事にした。

「お父さんてバツイチだったの?」

「あらま、バレちゃった?」

どうやら母は知っていたようだ。
まあそりゃそうか。

そして僕は父にも尋ねてみる事にした。

「お父さんさ、バツイチだったのね?」

「あら、バレた?」

おんなじリアクションをする夫婦だなと、この時僕は思ったものだ。

まあ今の時代、バツイチなんて珍しくないし、逆に父がバツイチなのはとても納得出来たので、これ以上詮索はしなかった。

が、しかし、
まだ姉は知らない。ぜひ教えてリアクションを見たいという好奇心に勝てず、僕は姉に父がバツイチである旨を伝えると、

「ええぇぇ!!??バツイチ!!!???はあぁぁぁ!!!??」

というナイスリアクションを頂いた。

父は僕の反面教師だ。
僕はなるべくなら、バツイチにはなりたくない。


さび猫。