近所に住む
おばさんは
いつも、前掛けのポケットに
飴玉を入れていて
元気かい?と
声をかけながらジュンに
飴玉をくれた。

たくさんの
男のひとたちから
姐さん と呼ばれている
おばさんだった。

あんたの
お母さんに何かあったら
すぐ言って来な
と、言われていたジュンは
何くれと無く
母親と自分の面倒を
みてくれるおばさんに、
大人になったら
恩を返そうと思っていた。

ある日
母親と手をつないで
歩いていたジュンは
前から歩いて来た
年配の男が
ニヤニヤしながら
母親の顔を見ているのに
気がついた。

男を避けようとした
母親に
なんだ、俺の顔を
忘れたのか?
と、酒臭い息を吐きながら
言い寄ってきた。

男を止めようと
むしゃぶりついたジュンを
殴ろうした男の
手首を掴んだ
おばさんが

いい年をした男が
真昼間から
なにやってんだい!

言いながら
男の股間を蹴り上げた。

呻く男を尻目に
ジュンと母親に
ケガはなかったか
聞いたおばさんは
ジュンの
頭を撫でて
あんたはえらいネェ
と、ニッコリした。

今度、この人に
なんかやったら
私が承知しないよ と
道に転がった男に
言い置き、
家まで送ってくれた。

このおばさんは
いつも
母親とジュンの
味方だった。

高校ニ年の
押しつまった年の暮れに
母親は心不全で
突然亡くなった。

ジュンが助けを求めると
真っ先に
おばさんが救急車を呼び
病院まで付き添い
母親の
葬式も出してくれた。

おばさんは
涙を流さない
ジュンを抱きしめて
泣いてくれた。

ずっとジュンを
側に置き
生活の面倒を見てくれ
申し訳なさそうにしていると
自分は
子どもがいないから
遠慮はいらないと、
笑いながら
母親の骨壺を
大事そうにきれいな
風呂敷に包み、
ジュンに渡してくれた。

母親の
四十九日が過ぎた頃
おばさんは
以前から学校の成績が
良いと聞いていた
ジュンに言いにくそうに
口を開いた。

跡目を継いでくれないか
と。





ジュンは
特待生で法学部に入学した
時に、これから先
弁護士の資格をとり
ヤクザの組の跡目を継ぐことを
兄貴分に打ち明けた。
面倒を見てくれたおばさんの
旦那も喜んでいると。

兄貴分は
じっと、話を聞いていたが
ジュンの決意に
これからも
兄弟分でいようと
頭を下げた。

ジュンは
嬉しかった。
長年世話になった
おばさんに恩を返せる。
何があっても
母親と自分の味方だった
おばさんに恩を返せる。

俺はお前の味方だ
何かあったら
なんでも言って来い
と、兄貴分に
言ってもらえた。

カズミも
おまえは
大した男だと
言ってくれた。

ヤクザとは
どんなものなのか
分からない。
でも、恩人のおばさんは
いつも近所の人たちの
世話を焼いていた。

強きを挫き弱きを助ける
それが
本物の任侠なんだよ
と、亡き母親が
言っていた。

自分もそうなる
18歳のジュンは心に
決めた。