その視線は
気がつくと
いつもあった。
ドアの隙間から
バイクの
バックミラーから
棚のボトルの
陰から
もう、
いい加減にして!
いきなり
ママが叫んだ。
体調が悪いからと
他の客と
従業員の女の子を
帰し、店を閉めた。
ジュンと私が
ママの話しを
聞いた。
ここ一カ月くらい
誰かに
見られている気がして
まとわりつくような
視線を
感じるという。
仕事から上がり
自宅に帰っても
視線を感じるという。
ドンドンと、
ドアを叩く音がして
開けると
フミヤだった。
なんかあっただろう
と、京都での長い会合が
終わった足で
タクシーを飛ばして
やってきたという。
フミヤが
ママの顔を見て
何かかけられているな
と、呟いた。
店の中を
見回す。
柱の影になって
よく見えなかったが
縁起物の大きな
熊手があった。
七福神がついている。
一カ月前に
同業者から
ご利益があると
お土産にもらったが
店のセンスに
合わないからと
なるべく見えないところに
飾っておいたらしい。
コレは
オレが預かる
と、外した。
ここにいる連中には
都合が悪い物だな
空間を見回しながら
そう言うと
ジュンから
ウイスキーをロックでもらい
一気に飲んだ。
ご利益があるんでしょ
と、言ったママに
フミヤが答えた。
そりゃ
あるさ、
送った方にな。
あれは何だ?
ジュンが
フミヤのグラスに
ウイスキーを
注ぎながら
オレが、以前フミヤに
みてもらったモノと
同じものか?
と、ニンマリと
した顔で聞いた。
そうだ、
相手を潰そうとする
悪意の塊だな。
同業者ほど
嫉妬するからな。
そんな風には
見えなかった
と、言ったママに
魂胆があればあるほど
時として、人は 善人になる
本当の悪魔は
天使の顔をしている
もんだ。
ジュンの言葉に
フミヤが
感心したように
うなずいた。
