出張から
帰ってきたカズミが
お土産のカモメの玉子を
渡しながら、さっそく
ジュンに話しかけた。
出張先の
ホテルで、夜中に
お姉ちゃんに会った
と言う。
なんのことか
わからないジュンは
まずは、一杯飲めと
ウイスキーを勧めた。
嬉しそうな顔をした
カズミは、
話したくて、ウズウズして
いるようだった。
出張で泊まった
ホテルで
一人、ビールを飲み
早めに寝たらしい。
夜中に
ふと、目が覚めた。
空調の音かと思ったが
女の泣き声のような
音に聞こえる。
暗闇に目を凝らしたら
寝ている自分のそばで
立ったまま
見下ろすように
覗きこむ人の影が
見えた。
髪の長い女の姿に
お姉ちゃんかと
思った。
ああ、いつも
そうやって
自分を見守ってくれて
いるのか、と
嬉しくなり
そのまま安心して
眠ってしまったらしい。
ジュンは
何も言わずに
聞いている。
カズミはいわゆる
視える人だが、
亡くなった姉だけは
視えなかった。
それは
確かに、お前のお姉ちゃん
だったのか と、
聞いたジュンに
カズミが頷いた。
が、突然に、
何かを思い出したらしく
宙を見つめて
みるみる白くなった顔が
強張り、
しばらくの間
動かなくなった。
あれは、
お姉ちゃん
ではなかった。
あの人影は
揺れていた。
あれは
首を吊った
人間の
シルエットだった。
カズミの
呟きに、
ジュンが目を閉じて
ため息を吐いた。
