ジュンが
よく行く
喫茶店があった。

時間が空いた時に
気に入った本を
持ち込み
一番奥のテーブルに
座って、本を読む。




綺麗な顔の
男だった。
初めて来た時は
ここの女主は
胸がドキドキして
持っていった
水のグラスを
こぼしそうになった。

たいていは
サンドイッチを食べ
コーヒーを飲みながら
ずっと本を
読んでいる。

お気に入りは
窓ぎわの席だから
彫りの深い顔に
日差しが陰影を作り
ポートレートのように
見える。

一度、
美人の奥さんが
財布を忘れていると
持って来ていた。

いつだったか
あの
綺麗な男が
本に挟むしおりを
忘れて行った。

クチナシの花が
描いてある
しおりを
男に返さずに
ここの女主は
ずっと持っている。

初めて来た時から
何年も経つが
いつも
コーヒーを飲みながら
分厚い本を
読んでいる。

たまに
カウンターで
居眠りをしている
私の
頭を撫でながら
長生きしろよ
と、言ってくれる。

そうだね。
私は看板猫
だからね。

ちょっと
ナマイキな言い方
だけど
綺麗な男に
言われたなら
そうしようかね。