それは
夏至の夜。
ねっとりとした
生暖かい湿気が、
身体に
まとわりつくような
墓地にて
町内会開催の
肝試しが開かれた。
フミヤのアイデアで
迷路のような
墓石が並んだ
石畳の道のあちこちに
百目ろうそくの灯りを
灯してある。
ヤクザは
ビビリ。
そう思ったくらい
ジュンの組からは
数名の若衆しか
参加しなかった。
広大な墓地を
通って
本堂に置いてある
お札を貰って
元来た道を戻る。
簡単なルールに従って、
適当な間隔を開けながら
三々五々連なり
人びとが歩いて行く。
ジュンと
ツカサ姐さんが
うっとうしいほど
べったりくっついて
先に歩いて行った。
彼氏が私のそばに
寄ってきた。
たぶん、苦手な
雰囲気なのだろう
湿った闇は。
順番待ちの
間、月を見上げたが
雲に隠れて
見えない。
背中を叩かれて
振り向いたら
ジュンがキツネに
つままれた様な
顔をしていた。
ずっとここに
いたのか?
トイレから
戻ってきた彼氏が
ジュンとツカサ姐さんの
白い顔を見て
何かあったのか
聞いてきた。
本堂の
お札が置いてある
黒檀の経机の
前に私が居たらしい。
黒い服だったから
まるで、顔だけが
浮いているように
見えた。
声をかけようとしたら
かき消すように
いなくなった
と。
何かの
見間違いじゃないかと
言ったら
彼氏は
今日はもう帰ろう
と、言い出した。
暗闇から
フミヤが顔を見せ
今夜は
夏至と新月が
重なっている夜だから
何か不思議なことが
あっても、
気にするな
と、言った。
新月?
カズミを誘ったら
新月だから行かない
と、言っていたことを
思いだしたが
さっき見上げた夜空には
雲の影に
月があった。
あれは…
何だったのだろう。
