ここ半年のうち
何度も訪れてくる
男は
いつも思いつめた
目をしている。
毎月の
瞑想の会にもやってきては
暗い顔をして
帰っていく。
何に
思い悩むのか
何を
目指そうと
いうのか
フミヤの点てる
茶だけは好きらしく
うやうやしく茶碗を
覗き込み
静かに口にする。
竹の間を
抜ける風の音に
耳を
澄ませるように
目を閉じる。
能の世界に
生きる若い男は
行き詰っているのか
ただただ、稽古に没頭し
精進しながら
その時を待つ。
僧侶の修行も
能の道も
自分の力で
開くしかない。
フミヤの前で
舞を舞う姿は
闇を彷徨う弱法師の如く
その直面に闇を
佩く。
十六夜の月の
光に照らされた
本堂に
冴えた足拍子が
響いた。
暗きより 冥きにぞ
入りぬべき
はるかに 照らせ
山の端の月
はるかに 照らせ
山の端の月
