17歳の頃、うちは猫を4匹飼っていた。

近所の野良猫がうちに遊びに来ていたのだが、その猫が子供を身ごもっていて、うちで産んで行ったのだ。

黒猫2匹、茶トラ2匹だった。
りん、かん、ふう、しゅう、という名前だ。
猫の名前はいつも姉がつけていたので、理由は知らない。

4匹とも元気な猫だった。
特にりんとふうは元気だった。しゅうは末っ子なのかちょっと控え目なところがあったけど、他の3匹に可愛がられていた。

僕はバイトの毎日だったが、家に帰れば猫がいるので、外にも遊びに行かなくなった。

順調に成長していたある日、ふうがいなくなった。メスの黒猫だ。
かなりおてんばな猫だったので、外に出たままどこかへ行ってしまったのか。
それか母猫を見つけて一緒に行動しているのか。
チビの時同様、探したけど一向に見つからなかった。

そんな中、かんの具合が悪くなった。
呼吸が苦しそうになり、ずっと鳴いてるのだが、あんまり声が出ない状態だった。

僕はバイトを終え、かんを動物病院に連れて行った。

この時の話が、前にツイッターで反響があったやつの事だ。
めんどくさいから改めて書かない。

優しいタクシー運転手さんのおかげで、いい動物病院を紹介してもらえた。

なんでも、生まれつき肺の片方が成長しない病気だそうだ。
苦しさを和らげることは多少出来るけど、成長するに連れてどんどん辛くなってくるし、完治はしないと言われた。

やっぱり親同士が野良猫だと、どうしてもこういう問題が起こってしまう。

僕はどうしたらいいかわからなかったが、「かんに出来るだけの事をしてあげよう」と思った。

それから、病院へ毎日通った。
少しでも生きて欲しくて、少しでも苦しくなくなるなら、お金がいくらかかってもいいと思った。

最初に病院へ連れて行った時、あともって一ヶ月と言われていたが、
結局かんは、それから三ヶ月後に死んだ。

猫は具合が悪くなったり、体調に異変が出ると、人のいない静かなとこに身を潜める事が多い。
そしてそのまま死んでしまうこともあるため、「猫は死ぬ姿を人に見せない」と言われてる。

本当は、ただそっとしておいてほしいだけだ。

かんは、座ってる僕の方に鳴きながら近づいて来て、膝の上でゴロゴロ言いながら眠りにつき、そのまま死んだ。

本当に悲しかった。
僕はしばらくそのまま泣いていて、親もそんな僕を見て、声をかけて来なかった。

でもそれと同時に嬉しかったのは、かんは本当に僕を信頼してくれてたのだろうと言う事だ。
自分はもうダメだと思った時に、最期の場所に僕の膝の上を選んでくれた。

それだけで、なんだかちょっと救われた。

でもこれも、そう思い込みたい人間のエゴかもしれない。


そして家には、りんとしゅうの2匹が残った。
僕はこの2匹をちゃんと育てて、最期を看取ってあげたら、もう猫を飼うのはやめようと思った。

かんが死んでから二週間後、いなくなっていたふうが突然帰ってきた。
帰って来るなり、エサをガツガツ食べ、他の猫とじゃれ合い、また元気に外へ出かけて行った時はさすがに笑った。

ふうはそれからも寅さんのように、たまにふらっと帰って来てはまた出かけて行く、を繰り返した。
なんとも猫らしい猫だ。

しゅうはそれから13年ほど生き、りんはなんと20年近く生きた。

早く逝ってしまったかんが、長生きさせてくれたのか。

もしかしたら、ふうはどこかで今も生きてるのかもしれない。


ふうはこんな猫だった。実家に写真があるか今度見てみよう。