朝から
訳もなく
嫌な気分のフミヤは
こんな朝は
決まって女絡みの
案件がやって来る。
そう思った。

風呂敷に包んだ
日本人形を
持ち込まれた。

話しを聞けば
骨董市で一目で気に入って
買った藤娘の目が動く
閉じた唇が開く
夜中に歩く という。

様子を見ようと預かり、
経を上げ始めたが妙に
寒くなってきた。
春の暖かな陽気に
戸を開け放していたが
顔や手が冷たくなり
これは、容易ではないと
感じた。

前の持ち主の
生き霊が入っている。

藤娘を手放したであろう
貰った本人ではなく
藤娘を贈ったと
思われる人間の念が
凝り固まっていた。
生き霊は
生きている人間が絡むだけに、
難しい。

嫌な夢ばかり見る度に
目が覚めて、
よく眠れない日が続き
朝の勤行の時に
ついうたた寝をしてしまい
散歩に来た三右衛門に
起こされた。

面目ないと
謝るフミヤに
三右衛門が聞いた。
フミヤが祈祷している
藤娘の人形は
どうしたのか と。

いきさつを話すと
三右衛門が、
藤の花言葉は
決して離さない
だと、呟いた。




フミヤの頭の中に
閃く物があった。
贈り主の母親は
独り立ちする娘を
手放したくない。

夢をつなぎ合わせて
みると
そうなると
腑に落ちた。

三右衛門は
住職、女とは
わからないものだろう?
と、したり顔で言うが
この二人は妙にウマが合った。
オンナの話しとなると
特に合う。

祈祷はそっちのけ
眠けもそっちのけで
話しが盛り上がり
三右衛門と話しているうちに
解決するなと
フミヤは思った。