さて、ワタナベのオーディションライブで四連勝した僕らは、所属するための五つ目の星をかけてライブに挑んだ。

しかしどうしたもんか、五つ目の星がなかなか獲れない。

一緒に星を争っていた芸人が次々と所属して行く中、僕は焦っていた。

ちなみにワタナベで同期のハライチは、この時すでに事務所に所属していたが、サンシャイン池崎は「ソニックブラザーズ」というコンビで、僕らと一緒にSTEP!STEP!STEP!に出演していた。面白かったが、あんまりウケてはいなかった。


オーディションライブの話に戻る。たしかこのライブ、一位から三位までが星を獲得出来るシステムだったのだが、どうしても上位三組に入れない時期が続いた。

上位に入れないどころかそこそこすべったりもした。

ネタで山崎に投げられるくだりで失敗し、僕が頭から舞台に落ちて鼻から麦茶が出たりもした。

実はこの時の事がずっとトラウマで、僕はいまだにライブの時になると麦茶を飲まない。


そして星を獲得出来ない期間が三ヶ月続いた。

僕は「星の事は一回忘れて、とにかくウケるネタをやろう」と思った。

これが、結局正解だった。

そりゃそうだ、お笑いライブなんだもの。

人を笑わせただけ評価されるんだ。

次の月のライブ、ライブを仕切ってる桑原さんがとんでもない事を言い出した。

「今まで通り一位から三位までが星を獲得出来るけど、五つ目の星は一位を取らないと所属にはさせない」

と言い出したのだ。

鬼だと思った。
「所属させないようにしてんのか?」
とも思った。

「まあいいや、今回は星とかではなくとにかくウケることが大事だから」
という気持ちでライブに望んだ。


そして僕らは一位を取り、ワタナベの門を開く事となった。

次の月には、ワタナベの事務所ライブ「WEL jr.」に出演して、ありがたい事にここでも優勝する事ができ、その日のうちに一番上のライブ「WEL」にも出演する事が出来た。

やっと芸能界に、足の指の先っちょぐらい入る事が出来たのだ。


座りながら寝る猫。